2023年6月7日、ウクライナのへルソンにあるカホフカ・ダムの決壊により浸水した街で、住民を避難させる救援隊。
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- カホフカ・ダムの決壊による洪水が、ロシアの防衛態勢に害を及ぼしていると専門家は指摘する。
- 戦争研究所によると、洪水はロシアの要塞と地雷原を一掃したという。
- ウクライナ側は、ロシアがウクライナに損害を与えるためにダムを爆破したと主張しているが、そうだとすればロシア側に意図しない結果をもたらしたようだ。
ロシアが爆破したとウクライナが非難するダムからの壊滅的な洪水によって、ロシアの防御陣地も一掃されたと、専門家が最新報告で述べている。
アメリカのワシントンDCにある戦争研究所(ISW)は、2023年6月7日に最新報告を発表し、「ロシア軍がウクライナ軍の攻撃を防御するために使おうとしていた第一線の野戦要塞の多くが、洪水によって破壊された」と述べている。
洪水が流れ出たドニプロ川はロシアとウクライナ、それぞれの支配地域の境界線にもなっている。
ロシアはドニプロ川の東岸を占領し、ウクライナは2022年にヘルソンを含む西岸を奪還していた。ウクライナによると、ダムの決壊による洪水のほとんどは、ロシアが支配する側で起きているという。
ISWによると「急激な洪水により、ロシアの人員と軍備は重要地点から撤退を余儀なくされたようだ」と述べ、オレシキーとホラ・プリスタンという具体的な地名を挙げている。これらの集落はドニプロ川の東岸に位置し、以前からロシア軍の砲撃を受けていた。
ウクライナでダムが決壊し、近隣の都市で大洪水が発生した。
Reuters
また、6月7日に撮影された近赤外線画像からは、洪水によってこれらの集落にある「ロシアが用意した防御陣地が大きく破壊」されていることが分かるという。
さらに「海岸沿いにロシアが設置した地雷原が破壊され、地雷が洪水の中で爆発している映像もある」とISWは付け加えた。
この洪水によってロシアが失った軍備がどの程度かは不明だという。
ヘルソンの上流にあるカホフカ・ダムは6月6日に決壊し、大量の水が放出された。
ウクライナは、ダムの決壊についてロシアを非難している。西側諸国もロシアを非難しているが、ロシアが意図的にダムを破壊したとは明言してはいない。
NBCニュースは、ロシアに非があるとする情報をアメリカ政府は持っていると、3人の政府関係者の話を引用して報じた。
一方ロシアは、ウクライナが砲撃によってダムを破壊したと述べている。それに対しウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー(Volodymyr Zelenskyy)大統領は、ダムは砲撃だけで破壊するには強固すぎると反論している。
2023年6月6日、ウクライナのロシア支配地域にあるカホフカ・ダムが決壊し、水が流れ出ている(ウクライナ大統領府が公開した動画をキャプチャーした画像)。ウクライナは同日、ロシア軍がダムを爆破したため大洪水の危険があると非難した。ロシア側は、ウクライナ軍の攻撃によってダムが破損したと反論した。
Ukrainian Presidential Office via AP
ウクライナ当局は、4万人以上が洪水の影響を受けていると発表し、生態系も大きな被害を受けると警告した。
ゼレンスキー大統領によると、ウクライナの救助隊はロシア支配地域で住民を救助しようとした際に銃撃を受けたという。
「ヘルソン地域の占領地から住民を救い出すのは非常に難しい。我々の部隊が彼らを助け出そうとすると、遠くから占領軍に銃撃される」と、大統領はポリティコに語っている。
洪水による死者数について報告され始めているが、救助隊による捜索が進み、水が引くにつれて、犠牲者は増えると予想される。