『Retire Before Mom and Dad(両親より早く引退する)』の著者ロブ・バーガー氏。
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- 年間支出の25倍に相当する額を貯金したロブ・バーガー氏は、49歳でFIREを達成した。この「25」を、バーガー氏は経済的自立を勝ち取る魔法の数字と呼ぶ。
- バーガー氏は自身の著書で、 FIREできるかどうかは3つの数字で決まると主張している。それは「貯金率」「投資利益率」「予想される預金の引き出し率」の3つだ。
- この数字は、レバーの働きもするという。つまり、これらを調節すれば、経済的自由を勝ち取るまでの期間が長くなったり短くなったりするのだ。
あなたがFIREできるかどうかを決めるのは、たった3つの数字でしかない。そして、「給料の額」はその数字には含まれない。
これは、『Forbes』の副編集長で、新刊書『Retire Before Mom and Dad(両親より早く引退する)』の著者でもあるロブ・バーガー氏の主張である。年間支出の25年分を貯金するのにどれくらい期間がかかるかに、収入が与える影響は極めて小さいとバーガー氏は言う。そして、この「25」という数字を経済的自立を勝ち取るための目標とし、著書の中で「レベル7」と呼んだ。
バーガー氏は、パーソナルファイナンス・サイト「DoughRoller.net」を設立し、49歳で本職だった弁護士の仕事を引退している。
収入が高くても、支出も多ければ、毎年収入のうちわずかな割合しか貯金できないだけでなく、引退するには人より多くの貯金が必要になるとバーガー氏は言う。必要な貯金額は、単に年間支出の倍数になるからだ。
「いくら稼ぐかで結果は変わらない。レベル7の経済的自由を勝ち取るのにどれだけ時間がかかるかは、収入に占める貯金の割合、投資利益率、預金の引き出し率によって決まる」とバーガー氏は書いている。
「年収5万ドル(約700万円)の人と年収50万ドル(約7000万円)の人がいるとしよう。どちらも収入の10%を貯金に回し、利率も同じだとすると、レベル7に到達するのにかかる年数は2人とも同じだ」とバーガー氏は言う。
バーガー氏は、年収10万ドル(約1400万円)以上の人が貯金をせずに収入を使い果たしているとすれば、その人に必要な貯金額(年間支出の倍数)ははるかに大きくなると主張した。
1. 収入に占める貯金率
バーガー氏の説明によると、支出と貯金は反比例する。
「貯金率が上がると、経済的自由に到達するまでの年数に2つの重要な点で影響を与える」とバーガー氏は語った。「まず、貯金する額が増えるため、投資が速いペースで増えていく。そして2つ目は、支出が減ること。これは同じくらい重要な影響だ。支出が減ると、経済的自由の各レベルに到達するのに必要な額が下がるからである」
貯金率は、どこに貯金するかによっても違ってくると、バーガー氏は言う。たとえば、Roth口座(日本のNISAに近いもの)や課税対象の投資口座に貯金をする場合は、すでに所得税を徴収された後のお金を貯金していることになる。一方、私的年金口座(traditional 401(k)やIRA[日本の場合、企業DCやiDeCoに近いもの])に拠出をする場合は、所得税が控除されたお金を貯金していることになる。
2. 投資における利益率
これは唯一、私たちがほとんどコントロールできない問題だ。歴史的に見て、株式市場は平均で年利9.3%を実現してきたとバーガー氏は言う。インフレを考慮に入れて、バーガー氏は、年利6.3%に下げて計算した。
だが、バーガー氏は、将来の市場がどうなるかはわからないと言う。
「結果は利益率に大きく左右される」とバーガー氏は書いている。「たとえば、収入の10%を貯金している人は、実質利益率を5%とすると、レベル7の経済的自由に到達するのに50年かかる。実質利益率を6.3%に上げると、レベル7に到達するのにかかる時間は、43年に短縮される。利率が1%違うと、レベル7に達するのにかかる時間に5年以上の差が出るのだ」
3. 予想される預金の引き出し率
レベル7の金額、つまり年間支出25年分の貯金額を達成するために、バーガー氏は、預金の引き出し率を4%と仮定した。これは、FIRE計画で一般に用いられるガイドラインである。
「お金を使い果たさないようにするために、貯金から毎年いくら使えるかを簡単に決めるためのルールだ」とバーガー氏は書いている。「4%ルールという名前のとおり、1年目は投資に回す金額の4%を支出することができる。その後は毎年、インフレ率に応じて前年の支出額を調整する」
自分にとってのレベル7の達成額を知るには、年間支出に25を掛けるか(例:5万ドル × 25 = 125万ドル)、年間支出を4%(0.04)で割ればいい(例:5万ドル ÷ 0.04 = 125万ドル)。
年間の支出額を変えないとしても、預金の引き出し率を下げたり上げたりすることはできるため、それによって必要な貯金額が変わってくるとバーガー氏は言う。収入から貯金に回す割合が今後も一定のままなら、この調整によって、目標の貯金額を達成するのにかかる時間が長くなったり短くなったりするわけだ。
「4%という数字は、ほとんどの人にとって、特に経済的自由を目標とする人にとっては妥当な仮定だが、極端なケースもある」とバーガーは言う。「たとえば、30歳で引退して、残りの人生はまったく稼がないのを目標にするのなら、3%か3.5%と仮定したほうがいいだろう。60年以上もの間、生活するためのお金が必要になるのだから」