大学スタートアップ、慶應が東大超えで増加数最多。秋田、高知など地方でも広がる起業の芽

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大学発ベンチャーが活発だ。経済産業省がまとめた調査によると、2022年度の大学発ベンチャー数は3782社。昨年度調査から477社増加し、企業数と増加数がともに過去最多となった。

政府も後押しする大学発ベンチャーの創出。企業数は全国で順調に増える一方で、報告書からは事業成長における課題も見える。

大学発ベンチャーの数と増加数はともに過去最多となった。

大学発ベンチャーの数と増加数はともに過去最多となった。

出展:令和4年度産業技術調査(大学発ベンチャー実態等調査)報告書

増加数は「慶應」が東大超え

関連大学別では、国立大や有名私大だけでなく地方大学も数を増やした。

関連大学別では、国立大や有名私大だけでなく地方大学も数を増やした。

出展:令和4年度産業技術調査(大学発ベンチャー実態等調査)報告書

国立大が先行していた大学発ベンチャーの創出だが、調査からは私立大や地方の大学の伸びが分かる。

大学ごとの増加数では、慶應義塾大学が前年から61社増で首位だった。慶應では3年後までに大学発スタートアップを300社創出することを掲げ、人材確保などの支援を強化している。総数でも2022年度段階で236社と前年の5位から3位に浮上。トップの東京大(371社)にはまだ及ばないものの、存在感が高まっている。

増加率では、地方の大学の動きも目立つ。秋田大(6社から11社に増加)、高知大(同9社から14社)など、これまで主に首都圏や都市部の大学に集中していた大学発ベンチャーが少しずつ全国に広がり始めている様子がうかがえる。

業種はIT(アプリケーション、ソフトウェア)やバイオ・ヘルスケア・医療機器が多数を占める。

売上高は5000万未満、営業利益は0円が最多

営業利益は「0円」の回答が最多だった。赤字企業は116社ある。

営業利益は「0円」の回答が最多だった。赤字企業は116社ある。

出展:令和4年度産業技術調査(大学発ベンチャー実態等調査)報告書

経産省の調査に回答した企業は、若い企業が多く、設立3年以内と5年以内が合計78.5%を占めた。正社員数は5人未満の企業が約半数で最も多い。

売上高は1000万円以上5000万円未満が最も多く、約3割。次いで1億円以上10億円未満が19%、0円が18.4%だった。この比率は20年前と大きく変わらない。

営業利益を見てみると、「0円」の企業が最多で24%。反対に「1億円以上」と回答した企業は1%に過ぎなかった。

大学発ベンチャーの多くは大学での研究成果や創業者の持つ技術をビジネス化する目的で設立されていることが多い。いわゆるディープテック領域をはじめ、技術開発が先行して利益を生むまでに時間を要するケースもみられる。

この期間を短縮するために克服していきたいポイントも、この調査から見えてくる。

資金調達や経営人材不足が課題

資金調達先は創業家や親族などの「身内」が高い割合を占める。

資金調達先は創業家や親族などの「身内」が高い割合を占める。

出展:令和4年度産業技術調査(大学発ベンチャー実態等調査)報告書

大学発ベンチャーの課題が分かる項目を見ていこう。

資金調達先は、事業ステージにかかわらず「創業家やその家族、親族、知人」の身内が最も多く、5~7割を占める。VCからの資金調達はPoCの前後でも3割に満たない。

VCとの関係性については「困難に感じたことはない」とする回答が最多な一方で、ヒアリング調査では「研究開発型スタートアップに投資するVCが少ないほか、ファンドサイズが小さい点が課題」「各種助成金等の申請に対し、何をどのようにアピールすればよいか十分に理解できておらず、その方法を知りたい」といった声も上がった。

人材面では、経営戦略や資金調達など、事業化に向けて重要な役割を担うポジションの採用が難航していることが課題の一つになっているようだ。

役員人材のうち、「必要だったが、獲得できなかった」割合が一番高かったのがCFOで、24%だった。マネジャー人材では、「マーケティング・営業」と「戦略・事業開発」の人材が「必要だったが、獲得できなかった」割合が高く、約3割に上った。

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