グーグルの労働組合「育休・産休社員への退職勧奨は不当」と訴え。少なくとも6人が該当

記者会見

労働組合「JMITU Alphabetユニオン支部」の小林佐保委員長。小林さんはグーグルの社員。

撮影:横山耕太郎

1月に全世界で1万2000人を解雇すると発表し、日本でも一部の社員に対して、退職勧奨を進めているグーグル。

グーグル合同会社(グーグルの日本法人)の社員らで構成する労働組合の一つは6月6日、厚生労働省で記者会見を開き、人員削減の対象に育休・産休中の社員が含まれているのは、男女雇用機会均等法と育児・介護休業法の趣旨に反すると訴えた。

組合では過去に2回、グーグル合同会社と団体交渉を実施したが、3度目の団体交渉の開催要求については、グーグル側が応じなかった。

そこで組合では5月25日、「退職に同意した場合でも、本人が退職同意を撤回したい場合はこれを認めること」などをグーグルに指導するよう、東京労働局に対して組合員が要請した。

組合によるとグーグル合同会社では200人規模で人員削減を進めているとし、組合が把握している範囲では、産休・育休中だった社員6人も退職勧奨の対象になったという。6人のうち4人が退職を受け入れたとする。

グーグル合同会社には現在2つの労働組合があり、それぞれ別に活動している。

「人員削減」について説明求める

記者会見

記者会見で発言する小林委員長。

撮影:横山耕太郎

記者会見を開いたのは、JMITU(日本金属製造情報通信労働組合)に本部を置く「Alphabet(アルファベット)ユニオン支部」。

労働組合の組合数は非公開だが、組合員には退職勧奨の対象者などが加入しており、すでに退職を受け入れた元社員も含まれる。

同労働組合は2月に発足。これまでグーグル合同会社に対して「人員削減についての説明」や、「育休産休中の社員は退職勧奨の対象にしないこと」などを求めてきた。

3月からグーグル合同会社と団体交渉を実施していたが、グーグル側は「産休・育休中の人も退職勧奨の対象としたのは、他の人と平等にしたため」などと説明。5月に2回目の団体交渉を行ったが、3回目の団体交渉には応じなかった。

「グーグルは非常に有名な企業。グーグルに対して指導があれば世論にも影響がある。このようなことが2度と起きないようにしてほしいというのが私たちの願いです」(同ユニオン担当者)

グーグルは「多様性を認める会社だった」

ユニオンの活動

アルファベットユニオン支部の組合員らは、渋谷のオフィスの前にたち、グーグルが行動規範とする「Don't be evil」と掲げた。

提供:アルファベットユニオン支部

労働組合の委員長を勤める小林佐保さん(29)は、グーグル合同会社の社員でもある。

小林さんは大学院卒業後の2020年に新卒入社し、サービスのアクセシビリティに関する仕事を担当するが、自身は退職勧奨の対象ではなかった。

小林さんは労働組合の活動について、次のように話す。

「会社側の一方的な要求をただ受け入れてしまえば、長期的にみれば業界全体の労働環境の悪化につながると危機感を感じている。

組合を作って実際に苦しんでいる社員の声を聞いて、見て見ぬふりをすることはできませんでした」

また小林さんは「自分を育ててくれたグーグルへの愛着がある」と話す。

千葉大学で数学を専攻した小林さんは、学部時代と大学院時代に、グーグル合同会社の教育プログラムと学生インターンシップを経験した。

「学生時代には他の会社でもインターンをしましたが、女性エンジニアはめずらしく、他の企業では就活セクハラも経験しました。

その中でグーグルは社員のジェンダートレーニングもあり、多様性を認める働きやすい環境でした。そんな会社だからこそ、変わってほしいと思っています」

Business Insider Japanではグーグル合同会社に、東京労働局からの指導要請の有無について質問しているが、回答は得られていない(2023年6月7日午前9時現在)。

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