奨学金にはいろいろな種類があるので、いかに情報収集するかが大事だ。
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- いまや大学生の2人に1人が奨学金を利用しており、社会問題となっている。
- 奨学金にはいろいろな種類があるので、いかに情報収集するかが大事だ。そして、それぞれの違いを理解しておくことが重要である。
- 進路検討のタイミングを利用して、親子でお金やお互いのライフプランを話し合う良いきっかけにすべきだ。
いまや大学生の2人に1人が奨学金を利用しており、これが社会問題となっている。そうした状況を受け、岸田政権では「出世払い奨学金」の創設などにも意欲を示しており、このトピックに対する世間の注目度は高い。
高校3年生の春になると、各学校で奨学金に関する説明会が開催される。その際にしっかり済ませておきたいのが、子どもとの話し合いだ。お互いに納得したうえで方針を決めておかないと、のちのちの火種となる場合が多いからである。
今回は、奨学金利用に至るまでに踏んでおきたいステップを順番に解説していく。
1. 利用するべき奨学金を選定する
奨学金を借りるために、最も利用されているのは日本学生支援機構だ。だが、大学や自治体、民間企業などでも提供されており、選択肢はさまざまある。
これらは進学後に利用することもできるが、審査に落ちる可能性もある。そのため、入学前に利用を検討するのが一般的だ。
加えて奨学金にはさまざまな種類があり、返済義務、利子などの扱いが異なる。借りる場合はどの奨学金になるか、またそもそも子どもの進路で実際に活用できるか、事前によく確認しておきたい。
奨学金の種類
奨学金には、大きく分けて2つの種類がある。
1つ目が返済不要の「給付型奨学金」。2つ目が返済を要する「貸与型奨学金」だ。さらに、この貸与型奨学金には利息がない「第一種奨学金」と、利息を付けて返す「第二種奨学金」の2つがある。
なお進学先としては、専門学校や国内大学だけでなく、比較的高額の費用が必要な海外留学にも利用可能だ。
奨学金の利用時の注意点
・返済計画も確認しておくこと:給付型奨学金は、住民税非課税および非課税に準じる世帯が利用できる制度だ。そのため一定以上の収入があれば、返済義務が生じる貸与型奨学金を利用することになる。だからこそ、後ほど返済できるかどうかも検討した上で借りる必要があるのだ。
・振込は入学後になること:奨学金の振込は入学後なので、入学準備や入学時の費用には充てることができない。奨学金の利用については各学校で説明会が開催されるが、日本学生支援機構のホームページに制度の概要や申し込み手続き等について、動画で分かりやすく解説している。学校での説明会と合わせて、確認しておくとよいだろう。
・申し込み後のキャンセルは可能:奨学金を申込んでも、最終的に必要ないと判断した場合、キャンセルも可能だ。そのため、奨学金を利用するかどうか迷っている場合、いったん申し込んでおいても損はない。進学後に届けを出さなければ自動的にキャンセルになり、ペナルティが課されることもない。
・他の選択肢もチェックする:日本学生支援機構以外の奨学金も忘れずにチェックしておきたい。前述した通り、自治体(例:杉並区)や大学(例:慶應義塾大学)、一般企業(例:キーエンス財団)等で独自の奨学金制度を設けている場合もある。各所のホームページや奨学金のポータルサイトなどで調べてみると、意外と知られていない制度が見つかることもある。
2. 子どもの借金になり得ることを理解する
返済義務のある貸与奨学金を利用する場合、その詳細を理解していないと後々子どもが苦労することになる。
なぜならば、奨学金の返済義務は子どもに生じるからだ。つまり、大学の学費で奨学金を利用した場合、子どもが社会人になってから中長期でその返済していくことになる。
この事実を子ども自身が知らずに奨学金を利用してしまい、返済を滞納してしまう。さらに、知っていたとしても無計画な借り入れをしてしまったため、返済ができなくなり、生活が苦しくなる、ということが今、社会問題となっている。
日本学生支援機構が実施した、令和2年度奨学⾦の返還者に関する属性調査結果によると、奨学金の延滞者は、無延滞者に比べて、自分ではなく親を通じて奨学金の申し込みをしているケースが多い。申し込み時点で、自分に返済義務があることを知らない場合も、比較的多いことが明らかになっている。
延滞者の方が非正規雇用になる確率が高く、比較的収入が低い傾向にあるようだ。また、いろいろなメディアやSNSを見ると、社会人になった後に長期間の奨学金返済が苦しいという実体験を至るところで目にする。
一方、子どもに借金を負わせないために、奨学金ではなく教育ローンを利用する方法もある。この場合、ローンを借りた親に返済義務があるのだ。
もちろん金利は奨学金よりも高くなる。だが返済義務のことを考えれば、あえて教育ローンを活用するのも1つの方法だろう。
教育ローンには、国のものと民間銀行のもの、大きく分けて2つがある。まずは、より金利が低い国の教育ローン、その後に民間銀行のローンを検討するとよい。
3. 子どもと進学費用について話し合う
大学などの進学資金には大きな金額がかかる。この費用をどのように捻出するかは夫婦だけでなく、子どもも交えてぜひ話し合いをしておきたい。
奨学金を借りるなら、社会人になった後に子どもに返済義務が生じることになる。その事実と合わせて、奨学金を借りた場合の将来の返済計画についても事前に確認をしておく必要があるのだ。
せっかく奨学金を借りて進学をしても、社会人になって子どもが生活苦に陥ったら元も子もない。日本学生支援機構ホームページで返済シミュレーションもできるので、こちらも活用してみてほしい。
ローンで親がお金を借りた場合でも、子どもと話し合う必要がある点は同様である。子どもが進学することは、親のマネープランにも大きな影響があるからだ。このことを子どもが知ることで、進学することの重みを感じてもらうことができる。
また、そこまでしてなぜ進学するか子どもに考えてもらうことで、本人が将来を考えるきっかけになるだろう。加えて、子どもの教育に大きな出費があることを本人に知ってもらうことは、お金の教育にも繋がる。筆者の実感としては、子どもの頃から家庭内でお金について会話する習慣のある人の方が、マネーリテラシーが高い印象がある。
さらに、いずれの場合でも子どもにアルバイトをしてもらい、子ども自身にも学費の捻出のために協力を求める必要も出てくるだろう。親だけで進学資金を賄おうとし過ぎては、夫婦の将来の老後生活に支障が出ることになりかねない。
まとめ
奨学金にはいろいろな種類があるので、情報収集が大事だ。そして、それぞれの違いを理解しておくことが重要になる。
さらに利用方法によっては、親にとっても子どもにとっても、将来のマネープランに大きな影響を及ぼす。ただ大学進学を考えるタイミングは、親子でお金やお互いのライフプランを話し合う良いきっかけにもなるはずだ。
子どもとお金について話をすることに抵抗を感じる方もいるだろうが、お互いの将来にために、ぜひ一度話し合ってほしい。