「三ツ矢クラフトコーラ」ペットボトル(税込:176円)、缶(税込:149円)
撮影:杉本健太郎
以前はお洒落な店で飲める高級な飲み物というイメージが強かったクラフトコーラだが、2020年以降コンビニやスーパーにも並ぶようになった。
今年4月にはアサヒ飲料が「三ツ矢クラフトコーラ」をリニューアル発売し、伊良コーラも缶タイプの提供をコンビニやスーパーで始めた。
「三ツ矢クラフトコーラ」を製造・販売するアサヒ飲料によると、クラフトコーラに力を入れる背景には、コロナ禍の健康志向とノンアル人気があるという。
主なクラフトコーラ製品の発売時期
- IYOSHI CRAFT COLA 2020年7月発売
- カルディクラフトコーラ 2021年6月発売
- 成城石井クラフトコーラ 2021年6月発売
- ポッカクラフトコーラ 2021年6月発売
- 三ツ矢クラフトコーラ 2022年1月発売
- 伊良コーラ(缶タイプ)2023年4月発売
- 三ツ矢クラフトコーラリニューアル 2023年4月発売
クラフトコーラブームの牽引役「伊良コーラ」(税込:289円)。
撮影:杉本健太郎
「成城石井クラフトコーラ」(税込:270円)。
撮影:杉本健太郎
「三ツ矢クラフトコーラ」リニューアルの反響、売り上げは?
2022年1月の発売から1年で商品をリニューアルした「三ツ矢クラフトコーラ」。
アサヒ飲料マーケティング本部マーケティング一部炭酸グループ主任の渡瀬一以氏によると、主力のペットボトルの販売実績は、
リニューアル前の2023年3月:2万3千箱
リニューアル後の2023年4月:19万2千箱
とリニューアル前後で供給量が劇的に改善。
実は、三ツ矢クラフトコーラは販売時から好調を維持していた一方で、次々に発売する新商品に押され、店頭では手に入りにくい状況になっていた。今回、リニューアルと共に供給が増え、身近なコンビニやスーパーの店頭にも改めて並びやすくなった。
アサヒ飲料には、消費者から「もう一度店頭に並んで嬉しい」というファンからの声も寄せられている。リニューアル後には「熱量の高いファンが増えた」とも。変化を加えた味については「賛否両論ありつつもおおむね好評」で「売上も好調」だ。
アサヒ飲料マーケティング本部の渡瀬一以(かずゆき)氏。
撮影:杉本健太郎
アサヒ飲料がクラフトコーラに参入した理由
そもそもなぜアサヒ飲料が「三ツ矢」の名を冠したクラフトコーラを作ろうと思ったのか。
渡瀬氏は
「2010年以降、クラフトビールやクラフトジンなどクラフトの文脈が盛り上がっていることに着目しました。これを清涼飲料でやるならコーラだと思いました」
と語った。
加えて2010代から続くスパイスカレーブームにも注目。両方ともスパイスを使うことから、「スパイスカレーとクラフトコーラはおそらく同じような人がハマっている」(渡瀬氏)と予想。今回のリニューアルを監修したスパイス料理研究家も「スパイスを使った料理と飲物は相性が良い」と太鼓判を押す。
また、コロナ禍以降の健康志向の高まりで、人々が普通のコーラではなく「体に良いコーラ」を求めていると判断。「子供に飲ませても良いコーラを目指した」(渡瀬氏)という。
その他、プチ贅沢にお金を使う生活スタイルが広がったことや、飲めるけどあえて酒を飲まないライフスタイル「ソーバーキュリアス」の広がりにも注目し、「日常でプチ贅沢感を味わえる」「ノンアルでもスパイシーで刺激的な飲み物を提供する」ことを目指し開発を進めた。
アサヒグループ本社ビル。
撮影:杉本健太郎
2022年の発売から1年でリニューアルした理由
今回、リニューアルに踏み切った理由について、渡瀬氏は
「コカ・コーラ、ペプシコーラといった大きなブランドがあるコーラ市場の中で、 三ツ矢が提供できる価値はどこにあるのかということを考えた時に、戦い方をもう一度考え直すべきだと思いました」
と戦略見直しの必要性があったためだと語る。
リニューアル後のコンセプトは、「日本」「和」だ。
「(三ツ矢サイダーは)日本生まれの炭酸商品の中では、1番大きなブランドです。“日本生まれ”というところからくる安心感と信頼は根強い。“素材にこだわっている”“品質が良い”というイメージを持つ日本生まれの三ツ矢サイダーが、日本人に向けてコーラフレーバーの商品を出しましたというストーリーが、よりお客さんの安心感を増し、自分向けだと思ってもらえると思いました」(渡瀬氏)
リニューアル後の商品にはシソや柑橘など、和のテイストを感じさせる要素がプラスされている。
2023年はクラフトコーラ元年になるのか。
撮影:杉本健太郎
今度こそクラフトコーラを「定番商品」に
コンビニやスーパーなどの小売店の清涼飲料の棚には「新商品枠」と「定番商品枠」があり、渡瀬氏によれば、新商品枠は短いと2週間で入れ替わるという。日々数々の新商品が供給される中、好調だった一部の商品のみが「定番商品」として店頭に通年並ぶ位置を獲得できるのだ。
渡瀬氏はリニューアル前の「三ツ矢クラフトコーラ」が定番商品として確立しきれなかったことを認めた上で、リニューアル後は新商品枠から定番商品枠に置かれることを目指すとした。
幸い、4月のリニューアルから2カ月経った6月の段階でも「三ツ矢クラフトコーラ」は店頭に並んでいる。渡瀬氏も「評価してもらっている手応えを感じている」と話す。
さらに、昨年より「クラフトコーラそのものの認知の広がりを感じる」(渡瀬氏)としたうえで、「今後、飲食店にも提供できたら嬉しい。ノンアルを頼む時に烏龍茶だけでなくクラフトコーラの選択肢も提供したい」(渡瀬氏)と夢を語った。