6月8日にオープンするKISARAZU CONCEPT STORE。
撮影:土屋咲花
三井不動産は、新たな服のサイクルを生み出す場「KISARAZU CONCEPT STORE(木更津コンセプトストア)」を三井アウトレットパーク木更津(千葉県)の隣接地にオープンする。
環境負荷が大きいファッション業界の課題に対し、余剰在庫やアップサイクルに着目したサステナブルな買い物体験を提供する「服のテーマパーク」だ。
2023年6月8日のオープンに先立ち、報道陣に施設の全貌が公開された。
供給過多のアパレルに新たな消費の場
KISARAZU CONCEPT STOREのエントランス。オリジナルキャラクターの「PUTONs(プトンズ)」は施設の案内人という。
撮影:土屋咲花
「商品に大量な余剰在庫が生まれるというファッション業界の問題に目を向け、課題解決のアプローチとして木更津コンセプトストアの企画を立ち上げました。大量消費、 大量生産のサイクルを新しく変えていくための一つの機会づくりになればと思っております」
同企画を担当する三井不動産の新保斉大さんは、施設を作った理由をこう説明した。
経済産業省の資料によると、国内アパレルの市場規模は1991年の14.7兆円から2019 年には10.4 兆円と約3割減った。⼀⽅で、国内供給点数は1990年の約20億点から2019年には約40億点と倍増。供給過多が起こっている。
木更津コンセプトストアは、こうしたファッション業界の余剰在庫問題を解決する新しい消費の場を目指す。
施設はアウトレット横の約7300平方メートルの敷地に建つ。工場のようなのこぎり屋根が特徴的な建物だ。延べ床面積3000平方メートルの施設内には、「規格外品やデッドストック品の服に光を当てる」というコンセプトに賛同したアパレルブランドの服やファッション小物が並ぶ。
UNITED ARROWSやSHIPS、X-girl、MICHAEL KORS、ラルフローレンなど、カジュアルからラグジュアリーまで幅広いブランドが「ブランドパートナー」として商品を提供する。余剰在庫は全て新品で、価格は定価の4分の1程度というお買い得さだ。
迷路のような店内、「宝探し」感覚で
回転バーを通って入場する。入場料は300円だ。
撮影:土屋咲花
店内の様子。
撮影:土屋咲花
施設は通常のアパレル店やアウトレット店とは異なる仕組みを随所に取り入れ、テーマパークのように買い物を楽しめるようになっている。
まず入場ゲートを通ると、食品スーパーのようにカートが並ぶ。通常のアパレル店であれば、吟味した数点を試着するのが一般的だが、同施設では「気になった商品はひとまずかごに入れて」と勧める。
多くの点数を試着してもらい、服を着る事自体を楽しんでもらう狙いという。
商品の配置はテイストやカテゴリによって五つのエリアに分けた。随所に仕切りやのれんなどを設け、あえて全貌を見せない作りは迷路のようだ。在庫の入れ替わりが激しく、一期一会なデッドストック品が集まっているからこそ、宝探しのような感覚を味わってもらう。
試着エリアは4カ所。一般的な試着室よりも広く、友人や家族と一緒に利用することも想定した。2階に設けられた試着エリアにある五つの試着室は、部屋ごとに室内を青色や黄色などにライトアップ。スポットライトを受けたかのような演出のもとで、試着を楽しむことができる。
「顧客が作る売り場」も
試着後などに顧客が返却した商品を並べる「オープンストック」。
撮影:土屋咲花
「オープンストック」と呼ばれるエリアには、開業後「顧客がセレクトした商品」を集結させる。一度カートに入れたものの、購入せず返却した商品を陳列していくという。
「買い物している時、隣のお客さんが見ていた商品って、ちょっと気になったりすると思うんです。 そういったちょっと気になる商品が集まることによって、ここもまた、お客様に手に取っていただきやすいよう空間になるんじゃないかなと思っています」(三井不動産の担当者)
店内の仕掛けに工夫を凝らす一方で接客は最低限にとどめ、来場者に自由に楽しんでもらえるようにした。
施設に併設したカフェと食料品の物販コーナーにもサステナブルな要素を取り入れた。
フードロス削減のECを手掛ける「クラダシ」をストアパートナーに迎え、豊作で余剰となった柑橘類を使ったスムージーや、規格外の梅を使った梅レモネードなどをカフェメニューで提供する。
カフェメニューの一部。余剰食品や規格外品を活用したメニューも提供する。
撮影:土屋咲花
入場料、売り上げの一部はサステナ企業の支援に
衣類のアップサイクルに取り組む企業の展示コーナーも設けた。
撮影:土屋咲花
木更津コンセプトストアは、入場料が300円(中学生以下は無料)。一部は、サステナブルな取り組みを行う事業への協賛「コントリ(contributionの略)」にあてる。
「コントリ先」は、不要になった衣類を肥料に変える「クレサヴァ」、廃棄する繊維から紙を作る「サーキュラーコットンファクトリー」、ファッション分野の循環型社会を目指した研究開発を行う「文化学園大学」の3者。入場券を購入する際に、どの事業者を応援するのかを選べる。
さらに、商品の売り上げの一部も「コントリ」される。商品の値札には商品価格のほかに、売り上げの中から「コントリ」にあてる額が書かれている。コントリ額は商品価格のおよそ1%だ。
施設内に設けた「ファクトリーラボ」では、3事業者の取り組みを展示形式で紹介する。
約100社と協業、衣類は三井不が買い取り
施設内にはキャラクター「PUTONs(プトンズ)」もいる。
撮影:土屋咲花
木更津コンセプトストアは、100以上にのぼるパートナー企業の協力を受けて出来上がっている。
全体のプロデュースは、セレクトリサイクルショップ「パスザバトン(PASS THE BATON)」を運営するスマイルズが手掛けた。
主体となる三井不動産は、余剰在庫を提供するアパレル企業(ブランドパートナー)から商品を買い取っている。
新保さんは
「デベロッパーである我々が物を仕入れて売るのは単純に考えるとリスクですが、商品の大量生産、大量消費のサイクルを変えるという事業性に重きを置いています。在庫を買い取るリスクを取ることで、多くのブランド様に今回の企画に参加していただきやすくしました」
と話す。
「デッドストック品は、一つのブランドの店舗に置いてあっても手に取られにくい。素晴らしいものに見せるために多くのブランドの商品を混ぜて陳列することで、他の商品との比較の中で個性を持って見えるようになっているはずです。今回、国内だけでなく海外ブランドにも参画いただきました。今後、この施設が世界的にも有名な拠点になっていければと思います」(新保さん)
施設は6月8日にオープンする。