「強気相場」って何? その意味と仕組み、投資のタイミング

長期間にわたって株価が全体的に20%ほど上昇しているとき、ブルマーケットと呼ばれる。

Adam Gault/Getty Images

  • 通常、景気の拡大期に株価あるいはほかの資産が長期にわたってコンスタントに上昇している市場はブルマーケット(強気相場)と呼ばれる。
  • ほとんどの場合で、ブルマーケットには投資家から高い信頼が寄せられ、経済全体が活気づく。
  • ブルマーケット到来の見極めは想像以上に難しいため、ほとんどの投資家は自分で定めた長期戦略と目標にこだわり続けたほうがいい。

投資に興味がある人は、「ブルマーケット(強気相場)」という言葉が頻繁に用いられていることに気づくだろう。テレビやTwitterなどで、投資専門家が「今日はブルな1日だった」などと発信している。だが、ブルマーケットとはいったい何のことで、それが個人投資とどう関係してくるのだろうか?

ここでは、ブルマーケットが何を意味しているのか、ベアマーケットと何が違うのか、そしてこの2種類の市況が機関投資家や個人投資家にどう影響するのかを見ていこう。

ブルマーケットって何?

ブルマーケット(ブルランとも言う)は、長期にわたって総合的な株価が上昇し続ける市場を指す。

「経済が活発で株価が上昇しているとき、ブルマーケットが現れる」と説明するのは、ワデル&アソシエイツ(Waddell & Associates)で認定ファイナンシャルプランナー兼シニア・ウェルス・ストラテジストとして活躍するテレサ・J・W・ベイリー氏だ。

こうなればブルマーケットだ、と定める公式の指標は存在しない。ただし経験上、直近の低迷期から株価が20%上昇したとき、それ以降も成長が続くサインだとみなされる。

「アフリカ系アメリカ人コミュニティの失業率は過去に比べて低くなっている」。プラクティス・マネジメント・コンサルタンツLLC(Practice Managment Consultants, LLC)のプリンシパルおよびエグゼクティブ・マネジングパートナーで、アフリカ系アメリカ人アドバイザー協会の会長も務めるクリスチャン・ヌワシケ氏は言う。「働いている人が増え、彼らにも自分で決めた長期計画のために、市場に資金を投じることができるようになった」

ブルマーケットという用語は、S&P 500、テクノロジー系に強いナスダック、そしてダウ・ジョーンズ工業株価平均など、主要指数で測定される株式市場で頻繁に用いられる。だが、個別株や、あるいは不動産、債券、通貨などの株式以外の市場も、ブルマーケットになりえる。

優れた投資アプリが幅広い投資オプション(株式、債券、暗号通貨など)と市場へのアクセスを提供している。初心者向けの優良投資アプリは、学習や調査の手段、あるいは人間のアドバイザーも低価格で提供している。

ブルマーケットとは対照的に、株価が直近の最高値から20%下落した市場は「ベアマーケット」と呼ばれる。名前を見れば、その違いは明らかだ。ブル(雄牛)は挑発されると、助走をつけて猛スピードで突進してくる。そのことから、急上昇する株式市場の象徴とみなされるようになった。逆に、ベア(熊)は気難しく、攻撃よりも守りのイメージがあり、冬眠もする。そのため、下落あるいは低迷する株式市場の比喩として用いられるようになった。

ブルマーケットのきっかけは?

企業投資と個人消費の増加によって経済が活気づいているときにブルマーケットが発生しやすい。人々は商品やサービスにお金を使い、企業は収益も雇用も増え、新たな技術に投資できる。

経済が成長すればするほど、ブルマーケットも長く続きやすい。しかし、支出と生産が増えると、商品やサービスの価格が高騰することもある。このインフレが経済にダメージを与える場合もある。

今はブルマーケット?

2022年の10月に底をついたあと、株式市場は同年の第4四半期に損失をある程度回収することができた。しかし、2023年も好調が続くかという点では、専門家の意見は割れている。

たとえば2022年に比べて50%近くの上昇を見せるメガキャップテクノロジー株など、一部の投資はとても有望に見える。S&P 500は去年10月の底値から14%近く回復し、ブルマーケットと呼べる状態まであと6%に迫っている。

それでも今年の後半については、専門家の意見は一致しない。市場は昨年の損失から回復できると前向きに予想する専門家もいれば、銀行の破綻、低迷を続ける労働市場、不動産金利の上昇などを原因とする景気後退が目前に迫っていると考える者もいる。

なぜブルマーケットと呼ばれるのか?

突進するブルと冬眠するベアはイメージとしてわかりやすいが、もともとは両動物の攻撃方法の違いがブルマーケットとベアマーケットの名前の由来になったと言われている。ベアは獲物に向かって拳を振り落とすが、ブルは頭を突き上げる。

また、「ブル」という言葉は、挑発された雄牛が敵に猛スピードで突進するように、自信満々の投資家が市場に「突き進む」様子を表しているとも考えられている。

ブルマーケットの特徴

ブルマーケットと経済全般の「上昇期」は必ずしも一致するわけではないのだが、それでもブルマーケットは多くの場合で経済全般の上昇を、具体的には、GDP、個人消費、工業生産のすべてが上昇する景気循環の拡大期を反映している。

ブルマーケットのおもな特徴として以下が挙げられる。

  • 投資家の自信の増大:株価の上昇にともない、投資家は株価が上がり続けると確信するようになり、株を買い続ける。すると需要と供給のバランスが働き、株価がさらに上がる。
  • 企業は自社の将来に積極的に賭けるようになる:個人消費が増えるため、企業は自社への投資や拡大に力を注げるようになる。
  • 失業率が低下する:拡大する企業が従業員を増やすので、失業率が下がる。労働者を獲得するために企業が競い合うので、平均賃金が上がる。また、今の職場よりも賃金のいい雇用先が見つかる可能性が高くなるため、新しい仕事を見つけようとする労働者も増える。
  • お金を使うようになる:賃金が増えるため、消費者は使える現金が増える。使ってもそれ以上に稼げると思える。
  • その結果、過度なインフレーションの恐れが高まる:支出が増えすぎると、商品価格が上昇する可能性が高まる。

ブルマーケットはいつまで続く?

どのブルマーケットも同じではないが、平均で2.7年ほど続く。ベアマーケットの期間ははるかに短くて、平均で9.7カ月しか続かない。

昔から、「ブルマーケットが年老いて死んでいくことは決してない」と言われている。価格があまりにも高くあるいは速く上昇したとか、何か特別な出来事があって投資家が市場への信頼を失ったとか、根本的な変化が生じたときに、ブルマーケットは終わりを迎える。

市場がいつ最高点に達するかを地上レベルから見定めるのは不可能なので、前もって転換点を予想するのも非常に難しい。もちろん、だからといって投資家が活動をやめるわけでもない。

「市場はすごいスピードで動く。過去には、1日で9%か10%ほど動いたこともあった」とベイリー氏は言う。

ブルマーケットの期間の長さは、その時代の要因によって決まる。この点は、過去に起こった最大規模のブルマーケットを少し観察すれば明らかになる。

第二次世界大戦後の回復期:1949年6月から1956年8月

戦後の最盛期にはS&P 500が86カ月で267%も上昇し、年率20%のすばらしいリターンをもたらした。米国内に目を向けると、ベビーブーム世代を刺激する消費財が経済の牽引力となった一方で、強力な輸出市場もまた、企業の成長を後押しした。連邦準備制度による金利の引き上げと他国との緊張関係を原因に、このブルマーケットは勢いをなくし、ベアマーケット期が始まった。しかしながら、市場は1957年には勢いを取り戻した。

住宅ブーム:2002年10月から2007年10月

投資を刺激する目的で連邦政府が金利を大幅に引き下げたことがきっかけとなって、「住宅バブル」として知られる不動産業界の劇的な成長が始まった。金融機関は、住宅金融、不動産投資、住宅ローン取引を斡旋し、とても好調だったのだが、金利がふたたび上昇したことで、サブプライムローンの債務不履行が相次ぎ、これがサブプライム住宅ローン危機にまで発展した。2007年10月初頭の最高値をもってブルマーケットは終わり、景気後退が始まった。このベアマーケットは翌年の夏まで続いた。

史上最長のブル期:2009年3月から2020年3月まで

このブルマーケットが史上最長で、131.4カ月(およそ11年)続いた。グレート・リセッション(2007年から2009年)で散々な目に遭ったあと、2009年3月6日時点で666ポイントという底値を記録したS&P 500が400%を超える上昇を示した。2020年2月12日、ダウ・ジョーンズ工業株価平均は2万9551ポイントという最高記録を打ち立てた。S&Pだけでも紙面上の利益は18兆ドル(約2500兆円)を超え、この時期の失業率は40年ぶりに4%を下回った。

しかし、わずか1カ月後の3月11日に、ダウは価値を20%以上減らし、1万9000ポイント未満にまで下落。S&P 500とナスダックも、すぐにそのあとを追った。最大の原因は? 新型コロナウイルスの世界的流行による経済と社会への影響で不安が広がり、企業が門を閉ざし、数え切れないほどの人々が職を失ったからだ。

ブルマーケットに投資する方法

慎重な投資家がブルマーケットにどう向き合うかを知りたい? それでは、ここでヒントをいくつか示そう。

1.市場のタイミングを見測ろうとしない

市場がいつ最高点に達するかを知るのはほぼ不可能で、専門家でさえ正しく予想できることはほとんどない。そのため、誰もが売り遅れてしまうこともあるし、売るのが早すぎて利益を取り逃してしまう恐れもある。したがって、市場が頂点に達したと思い込んで一気にすべてを売ったりせずに、市場へは(自分で前もって決めた基準に従うなどしながら)時間をかけてじっくりと参入あるいは撤退するのがいいだろう。

資産目標に応じて、投資戦略も変えることができる。

「市場には投機について語る人がたくさんいますが、自分が何を達成したいのかがはっきりしていないのであれば、投機アドバイスに従うことすらままならいのです」とヌワシケは言う。

たとえば「ドルコスト平均法」のような投資戦略に従うと決めたのなら、それを貫くべきだ。

ベイリー氏はこう説明する。「ドルコスト平均法とは、給料が入るたびに一定額を株式の購入に使う、という意味だ。ですが、その株式の価値は時間とともに変動する。価格の高い時点で買うときもあれば、低いタイミングで買うこともある」

2.分散させる

市場が成長しているとき、急上昇を示す株やセクターにすべてを投じる誘惑を覚えるかもしれないが、その成長は予想よりも早い時期に終わるかもしれない。いわゆる勝ち組の株だけを買ったところで、その価値はつり上げられたものでしかなく、またたく間に蒸発してしまうこともある。

「つねに分散を心がけよう」とヌワシケ氏は言う。「私は、投資を始めようとしている人には、必ずポートフォリオの分散を最初の戦略にするように勧めている。そして、それらを定期的に監視するのだ。30日ごとに自分のポジションを確認して、種々のアセットに投じる額を調整するといい」

超がつくほど強力なブルマーケットでは、脆弱な企業ですら堅調に見える。しかし、それは見せかけだ。効果的に分散させる方法をよく理解し、個別の銘柄や企業に関するニュースに反射的に反応するのは投資先を決める最善の方法ではないことを、肝に銘じておこう。

3.消費者は全能だと理解する

この数十年、製品を(企業向けではなく)顧客に直接売る企業が有利であることが証明されてきた。近年のブルマーケットでも、そのような企業がおもに力を発揮してきたが、それよりも重要なのは、そうした企業は景気の低迷期にも安全な避難港になる可能性がある点だ。そのような企業の株式、あるいはそうした屈強な企業の大型株を含む投資信託への投資を検討しよう。

ブルマーケットへの投資

ブルマーケットの終わりを正確に予想するのは不可能だ。だが、どのブルマーケットも、何らかの力が投資家の未来観に変化を促し、株価が高すぎると感じられるようになったときに必ず終わる。

株価の下落は避けられないことだが、これまでの歴史を通じて、株式市場は必ず上昇してきた。つまり、市場に投資しないのは、長期的に見て利益を逃すことになる。経験豊かなマタドールのように、個人投資家はブルから目を離さず、その動きに応じて詳細を調節する必要があるが、それと同時に全体的な戦略と目標にも集中し続けなければならない。

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