新プランをアピールするH.I.S. Mobile・代表取締役社長の猪腰英知氏とものまねタレントのコロッケさん。
撮影:荒幡温子
旅行大手エイチ・アイ・エスの格安SIM事業・H.I.S. Mobile(以下、HISモバイル)が6月6日、国内向け新プランと、旅行事業とシナジーが期待できる海外旅行向けSIMを発表した。
国内向けプランについては、月額2190円で毎回5分間の通話かけ放題が付いており、NTTドコモのオンライン専用プラン「ahamo(アハモ)」を強く意識している。
合わせて発表になった新しい海外向けSIMは120カ国以上で利用可能。今後予想される海外旅行ニーズの回復にあわせ、グループ内の旅行事業と連携を図る方針だ。
ahamo意識の価格設定
新プランの料金表。
出典:H.I.S. Mobile
HISモバイルは月額2178円(税込)で毎月20GB、毎月70分の無料通話が使える「格安弐拾プラン」を2021年2月から提供していた。
一方で、2023年7月上旬から提供予定の「自由自在スーパープラン」は、毎月20GB(5G対応)、毎回5分間の通話かけ放題が含まれて月額2190円(税込)となっている。既存プランに比べて、無料通話の提供方式を変え、新たに5Gに対応した形だ。
6月6日のメディア向け記者会見では、ahamoの同様プランと比較しながら、新料金プランを説明した。
出典:H.I.S. Mobile
HISモバイルが最もライバル視しているのが、NTTドコモのahamoだ。
ahamoは月額2970円(税込)で、5分の通話かけ放題・月間20GBのデータ通信が含まれる。従来の「格安弐拾プラン」では5分の通話かけ放題のオプション込みで月額2740円(税込)となってしまい、「(ahamoとの)差分があまりない」価格設定だったと、HISモバイルの猪腰英知社長は話す。
「大手通信キャリアがやっているオンラインサービス(編集注:ahamoなどのこと)を検討している方が、同じ仕様でいくら違うのかが、はっきりとわかりやすいようにしました」(猪腰氏)
結果としてHISモバイルは、月間のデータ容量や音声通話の無料分、5G対応をそろえた上で、ahamoと比べて780円安い「自由自在スーパープラン」の提供に踏み切った。
アンバサダーに、タレントのコロッケさんを起用した。
撮影:荒幡温子
HISモバイルは今後、現状では契約者全体の5%未満だという20GB以上の中容量プランの拡大を目指す。猪腰氏は、大手キャリアと同様に「タレント起用と広告プロモーションとの強化で、角度を変えて戦いたい」と意気込みを語った。
なお、今回の発表でHISモバイルの契約者の95%を占める「7GB以下の低容量プラン」でも、中容量プランと同様に5Gに対応する。また、5分間の通話かけ放題も月額+500円(税込)のオプションとして提供する。
夏休みに向けて「海外用eSIM」も発売開始
出典:H.I.S. Mobile
もう一つの目玉は、HISグループが強みである「旅行」に関連するサービスである、海外旅行向けSIM「Trip SIM」の発表だ。
Trip SIMは、物理的なSIMカードと、契約情報を対応スマホ自体に書き込む「eSIM」の2つのSIMタイプを選択可能。アメリカや韓国、台湾、タイなど国別に契約するほか、「ヨーロッパ 33カ国:15GB」など、周遊を前提としたプランも用意する(ローミングサービスを実際に展開するパートナー企業は非公表)。
特に6日の発表と同時に提供を開始したeSIMを選択した場合、細かい料金設定が用意されており、個人旅行のプランにも合わせやすい。
韓国・アメリカのeSIM料金。利用日数・データ容量を細かく選択可能だ。
出典:H.I.S. Mobile
筆者は一人旅が趣味だが、これまでSIMトラブルは何度も経験してきている。よくあるのが、旅行先で調達しようにも、深夜便や早朝便の到着でコンビニすら空いてない……というケースだ。
こういったトラブルを防ぐためには事前に調達しておくのが得策だろう。eSIMはiPhoneなどの対応端末が必要ではあるが、SIMの受け取る必要がない分、突発的な旅行にもピッタリだ。
H.I.S. Mobile・代表取締役社長の猪腰英知氏。
出典:H.I.S. Mobile
「Trip SIM」は現状、HISモバイルの公式サイトのみ契約を受け付けており、HISの店舗窓口・旅行予約サイトとの連携はしていない。
だが、2023年4月から開始した海外WiFiルーターレンタルの「HIS Wi-Fi」では、すでに店舗やウェブサイトを活用して顧客を獲得としており、「今後はMVNOの商材(Trip SIM)もクロスセリングしていけたらと考えている」(猪腰氏)としている。
また、HISモバイルと旅行事業との親和性について猪腰氏は「(現時点では)そこまでない」と回答しているものの、これから夏休みシーズンにかけて活発化が予想される旅行業界において、自社の立ち位置をこう語る。
「日本の海外旅行者や訪日観光客の通信サービスまわりでは、我々が通信事業者として立っていること自体が、一歩先んじたアイデアやサービスを提供することにつながると思っている」(猪腰氏)