不動産投資家のケント・ホー氏とその家族。
Courtesy of Kent He
ケント・ホー氏(Kent He、34歳)は約10年間、会社員として過ごした。
彼は2011年にベントレー大学を卒業後、プライスウォーターハウスクーパース(PwC)で約4年間コンサルタントとして勤務した。その後、家族が経営するレストラン事業の立て直しを支援するためにPwCを退職。そして2017年に大手保険会社に転職し、再び企業に勤めることになった。
「いつかは会社員として働くのを辞めたいと考えていました。そのためには、毎月キャッシュフローを生み出さなければいけません」
ホー氏は副業として、不動産投資に挑戦することにした。具体的には、短期のバケーションレンタルを始めてみようと考えたのだ。
調査した結果、エアビーアンドビー(Airbnb)の物件は、長期賃貸よりリスクが高いものの、最も多くのキャッシュフローを生み出すことができると確信した。
その読みは正しかった。サンディエゴ在住のホー氏は、2021年と2022年にアリゾナ州スコッツデールに2つの投資物件を購入し、若い独身女性をテーマにしたエアビーアンドビー物件に変えた。2022年半ばには、2つの短期レンタル物件から得られるキャッシュフローで家族の生活費を賄えるようになり、本業を辞めることができたのだ。
不況に勝つ戦略:短期レンタルと賃貸住宅へ投資先を多様化
ホー氏が短期レンタルを好む理由は「非常に多くのキャッシュフローが得られるから」だ。しかし、同時に次のようにも話す。
「一つの事業にすべてを投資するのは好ましくありません。再び感染症のパンデミックが発生し、すべてを失ってしまう可能性がないと誰が言い切れるでしょうか」
新型コロナウイルス感染症のパンデミック発生初期、感染の蔓延防止のために旅行が中止になり、一部の州や地方自治体では短期住宅レンタルが禁止された際、エアビーアンドビーのホストはすべての予約がキャンセルされるという事態に陥った。
「安心のために、常に別の資産クラスからキャッシュフローが得られることが望ましい」
2023年5月、彼はポートフォリオを拡大し、最初の手頃な価格の賃貸住宅(Affordable Housing)を購入した。アラバマ州フェアフィールドにある一戸建てで、低所得世帯を支援するアメリカ政府の住宅制度「セクション8(Section 8)」で長期に貸し出すものだ。
ホーは今後も、エアビーアンドビービジネスを成長させ続ける計画だ。この事業がキャッシュフローを生み出す最も効果的な方法であると信じており、そこから得た利益をソーシャルワーカーや救急救命士向けの手頃な価格の住宅に充てる予定だという。
そのような住宅があることで生活がどう変わるかを彼自身が実際に見てきたため、彼は情熱を持ってこの事業に取り組んでいる。
ボストンで育ったホー氏は「私の両親は、中国から約1000ドルを持ってボストンに来た」と語った。
「ボストンのチャイナタウンに住んでいたある晩、空き巣に入られ、一晩で1年分の給料を超える約5000ドルを失ったという話を、母から聞かされました。大半の家庭にとってこのような出来事は立ち直れないほどショックなことかもしれません。
しかし母は、手頃な価格の住宅に入居するキャンセル待ちリストに載っていたため、母はそれを希望に立ち直ることができたんだと私に話してくれました。そんなこんなで結局母は住宅に住めるようになり、泣くほど嬉しかったそうです」
ホー氏は現在、賃貸住宅を改装中で、この物件からは最低でも月200ドルの利益が出ると見込んでいる。
エアビーアンドビーの収入に比べれば少ないが、ポートフォリオを多様化することができる。しかも、短期間の賃貸収入は変動するのに対し、この賃貸物件ならば安定した収入が得られることもホー氏は心得ている。彼は、セクション8の家主ならば確実に家賃を回収することができると述べ、次のように付け加えた。
「セクション8の入居者が失業したとしても、政府が残りの家賃を支払ってくれるんです。住宅選択バウチャー保持者には、政府が必ず期限内に家賃を支払ってくれるため、これは不況に強い投資と言えます」
また、セクション8の家主は、年に一度、家賃の値上げを申請することができる。彼は長期的な目標として、このような賃貸住宅を1000戸所有することを掲げ、「完璧な分散戦略だと思う」と語る。
「短期レンタル物件で資産を大きく増やすことも可能ですが、手頃な価格の住宅でポートフォリオの多様性を維持することもできます」