ジャナス・ヘンダーソン・インベスターズのアダム・ヘッツ氏
Janus Henderson Investors
ここ数カ月、リセッション(景気後退)懸念が高まり、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げサイクルの先行きが一層見えなくなっていることで、市場には恐怖が広がっている。投資家は投資銘柄をリスク資産から、よりディフェンシブ(守備的)な銘柄にピボットすることで、こうした短期的、循環的な逆風に対応している。
だが、ジャナス・ヘンダーソン・インベスターズ(Janus Henderson Investors)のポートフォリオ構築・戦略担当グローバル責任者のアダム・ヘッツ(Adam Hetts)氏は、短期的に経済が減速することに同意しつつも、投資家に注意を促している。ヘッツ氏は、短期的な逆風にとらわれすぎる投資家は、大局的な視点、つまり将来手にする可能性のある利益を見逃しているかもしれないと考えている。
「私たちもディフェンシブな気持ちでいるが、クライアントがリセッションのリスク、弱気市場のリスク、いつ起こるかわからないFRBの政策転換にややとらわれすぎているのではないかと少し心配している。おそらく最も重要なピボットは、ポートフォリオをディフェンスからオフェンスにピボットすることだろう」
ヘッツ氏はInsiderの取材に対しそう語る。現在、ジャナス・ヘンダーソンは約3105億ドル(約43兆5000億円、1ドル=140円換算)の資産を運用している。
「景気のスローダウンを認識し、適度にディフェンシブになりつつも、このサイクルの次のステージに移るときに素早く動けるよう、ポートフォリオにオフェンスの要素を持たせることが重要だ」
ヘッツ氏によると、オフェンシブな資産に適切に資産配分していない投資家は、市場が回復した際、上昇を享受できないリスクがあるという。
「投資家が底値の可能性を認識すればするほど、これは危機ではなく、調整局面であることが理解できる」とヘッツ氏は語り、さらに以下のように続けた。
「底値の可能性が見えれば見えるほど、底が抜けることを心配しなくなり、投資を継続し、ディフェンスとオフェンスを織り交ぜて、最高の日々を逃すことなく上昇を享受できる可能性は高まる」
ヘッツ氏は、オフェンシブな資産への回帰は投資家が想像するよりも早いかもしれないと考えている。過去を見ると、リセッションから3~4カ月で市場は底を打ち、S&P500は8~9カ月で回復していると同氏は述べる。
「夜明け前が最も暗い——通常、リセッションに入ってから3~4カ月が最も暗い。ウォーレン・バフェット氏が言ったように、他人が恐れている時こそ、貪欲であるべきだ」
ディフェンスとオフェンスのバランス
弱気相場が長引く場合、ヘッツ氏は収益の低下を予想し、堅実な収益を上げる優良企業への投資を勧めている。
「クオリティ銘柄は、過去を見ると一般的にリセッションの時には市場のパフォーマンスを上回っている。堅実で安定した収益が期待できるためだ。しかし、リセッションの状況はすべて異なっており、クオリティが意味するところも多くの違いがある」
今回のリセッションでは、ヘッツ氏は以下の3点に着目している。
まず、インフレは依然として高い水準で続いているため、コスト上昇に対抗できる、大きな利幅と強い価格決定力を持つ企業、つまり単にサバイバルするだけではなく、繁栄できる企業を見つけることが重要だ。
次に、一般的な景気減速を考えると、質の高い経営陣が揃っているだけでなく、長期的な競争優位性、つまり経済的な障壁を持つ企業への投資が重要となる。
最後に、現在の市場環境の特徴は、金利の変動が大きいことであり、投資家は質の高いバランスシートを持ち、負債が小さな企業を選択するよう注意すべきだ。なぜなら、金利が上昇すると、レバレッジはより高コスト、かつ不安定になるためだ。
オフェンシブな観点では、アメリカの中小株は景気減速の初期段階で大きな打撃を受ける可能性があるが、リセッション後の回復期に高いリターンを上げることができるとヘッツ氏は述べる。
「他人が恐れている時こそ、中小株に重点的に投資して、回復期のリバウンドを最大化したい」
さらにヘッツ氏は、中小株には高い収益を得られる可能性だけでなく、循環株(景気に合わせて周期的に変動する株)への投資にもつながると付け加える。
一方、外国株は守りと攻めの両方のメリットがある良い投資先であり、外国株はかなりの期間、安値で推移しているとヘッジ氏は述べた。
「弱気相場で経済が減速している時、米国株は過去の平均を上回っているが、外国株は実際、割安になっており、低迷を吸収できる安全なマージンがある」
さらにヘッツ氏は、外国株は一般的に、高い配当利回りと、金融、素材、工業などの循環株への投資機会にもつながると付け加えた。