2023年秋に登場する「iOS 17」の特徴。
出典:アップル
アップルは例年9月頃に新型iPhoneを発表するが、その中にプリインストールされる最新OS「iOS 17」を6月5日(現地時間)に開催した「WWDC23」で披露した。
iOS 17はWWDC基調講演とともにデベロッパーベータ版を提供開始したが、正式リリースは2023年秋の予定。
前述の通り、iOS 17は今後発表される新型iPhoneのほか、iPhone XR/XS/XS Max」(2018年)以降と「iPhone SE(第2世代)」(2020年)以降の機種に配信予定。
その新機能のうち特に注目の機能を5つのポイントに絞って解説しよう。
「電話」アプリで2つの進化
「連絡先ポスター」で作成したイメージ。
出典:アップル
iPhoneで誰もが1度は使うアプリと言えば「電話」アプリだ。その電話アプリに2つの大きな変更が施される。
1つ目は「連絡先ポスター(Contact Poster)」で、電話をかけた相手に表示される画面の内容(写真や文字)を設定できるというもの。
2022年9月配信の「iOS 16」で追加されたロック画面の編集と同様、連絡先ポスターでは被写体の後ろに文字を配置するといったことも可能。中国語と日本語では縦組みもサポートする。
連絡先ポスターは「連絡先」アプリの一要素となるため、着信時だけではなく連絡先アプリの詳細ページなどでも確認できる。
なお、アプリ開発者はアップルが用意する「CallKit」のAPIを活用することで、開発する通話に関するアプリ(例:VoIPアプリ)でも連絡先ポスターを表示できる。
通話開始前に相手が話している内容を文字起こしできる「Live Voicemail」。
出典:アップル
2つ目は「Live Voicemail」で、電話に出られない時に活躍する機能。相手にまずしゃべってもらい、その内容がリアルタイムで文字起こしされることで、今すぐ相手と話し始めるべき内容か判断できるというものだ。
なお、通話アプリで「不明な発信者を消音」(連絡先に登録されていない番号から着信したときに通知しない機能)をオンにしている場合は、着信音が鳴らずにそのままLive Voicemailに移行する仕様だ(スパムとして認識された番号の場合は、Live Voicemailに飛ばされず着信拒否となる)。
Live VoicemailはグーグルのPixelシリーズに搭載された「通話スクリーニング」と同じように端末内で音声を処理して文字起こしする仕組み。ただし、公式サイトによるとアップデート直後は英語(アメリカ、カナダ)でのみ利用可能なようだ。
連絡先交換など進化する「AirDrop」
iPhone同士を近づけることで連絡先を交換できる「NameDrop」。
出典:アップル
人気の機能である「AirDrop」にも新しい使い道が用意される。その名は「NameDrop」だ。
NameDropは、自分のiPhoneを他の人のiPhoneもしくはApple Watchにかざすことで、共有したい自分の電話番号やメールアドレスなどを相手に送れる、いわゆる「連絡先交換」の機能だ。共有時は前述の「連絡先ポスター」が全面に表示される。
また、AirDropの体験そのものも進化する。
従来はAirDropのメニューから転送先を選んで転送する仕組みだったが、それに加えてiPhone同士を近づけてAirDropでの転送が始められるようになる。
逆に転送中にWi-FiやBluetoothなどの範囲外になる、つまり接続が切れてしまった場合でも、iPhoneが自動的に切断を検知して、iCloud経由で続きからデータを送れる(送信側も受信側もiCloudにサインインしたiPhoneを使っている必要がある)。
Transformerで賢くなる文字入力機能
日本語の対応は未定だが、文字変換のスピードは速くなる。
出典:アップル
残念ながらiOS 17アップデート配信時では日本語に対応していないだろうが、注目の機能として文字入力の「自動修正(Autocorrect)」機能を挙げておきたい。
文字入力機能は言語に問わず常に進化してきた機能ではあるが、今回のiOS 17ではキーボードに「Transformer言語モデル」を採用。従来以上に最先端の単語予測が可能になるという。
従来は予測変換としてキーボードの上部に「ユーザーが入力したいであろう単語の候補」が表示されていたが、iOS 17のアップデートにより、その先の「文の候補」が表示されることになる(候補はグレーアウトで表示され、スペースキーを押すと確定される)。
なお、Transformerベースの技術は、音声入力にも提供され、精度向上が期待される。
新しい自動修正は日本語を除く13言語に対応し、英語、フランス語、スペイン語については「iPhone 12」(2020年10月発売)以降の機種で利用できる。
iPhoneが「スマートディスプレイ」になる
「StandBy」は通常、充電+端末を横にすると表示される。
出典:アップル
iPhoneの新しい使い道になるかもしれない機能が「スタンバイ(StandBy)」。
スタンバイは充電中にiPhoneを横向きにすると起動する画面で、時計や音楽プレイヤー、カレンダー、スマートホームの操作、Uber Eatsの配達状況などを、比較的大きな文字が表示される。
もちろん音声アシスタントの「Siri」にも対応。Siriは従来「Hey, Siri」と呼びかける必要があったが、iOS 17では呼びかけは「Siri」だけでよくなり、連続してリクエスト(命令)を送れるようになる。
なお、WWDC23の基調講演に登壇したアップルSVPのクレイグ・フェデリギ(Craig Federighi)氏は「14 Pro/14 Pro Maxではいつでも利用できる」としており、常時表示ディスプレイ対応機種では充電中でなくてもStandByが使える可能性がある。
AIが内容を提案してくれる「日記」機能
AIが内容を提案する「ジャーナル」(日記)機能は、2023年後半に提供予定。
出典:アップル
最後に、活用方法によっては公私共に使えそうな新機能が「ジャーナル(Journal)」だ。
単語の意味通り、思い出を振り返られる「日記」機能になっているが、特徴的なのはiPhoneがユーザーの使用状況などに応じて日記の内容を提案してくれる点にある。
提案はiPhone上の機械学習によって行われ、内容としても撮影した写真や位置情報、再生した音楽、実行したワークアウト(運動)などから取り込むことができる。
日記の候補として提案される内容は、こうした提案だけではなく、アップルは「熟考させる題材もある」という。
作成した日記自体の内容および候補となる内容はプライバシーに配慮され、提案機能もすべて端末内で処理され、内容はエンドツーエンドの暗号化処理をされた上で保存される。
ただし、ジャーナル機能は2023年後半に提供が予定されており、iOS 17のアップデートとはタイミングがずれる可能性がある。