今回のコラボアイテム、「クラフトジン アップサイクル オールドファッション」と「LITTLE JOY SPIRITS」。
撮影:荒幡温子
クリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパン(以下、KKDJ)が、アップサイクルなドーナツを限定販売する。使用するのは、クラフトジンの製造工程で残る、ハーブや香辛料の残渣(ざんさ)だ。
サントリーHDも出資した蒸留ベンチャー「エシカル・スピリッツ」とのコラボレーションとなる今回の取り組みでは、KKDJの定番商品「オリジナル・グレーズド」のロス部分からアップサイクルしたクラフトジン「LITTLE JOY SPIRITS」も開発された。
大人向けアップサイクルドーナツが誕生
アップサイクルなドーナツ「クラフトジン アップサイクル オールドファッション」。
撮影:荒幡温子
アップサイクルなドーナツ「クラフトジン アップサイクル オールドファッション」には、エシカル・スピリッツの代表的なジン「LAST ELEGANT(以下、エレガント)」の蒸留後に発生するハーブや香辛料などの廃棄物を生地に混ぜ込み、表面のアイシング(表面のデコレーション)は「エレガント」で香り付けされている。
残渣の独特の香りだけでなく、食感も楽しみながら味わえる。
撮影:荒幡温子
実際に食べてみると、ハーブの香りが口いっぱいに広がり、あとから来るピリッとした山椒をアクセントに、大人向けの味わいだと感じた。
それもそのはず。このドーナツは旗艦店となる東京国際フォーラム店で、環境月間である6月の毎週金曜・土曜17〜21時に限定販売されるもので、「夜に楽しむ」ことを想定して開発されている。
今回のコラボでは、クラフトジンに合うドーナツや、ドーナツに合うクラフトジンも販売する。
撮影:荒幡温子
東京国際フォーラム店では、この期間にコラボジン「エレガント」を使用したノンアルコールカクテルや、ジンに合わせたオプションが追加されたドーナツバーガーなども販売。仕事や買い物帰りにサクッと食べ飲みできる、大人向けのラインナップを揃える。
「やはり、お子さんには少しクセのある味わい。販売場所も、ファミリー向けの郊外ではなく、オフィスワーカーなど年齢層の高い利用者も多い丸の内という立地を選びました」
と、KKDJの若月貴子社長は言う。
ロスドーナツを「一度焼き上げた」クラフトジン
残渣がコラボドーナツに使用された「LAST ELEGANT(エレガント)」と、コラボクラフトジン「LITTLE JOY SPIRITS」(右)、3300円(税込)。
撮影:荒幡温子
コラボクラフトジン「LITTLE JOY SPIRITS」の香り付けには、ドーナツの製造工程でどうしても発生してしまう生地とグレーズ(表面のコーティングのようなもの)の余剰部分が使用されている。
その量は季節によって変動するものの、KKDJの全店舗合計で1カ月あたり約1トン以上となるという。今回限定販売される300本の開発では、403個分相当のドーナツを活用した。
蔵前に構える「東京リバーサイド蒸溜所」。
撮影:荒幡温子
通常、クラフトジンはお酒となるベーススピリッツに、香り付けの役割のボタニカルを漬け込むことで作られる。このボタニカルに、ロスドーナツを使用したわけだ。
「生地はクッキー状に焼き上げ、グレーズはキャラメリゼして漬け込むことで、もともとの生地やグレーズの香ばしさを損なわずに、より際立たせました」
と、エシカル・スピリッツのCOO・小野力氏は語る。
試飲してみると、甘さと香ばしさのなかに、さらに相性のいいオレンジやシークワサーのピール感があり、さっぱりとしていて飲みやすかった。
「LITTLE JOY SPIRITS」は、エシカル・スピリッツ公式ECサイトや、蔵前に構える蒸留所「東京リバーサイド蒸溜所」の他に、6月2日~3日にKKDJ東京国際フォーラム店内で開催するポップアップで購入できる。
「真面目に楽しく取り組める」きっかけに
クリスピー・クリーム・ドーナツの代表取締役社長・若月貴子氏と、エシカル・スピリッツのCOO・小野力氏。
撮影:荒幡温子
今回KKDJとコラボしたエシカル・スピリッツは、2020年に設立したエシカルジンを生産する蒸留ベンチャー。2022年8月には、サントリーホールディングスを含む3社から2億円の資金調達を実施している。
これまで、酒造で廃棄されるはずの酒粕や、コロナ禍で廃棄となるビールなどをジンへと再生させてきた実績がある。KKDJは、このクラフトジンとドーナツの意外な組み合わせで関心を呼ぶことで、フードロス問題に「真面目に楽しく取り組める」きっかけを作ろうと今回のコラボを打診したという。
店頭では、クラフトジンをテイクアウトカップで楽しめるだけでなく、クラフトジンの香り体験もできる。
撮影:荒幡温子
次のステップとして、エシカル・スピリッツでは、より多くのKKDJのロスドーナツを活用する方法を開発している。今回、ボタニカル(香り付け)に使ったロスドーナツの生地部分には、お酒の要素となるでんぷんが含まれており、ベーススピリッツとしての可能性も秘めているそうだ。
独自フレーバーとキャビネット販売でコロナ禍を乗り切る
撮影:荒幡温子
KKDJは2015年の最大64店舗をピークに、一度大量閉店に追い込まれた苦い歴史がある。
ただ、詳しい売上データは公開していないものの、コロナ禍の2020年を除いて、2017年ごろからこれまで右肩上がりの成長を続けているという。店舗数も、6月2日オープンのそごう千葉店を加えると、最盛期に並んだ。
若月社長によると、その背景として組織体制の改革やマーケティング戦略の変更など、さまざまな要因があるというが、なかでも注力してきたのが日本人好みの商品開発だ。
「『ブリュレ グレーズド カスタード』といった独自フレーバーや、日本人向けの甘すぎないチョコレートコーティングなど、日本オリジナルの開発には、特に力を入れてきました」
また、2019年11月から販売開始した、明治屋や紀ノ国屋といった高級スーパーなどでのキャビネット販売も活況だ。来客数に伸び悩むコロナ禍でも、着実に販売チャネルを拡大し、現在は約170カ所にも及ぶ。
ドーナツは店舗で手作り。東京国際フォーラム店では、製造工程を見ることができる。
撮影:荒幡温子
以前から、ロスドーナツの肥料化や子ども食堂でドーナツのデコイベントなど、さまざまな社会課題に取り組んできたというが、今後はさらにその勢いを加速させ、地域密着型の取り組みをしていきたいと語る。
「今回は東京でのイベントだったので、蔵前のエシカル・スピリッツさんにご協力いただきました。まずはこれを手始めに、今後は、拠点のある名古屋、北海道、大阪などの各地域で、ローカルとのつながりを強化していけたらと考えております(若月社長)」