ディオン・マクニーリー氏は、ワシントン州の7つの物件で16戸を所有している。
Courtesy of Dion McNeeley
人生の大半が給料ぎりぎりの生活だったディオン・マクニーリー氏(Dion McNeeley)は、賢明な不動産投資によって50代前半でリタイアすることができた。
ワシントン州タコマで16戸の賃貸住宅を所有する52歳の同氏は2022年に本業を辞めたが、その前に、予想された不況をに自分の投資で十分に乗り切れるかどうかを確認した。
「退職の準備をしていた時、私は16戸の賃貸住宅で月に1万7000ドル(約238万円、1ドル=140円換算)強の利益を出していました」と彼はInsiderに語った。
「生活費は月に4000ドル(約56万円)ほどなので、1万7000ドルあれば十分でした。しかし私が恐れていたのは、かつて賃貸住宅を所有していて、私と同じやり方で投資していたのに、何らかの理由で物件を売らざるを得なくなった人たちがいるということです」
もし賃貸物件を売却せざるを得なくなったら、「また仕事に戻ることになります。投資の目的は働かなくてもよい状態でいるということなのに」と彼は言う。
そのような事態を避けるため、マクニーリー氏は賃貸住宅を所有していた経験のある人を探し回った。経済的自立を目指すコミュニティ、Choose FIを通じて元不動産投資家を探し、インタビューすることにしたのだ。
「1年かけて50人くらいに話を聞きました。かつて賃貸住宅を所有していた人たちは皆、同じ過ちを犯していました。 良い入居者を失いたくないがために、家賃を上げなかったのです。このたった1つの誤ちによって、彼らは賃貸住宅を売却することになりました」
良い入居者を維持するためには家賃を上げるべきでないというのは誤解で、それはスマートで持続可能な長期的ビジネスモデルではないとマクニーリー氏は説明する。
「時間が経つにつれ、固定資産税や保険、雑役や業者の費用、人件費などのコストが上がっていきます」とマクニーリー氏は言い、2022年にコストが大きく跳ね上がったことを指摘した。
「家賃を上げずにいた人は、貯蓄口座にお金を入れておいた方が、おそらく今頃良いリターンが得られていたでしょう」
大家が失敗して賃貸物件を手放す主な理由が、家賃を上げないことだと分かり、マクニーリー氏は安心した。なぜなら、彼はすでに入居者を維持しながら家賃を上げるための戦略を持っていたからだ。
「大家たちが犯した間違いには解決策があると分かったので、仕事を辞める決心がつきました」
入居者が自ら家賃を決めるように仕向ける「バインダー戦略」
マクニーリー氏の「バインダー戦略」とは、テナントと話し合いの場を設け、その地域の平均的な家賃を説明し、最終的に適正な価格を設定してもらうというものだ。
同氏はこの戦略をいくつかの異なるシナリオで使用している。新しい物件を取得する際には、彼は引き継いだ入居者とのミーティングを設定し、3穴バインダーを持参する。バインダーの最初のページには、彼らが借りている物件の写真と、マクニーリー氏がその物件に支払った金額が書かれている。
「ほとんどの入居者は、購入を考えていない限り、住宅価格になんて関心がありません。私が直近購入した物件は、2世帯向けの集合住宅で40万ドル(約5600万円)でした。その前は、3世帯向けで52万5000ドル(約7350万円)。これは賃貸人にとっては大きな数字なので、その価格を示して『これが私の税金のベースになっています。保険もこれに基づいています』と説明します」
2ページ目には、同氏の物件と、同じ数のベッドルームおよびバスルームを持つこの地域のすべての賃貸物件を示す地図が掲載されている。以降のページでは、そのような近場の競合賃貸物件それぞれの賃貸金額が示されている。
マクニーリー氏は、バインダーを見ながら入居者に市場価格を説明し、現在の家賃が市場平均よりどれだけ低い金額なのかを説明する。
彼は自分が購入した2世帯用住宅の1つを例に挙げた。2つのユニットの入居者は約1100ドル(約15万4000円)を支払っていたが、地域の平均家賃は1600ドル(約22万4000円)に近かったという。
「もし私がそのテナントのところに行って『1600ドルに上げます』と言ったら、私は嫌な奴になって、彼らは出て行ってしまうでしょう」
そうする代わりに、マクニーリー氏はバインダーを持って入居者に会い、情報を提示し、適正な価格をどう考えるか質問した。
「私は入居者に『適正な家賃はいくらだと思いますか?』と尋ねます。彼らは自分の予算は分かっているし、さらに知るべきことを知ったわけです」
入居者はともに、1460ドル(約20万4400円)と答えた。
「入居者が300ドル以上の値上げを許容したのは、まだエリア平均を下回っているからです。彼らは今もまだ住んでいます」とマクニーリー氏は言う。Win-Winの金額なので、自分は健全なビジネスを営むことができ、かつ「テナントも喜んでいる」と彼は言った。
10年間不動産投資を行ってきて、入居者が入れ替わったのは4戸だけで、これはテナントとの良好な関係があるからこそだと彼は言う。
マクニーリー氏は、新しい物件を取得する際にはバインダー戦略を使い、隔年で5%の家賃の値上げを行う。しかし、コロナ禍のように家賃が高騰するような未曾有の出来事があれば、同氏は再びバインダーを持ち出すだろう。
「2020年、パンデミックが起きて立ち退き猶予措置がとられたときは、家賃の凍結があったので、上げることはできませんでした 」と同氏は説明する。しかし、家賃が停滞する一方で、物件を所有するためのコストはつり上がっていった。
「固定資産税は約30%上がり、住宅所有者保険は2倍の値段になり、人手不足で業者を雇う費用も上がりました」
ワシントン州の立ち退き猶予措置が2021年末に終わると、圧迫感を感じていた大家たちは再び家賃の値上げを始めることができた(ワシントン州には家賃規制はない)。
マクニーリー氏の物件のある地域では、家賃が30〜40%上がったという。
同氏は、自分の物件の家賃を同じだけ上げるのではなく、入居者と面談し、新しい家賃相場とその理由を説明し、適正な新しい家賃はいくらだと思うかと尋ねたという。
「入居者が20〜28%の値上げを申し出てくれたことで、コストの増加に対応できるくらいには収入が増えました。他のオーナーほど家賃を上げる必要がなかったため、テナントは満足しています」
この戦略をとれば、入居者は決してエリア平均と同じ額を支払うことはないと彼は指摘して、こう述べた。
「入居者から『平均家賃が1600ドルなら、1600ドルに上げるべきだ』と言われたことはありません。しかし、『現状維持か、下げるのが公平だと思う』と言うテナントもいないのです」
長い目で見れば、入居者との良好な関係を維持し、入れ替わりを避けることで彼は経費を節約していると言えるだろう。
「入居者の入れ替わりには対処せざるを得ませんが、大家にとっては手痛い事態です」とマクニーリー氏は言う。
「家賃をエリア平均まで上げて大量の入れ替わりに対応することを考えれば、ここ数年は何万ドルも多く稼いでいるはずです」