Amazon 千葉みなとフルフィルメントセンター。2023年8月より稼働を開始する。
撮影:小林優多郎
アマゾンが同社の物流拠点「Amazon 千葉みなとフルフィルメントセンター(以下、千葉みなとFC)」をオープンする。8月の稼働開始に先駆け、6月7日に内部の様子がメディア向けに公開された。
千葉みなとFCは、12万平方メートルの延べ床面積を持ち、アマゾンが自社倉庫内で活用するロボット技術「Amazon Robotics」を導入した拠点としては国内最大規模となる。
予定入荷量、出荷量ともに1日あたり約60万個の商品を扱う予定で、アマゾンとしては国内でも購買需要の高い一都三県での販売機会が増やす狙いがある。
アマゾンの倉庫というと「過酷な労働環境」のイメージも未だ根強い。効率的な物流システムだけではなく、従業員が安全に働ける工夫はどのようなものなのか、確認してみよう。
Amazon Roboticsが開発している自走型ロボット・ドライブの現行機種「Hドライブ」。中央の黒い部分が昇降することで、商品棚「ポッド」を持ち上げて移動する。
アマゾンは2012年にKiva Systemsの買収を発表している。自走型ロボットはKiva Systems時代から開発を進めているものだ。
撮影:小林優多郎
千葉みなとFCに配置されるドライブ総数は約2600台。
撮影:小林優多郎
ドライブは集中管理されており、充電が必要になった際も自動で充電ベースまで移動する。
撮影:小林優多郎
ロボットがスムーズに動く様子が印象的だった。
「Amazon千葉みなとFC」の様子。
撮影:小林優多郎
千葉みなとFCは約3万台のポッドを有する。ポッドを運ぶドライブは床にある二次元コードの上を移動する。
撮影:小林優多郎
ポッドの高さは3m弱ほど(公称値は非公表)。バランスを崩して転倒することのないよう、重い荷物は下に入れるルールだ。
撮影:小林優多郎
建物の柱は、ポッドより一回り小さいサイズに設計されており、省スペース化を図っている。
撮影:小林優多郎
ドライブ導入前は従業員が直接棚から商品を出し入れする必要があったが、千葉みなとFCでは「ステーション」と呼ばれるベースで、商品が従業員の元に“やってくる”。
撮影:小林優多郎
ステーションでは、RGBカメラで従業員の手を検知し、商品棚の二次元コードと組み合わせて、ポッドのどこに商品があるかを管理する。
撮影:小林優多郎
ステーションの床には、立ち仕事でも疲れにくい「疲労軽減マット」を敷かれている。
撮影:小林優多郎
Roboticsの担当者は「人がエラーを起こす可能性のあるものも、技術によって、エラー対応のコストを減らせる」と、ロボットと人が共存する働き方を示す。
撮影:小林優多郎
トラックバースは、作業時以外はビニールの扉などで出入り口を覆うなど、館内の空調を考えた工夫が施されている。
撮影:小林優多郎
十数年前、冬はカイロと防寒着で作業しなければ「働くのには辛い環境」だったと担当者は話す。
アマゾンジャパンでオペレーション技術統括本部長を務める渡辺宏聡氏は自身のアマゾンでのキャリアを振り返り「ステーションに空調を入れようとすると、お金はかかるが、オペレーションの安全性は高まる。イライラするとルールを守らないことも起こりうるので、そういったストレスをなくしていくことは大事だ」と話した。
撮影:小林優多郎
工事中の施設内に点在する突起物には、ピンクの目印をつけることで視認性を高め、注意を促していた。
撮影:小林優多郎
これまでのFC建設などで貯められた安全管理のノウハウは、協力している複数の建設業者にも共有しているという。
撮影:小林優多郎
千葉みなとFCは建設途中から、カフェテリアと売店をオープンした。従業員だけではなく建設業者のスタッフにも働きやすい環境づくりを意識したという。
撮影:小林優多郎
千葉みなとFCを「実証実験の場として稼働していきたい」
左から、アマゾン千葉みなとFC サイトリーダー/ゼネラルマネージャ・片桐秀行氏、JP FC オペレーション事業部 統括本部長・原祐介氏、オペレーション技術統括本部長・渡辺宏聡氏。
撮影:小林優多郎
千葉みなとFC独自の施策として、アマゾンジャパン・千葉みなとFCサイトリーダー/ゼネラルマネージャーの片桐秀行氏は、「地域の子どもたちを対象にSTEM教育やFC見学ツアーを実施し、地域に根付いたフルフィルメントセンター(FC)を目指していきたい」と述べた。
今後アマゾンとしては、千葉みなとFCを、アメリカ・ボストンの研究拠点と擦り合わせながら、国内での物流効率化の実証拠点としても機能させていきたい考えもあるという。
「このセンターではみなさんの見えないところでコンペアの改造や、新しい機械を入れられるようなレイアウトにしています。
今開発中のものをテストしていき、日本でしかできないような技術を組み合わせていく拠点として、(千葉みなとFCを)活用していきたいと思っています」(渡辺氏)