2022年9月1日、ロシア、モスクワで軍事演習を行う兵士。
Russian Defense Ministry/Handout/Anadolu Agency via Getty Images
- エコノミストによると、ロシアのウクライナ侵攻で政府が負担した軍事費は、歴史的な基準からすると少ない額であるという。
- ロシアの支出は不透明だが、戦争に費やした費用はGDPの約3%と見られている。
- ソビエト連邦は第二次世界大戦にGDPの61%を費やしていた。
ロシアによるウクライナ侵攻は地政学的に大きな代償を払い、数万人の死者を出したが、エコノミスト(The Economist)の新たな分析によると、ロシアが軍事費と費やしているのは実はわずかな額であることがわかった。
戦争に伴う直接的な財政コスト(兵士や機材への支出)は、ロシアのGDPの約3%、つまり年間約670億ドル(約9兆3000億円)と推定されている。この数字は、侵攻前のロシア政府の防衛・安全保障に関する支出予測と、実際に支出した額を比較したものだ。
歴史的な基準からすると、今回の戦争は比較にならないほど小さなものだ。例えば、第二次世界大戦中のソ連はGDPの約61%を費やし、同時期のアメリカはGDPの約50%を戦争に費やしていた。
しかしながら、3%という数字は、ソ連がアフガニスタンでの戦争に費やしたGDPの0.4%を大きく上回っている。
ウクライナへの軍事費の支出が相対的に少ない理由のひとつは、政府がこの戦争を繰り返し「特別軍事作戦」と呼んでいるため、GDPから法外な割合を使うことができないという政治的なものである可能性がある。
一方でそこには経済的な理由もある。戦争資金のために現金を増刷すれば、インフレを進めてしまい、ロシア国民に重くのしかかるだろう。銀行に戦争の負債を負わせても同じようなことになる可能性があるため、どちらを選択してもウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領の政治的目的を損なう可能性がある。
さらに今日の軍隊を支えるテクノロジーはかつてないほど進化していて、戦争で必要な人材や機材は以前よりも少なくなっている。
確かにこの戦争は広範囲に及ぶ制裁をもたらし、世界の石油の流れや貿易を変えてしまい、ロシアのエネルギー優位を切り崩す結果となった。欧米諸国はロシア製品の輸入を禁止・ボイコットしているため、ロシア政府は石油などの製品の輸出先を探す必要に迫られている。