「今度の大波はホンモノだ」何度か繰り返されてきた人工知能(AI)ブームも、今度はブームで終わらないかもしれない。
REUTERS/Dado Ruvic/Illustration/
幾度かのブームを繰り返しながら、ここまで隙間市場にとどまってきた人工知能(AI)も、ついに今年メインストリームに移行してもはや無視できない大きな存在となった、というのが米金融大手ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)の現状認識だ。
米AI開発企業OpenAI(オープンエーアイ)が開発した対話型AI「ChatGPT(チャットジーピーティー)」や画像生成AI「DALL-E 2」が熱狂的な支持を受けて世界中に広がり、ほんの数年前には想像もつかなかったようなAI生成コンテンツの出現が日常化している。
ゴールドマンのデリバティブ(金融派生商品)リサーチ担当バイスプレジデント、セシャ・ファニ氏は5月31日付の顧客向けレポートでこう指摘する。
「ジェネレーティブ(生成)AIはここしばらくの進化を経て、クエリ(命令)に対するアプトプット(回答)において、人間の手によるものと判別するのが困難なコンテンツを生み出す能力を獲得し、人間と機械の間にあるコミュニケーション障壁を取り払うことに貢献しています」
現時点ではAIを試してみた程度の「若葉マーク」企業が大半を占めるものの、将来的には現存する職種の最大4分の1がAIに置き換わり、任務の約3分の2が自動化される可能性がある、というのがゴールドマンの見立てだ。
その予測が正しければ、労働市場は破壊されるが、経済成長は促進されるだろう。
「当社のエコノミストは、最近の人工知能の進化によって労働生産性が向上し、世界の国内総生産(GDP)総額は10年間で7兆ドル積み上がると予測しています」
当然のことながら、投資家たちの想像力も膨らんでいく。
米画像半導体大手エヌビディア(Nvidia)や前出OpenAIに巨額の追加投資を発表したマイクロソフト(Microsoft)、その最大の競合企業で傘下にグーグル(Google)を置くアルファベット(Alphabet)など、巨大ハイテク企業の株価は2023年に入って急回復を続けている。
とりわけエヌビディアの勢いは猛烈で、株価は年初来約175%上昇(6月2日終値)、時価総額は5月30日に一時1兆ドルを超えた。現在は1兆ドルを下回る米電気自動車大手テスラ(Tesla)やメタ・プラットフォームズ(Meta Platforms)を含めて、史上8社目の快挙だた。
2023年最初の四半期決算説明会では、各社とも株主の期待を読み取ってか、リップサービス含めAIに関する発言が相次いだ。
通信サービス、情報技術セクターに属するS&P500種構成企業では60%以上が、一般消費財、不動産、資本財セクターでも約4分の1がAIに言及した【図表1】。
【図表1】通信サービス(左端)および情報技術(左から2番目)セクターの経営陣は、決算発表の場(2023年5月11日までの開催分)において高い確率でAIに言及した。前者が77%、後者が62%。
Goldman Sachs
いますぐ投資すべきAI関連15銘柄
AI分野に押し寄せる大波に乗じてリターンを確保したい投資家は、ファニ氏が前出のレポートでゴールドマン・サックスの買い推奨として紹介する、AI開発の最前線に直接もしくは間接的に取り組んでいる15銘柄へのエスクポージャーを検討すると良いだろう。
これらの銘柄には、ソフトウェア、半導体、テクノロジーハードウェア、メディア、インターネット、情報技術サービスなど、幅広い業種の企業が含まれる。
なお、15銘柄を直接購入してエクスポージャーを取る選択肢ももちろんあるが、ファニ氏は3カ月物OTC(店頭)ATM(アット・ザ・マネー、原資産価格が権利行使価格と等しい状態)コールオプション(原資産を権利行使価格で買う権利)の買いを通じてエクスポージャーを取る手法に注目する。
コールオプションを購入する場合は、あらかじめ定められた期間内に原資産価格(本記事の文脈では15銘柄の株価)が権利行使価格以上に上昇すると予想し、実際にそうなった時だけ利益を得ることができる。
ただし、権利行使価格に達しない場合は権利を放棄すれば、損失はオプション購入時に支払った代金(プレミアム)に限定されるので、リスクを減らし、なおかつ株式銘柄を直接購入するより少ない資金で投資できる。
ファニ氏の注目する店頭オプションは、金融商品取引所などを通さず、証券会社などの店頭市場で当事者間の相対ベースで取引するので、より複雑だ。目安になる権利行使価格がなく、期間も当事者間で自由に設定できるので、交渉次第の取引になる。
では、ゴールドマン・サックスが強気とするAI関連15銘柄を以下に列挙しよう。
3カ月物デルタ+0.5(原資産に対するオプション価格の変化率もしくは権利行使価格以上への到達確率50%)コールオプションのインプライド・ボラティリティ(予想変動率)、ボラティリティ・スキュー(歪度)、5月30日時点の手数料除く名目ベースのコールオプション価格(カッコ内は対株価比率)を付した。
アップル(Apple)
Apple
Markets Insider
- インプライド・ボラティリティ:23bps(1bps=0.01%)
- ボラティリティ・スキュー:0.26
- コールオプション価格:9.46ドル(株価の5.3%、以下同)
マイクロソフト(Microsoft)
Microsoft
Markets Insider
- インプライド・ボラティリティ:25bps
- ボラティリティ・スキュー:0.17
- コールオプション価格:18.69ドル(5.6%)
アルファベット(Alphabet)
Alphabet
Markets Insider
- インプライド・ボラティリティ:30bps
- ボラティリティ・スキュー:0.15
- コールオプション価格:8.30ドル(6.7%)
パロアルト・ネットワークス(Palo Alto Networks)
Palo Alto Networks
Markets Insider
- インプライド・ボラティリティ:33bps
- ボラティリティ・スキュー:0.15
- コールオプション価格:15.68ドル(7.4%)
アマゾン(Amazon)
Amazon
Markets Insider
- インプライド・ボラティリティ:34bps
- ボラティリティ・スキュー:0.15
- コールオプション価格:9.30ドル(7.6%)
セールスフォース(Salesforce)
Salesforce
Markets Insider
- インプライド・ボラティリティ:37bps
- ボラティリティ・スキュー:0.12
- コールオプション価格:17.88ドル(8.2%)
メタ・プラットフォームズ(Meta Platforms)
Meta Platforms
Markets Insider
インプライド・ボラティリティ:39bps
ボラティリティ・スキュー:0.12
コールオプション価格:22.76ドル(8.7%)
アリスタ・ネットワークス(Arista Networks)
Arista Networks
Markets Insider
- インプライド・ボラティリティ:42bps
- ボラティリティ・スキュー:0.03
- コールオプション価格:15.91ドル(9.1%)
マイクロン・テクノロジー(Micron Technology)
Micron Technology
Markets Insider
- インプライド・ボラティリティ:42bps
- ボラティリティ・スキュー:0.07
- コールオプション価格:6.54ドル(9.1%)
マーベル・テクノロジー(Marvell Technology)
Marvell
Markets Insider
- インプライド・ボラティリティ:48bps
- ボラティリティ・スキュー:0.05
- コールオプション価格:6.45ドル(10.2%)
エヌビディア(Nvidia)
Nvidia
Markets Insider
- インプライド・ボラティリティ:50bps
- ボラティリティ・スキュー:0.01
- コールオプション価格:43.06ドル(10.7%)
アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)
AMD
Markets Insider
- インプライド・ボラティリティ:51bps
- ボラティリティ・スキュー:0.01
- コールオプション価格:13.53ドル(10.8%)
クラウドストライク(Crowdstrike)
Crowdstrike
Markets Insider
- インプライド・ボラティリティ:50bps
- ボラティリティ・スキュー:0.12
- コールオプション価格:17.23ドル(10.9%)
スノーフレーク(Snowflake)
Snowflake
Markets Insider
- インプライド・ボラティリティ:51bps
- ボラティリティ・スキュー:0.08
- コールオプション価格:17.53ドル(11.0%)
データドッグ(Datadog)
Datadog
Markets Insider
- インプライド・ボラティリティ:53bps
- ボラティリティ・スキュー:0.10
- コールオプション価格:10.75ドル(11.5%)