米顧客関係管理(CRM)大手セールスフォース(Salesforce)のマーク・ベニオフ共同創業者兼会長兼最高経営責任者(CEO)。
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Insiderが独自ルートで確認した社内メールによれば、セールスフォース(Salesforce)のマーク・ベニオフ会長兼最高経営責任者(CEO)は、過去に同社からアマゾン(Amazon)やオラクル(Oracle)など競合企業に移籍した複数の幹部人材を引き戻そうとしている。
同社の企業カルチャーを知悉(ちしつ)し、なおかつ実績ある古参の幹部人材が復帰することになる。
また、ベニオフ氏の社内メールからは、関係者が深く懸念する後継者計画についても一定の情報が読み取れる。
新たに最高収益責任者(CRO)に就任するミゲル・ミラノ氏は、オラクルの欧州中東アフリカ(EMEA)担当シニアバイスプレジデントを経て2011年にセールスフォースにジョイン。北米以外を担当するプレジデントとして同社の「版図拡大」に9年近く貢献した後、ドイツの業務改善ソフトウェア大手セロニス(Celonis)に転じていた。
最高マーケティング責任者(CMO)に就任するアリエル・ケルマン氏も、7年弱をセールスフォースで過ごした。プロダクトマーケティング担当バイスプレジデントを最後に同社を離れ、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)で9年弱、オラクルで3年弱、マーケティング関連の経営幹部として活躍した。
さらに、上記2人の復帰決定と前後してチーフ・オブ・スタッフ(ベニオフCEOの参謀役、グローバルコミュニケーションチームを統括)に就任したケンダル・コリンズ氏も、セールスフォース在籍12年でエグゼクティブバイスプレジデントまで務めた人物。
クラウド型ID管理ソフトウェアのオクタ(Okta)、ネットワーク機器大手シスコシステムズ(Cisco Systems)傘下のアップダイナミクス(AppDynamics)でいずれも最高マーケティング責任者(CMO)を務め、およそ7年ぶりに古巣に復帰した。
そして、上記の優秀な「出戻り幹部人材」の復帰以上に重要な人事が、プレジデント兼最高執行責任者(COO)を務めるブライアン・ミルハム氏の統括組織拡大だ(昇格に相当)。
ベニオフ氏の社内メールによれば、現在統括するグローバル営業、カスタマーサクセス、プロフェッショナルサービス、アライアンス&チャネル組織に加え、マーケティング、エンプロイーサクセス、ビジネステクノロジーなどもミルハム氏の担当となる。
Insiderは5月5日付の記事で、ベニオフ氏への直接取材を通じ、創業から20年以上経営トップに君臨してきた同氏に意中の後継者がいることを報じた。
「私は後継者計画を疎(おろそ)かにしたことはありません。後継者は1人ではなく、数人を次の経営トップ候補として、それが誰なのかを取締役会には伝えています」(ベニオフ氏)
ベニオフ氏の後継者計画は、最有力の後継者候補と目されたブレット・テイラー共同CEOが就任からわずか1年ほどで辞任を発表するに至り、少なくとも外部からはその先行きが見えなくなっていた。
しかし、Insiderによる2度にわたるロングインタビューを経て、後継者候補が「過去にInsiderが記事で取り上げた主要経営幹部」(ベニオフ氏)の中にいることが分かった。
上記記事で、Insiderは次のように指摘している。
「該当するのは、最高プロダクト責任者(CPO)のデビッド・シューマイヤー氏、最高マーケティング責任者(CMO)のサラ・フランクリン氏、最高財務責任者(CFO)のエイミー・ウィーバー氏、さらに最近最高執行責任者(COO)に昇格したブライアン・ミルハム氏らだ」
さらに、後継者候補になり得る人物として、もう1人新たな名前も挙げた。
「最近、その優秀な経営幹部陣の顔ぶれに、見覚えのある顔が加わった。2014年までセールスフォースのCOOを務め、その後クラウドコミュニケーション大手トゥイリオ(Twilio)のCOO職を担い、2022年1月に退任したジョージ・フー氏その人だ」
それらの情報を踏まえて、ベニオフ氏が社内メールで示した経営幹部人事を読み解くと、最有力の後継者候補は現時点でミルハム氏と考えられる。
今回セールスフォースに復帰するミゲル・ミラノ最高収益責任者(CRO)、アリエル・ケルマン最高マーケティング責任者(CMO)もミルハム氏の指示下に入り、同氏は従業員総数の約7割を統括する立場となる。
なお、ケルマンCMOの就任に伴い、前任のサラ・フランクリン氏はアドバイザリーボード議長に就任する。
彼女もベニオフ氏が示唆した後継者候補の条件に該当する経営幹部で、オンライン技術習得プラットフォーム「トレイルヘッド(Trailhead)」の立ち上げをけん引するなど、セールスフォースで15年以上活躍を続けてきた人物だ。
(※本記事の人事情報や経歴は、リンクトイン(LinkedIn)のプロフィールおよびセールスフォース公式ウェブサイトの記載情報を参照して整理した)