スティーブ・チェン氏は33歳で経済的自立を確立し、早期退職した。
Steve Chen
- スティーブ・チェン氏は教師という立場から経済的自立を達成し、10万ドル(1億4000万円)の資産を形成した。
- 早期退職に関する書物を読み漁り、得た知識とスキルをフルに活用した。
- 投資することを学び、副業から収入を増やし、今では毎月2万8000ドル(約390万円)稼いでいる。
スティーブ・チェン氏は初めて給与明細を見た瞬間から、この仕事に付いていても経済的に成功しないことを悟った。
2014年にロサンゼルスの公立中学校の数学教師として働き始めたチェン氏だが、給与だけでは十分ではなかった。当時の給料は税引前で毎月5000ドル(約70万円)を少し超える水準だったが、税金や社会保険を差し引くと、手元に残るのは辛うじて自分が望むような人生を楽しめるだけのお金だった。
「私はカリフォルニアに住んでいたので、税金、食費、住居費などあらゆるものがすごく高かった。諸々計算してみると、毎日ラーメンとかで済ますような超倹約生活を送り毎月500ドル(約7万円)とか1000ドル(約14万円)とか貯蓄したとしても、快適なリタイア後の生活を送れる見込みはないことが判明した。その時に、自分の人生を変える決断を下した」
チェン氏はインターネットを検索して、他の人がどうやって早期退職しているのか調べ始めた。6年後の2020年2月、彼は投資で生活していけるだけの十分な資産を貯めて、33歳の時に仕事を辞めた。現在では4つの収入源から毎月2万8000ドル(約380万円)を稼ぎ、好きなだけ働いても働かなくても良い生活を送っている。
教師という職業柄、チェン氏は自身のウェブサイト、「コール・トゥ・リープ(Call to Leap)」を通じて、経済的自立への道を歩む方法を他の人に教えている。また、TikTokでは95万人のフォロワーを集め、プラットフォームを活用して短いビデオで簡単に金融に関する概念を説明している。
チェン氏はInsiderのインタビューで、どのようにして経済的自立を達成したのか、助言や秘訣、その間に実現した事を紹介した。それらを順番に紹介しよう。
1. 証券口座を開設し、投資を始めた
チェン氏は常々、株式市場は金持ちだけが投資をする所として考えていた。だが、早期退職の仕方について書かれた書籍を読み始めると、こうした夢を達成した誰もが、長期的に毎月少しずつ投資をすることで株式市場に参加していることに気が付いた。そこで、自分も初めて証券口座を開設した。
初めは自分がやっていることも実はよくわかっていなかった。ただ日々知っている会社の株を買っていただけなんだ、とチェン氏は言う。
最終的に上場投資信託(ETF)に行きつき、ETFに投資をすれば自分がすでに投資をしている会社やそれよりも多くの株式に投資できることに気が付いた。そこでS&P500種株価指数に連動するバンガード500 (VOO)などのETFに投資し始めた。初めは、ポートフォリオが10%の安定成長を遂げたが、その後の試行錯誤では損失も被った。チェン氏は投資を始める前にたくさん本を読み、投資の正しい心得を身に着けることを勧める。
2. 予算を削減し、貯蓄を増やした
チェン氏は徐々にポートフォリオが大きくなっていき、投資が効果を発揮していることを実感した。そこで、もっと投資に回せるようさらに倹約するようにした。まず、毎月の支出を削減する方法を探した。最も削減できた支出項目は外食だ。毎週日曜日に食事を作り置きし始め、昼食はすべてお弁当にした。これだけで毎月120ドル(約1万7000円)ほど浮いた。
余暇についても、お金を使ったり物を買ったりしない別の過ごし方を模索した。週末ごとに外食に行く代わりに、彼は友達とハイキングやジムに行き、自宅でチェスなどのボードゲームをして過ごし始めた。これにより、毎月400ドル(約5万6000円)くらいは節約できたと言う。
また、最大限キャッシュバックの機会を享受できるように、利用するクレジットカードを戦略的に変えた。各カードのキャンペーン期間をカレンダーに記してどのカードのキャッシュバック率が高いかを確認し、何かを買う時は最も金が節約できるカードを使った。常にチェース・フリーダム、バンクオブ・アメリカ・キャッシュ・リワード、チェース・フリーダム・アンリミテッド、チェース・サファイア・リザーブの4枚を代わる代わる利用した。この戦略によって、毎月50~100ドル(約7000~1万4000円)ほどのキャッシュバックを受けた。
彼は「バーゲンハンター」でもあった。高いデザイナーブランドの服や法外な家財道具を買うのではなく、在庫一掃セールで買い物することが多かった。衣服はリサイクルショップを頻繁に利用した。リサイクルショップは懐に優しいだけでなく、環境にも良い物だった。日々の日常品については、絶対に必要で賞味期限がないものは何でも大量に買い、毎週の買い物1回当たり10~20ドル(約1400〜2800円)ほど節約した。
3. 副業を始めて、収入を増やした
節約できるところまで節約したら、今後は収入を増やす方に目を向けた。彼は教師だったので、自分のスキルを活用して勤務時間外に家庭教師をした。毎週数時間ほど勉強を教え始めたところ、月に1000~2000ドル(14~28万円)の収入が増えた。口コミで生徒が増え始めると、副業による収入は徐々に増加した。副業からの収入は直接証券口座に振り込んでもらった。
家庭教師での収入が増え始めるにつれて起業家精神が湧いてきたチェン氏は、個別指導事業を拡大し始めた。現在、チェン氏は引き続き1日に数時間家庭教師をしており、この仕事から毎月8000ドル(約110万円)の収入を得ている。
4. 2つ目の副業を始め、自分が学んだことを他の人に教えた
チェン氏は自分が学んだことを他の人に教えられるフォーマットにして、さらに収入を増やす方法を見いだした。自身のウェブサイト、TikTok、YouTubeおよびスポンサー案件を通じて得られる収入は毎月約35%に上る。
「投資を始めたときは、たった独りぼっちだった。誰に相談したらいいかもわからなかった。両親は株式市場のことなどまったく知らなかったし、同僚に株式について質問しようとしたけど何も知らなかった。どこで株式についての知識をつけるかもわからなかった」と、チェン氏は言う。「だから、同じような考えを持つ人たちが安心して話せるコミュニティを作りたかったんだ。それが今、私の運営するウェブサイト上にある」
各プラットフォームにフォロワーが集まるということは、TikTokのようなソーシャルメディア企業が閲覧のためにチェン氏にお金を支払うということであり、ブランドはチェン氏が作るビデオに資金を提供するということだ。チェン氏は金融に関するコンセプトを短い示唆に富むビデオにまとめて、こうしたスポンサー案件からビデオ1本あたり1000~1500ドル(約14~21万円)ほどの収入を得ている。
5. ポートフォリオに不動産を追加した
チェン氏は副業で貯めたお金を使って戸建て住宅を2つ購入した。追加収入を得るためにこれら不動産を賃貸に出しており、毎月の収入の足しにしている。
6. 資産形成に踏み出す前に生活防衛資金を貯蓄した
経済的自立への道のりは平たんなものではなかったが、常に生活防衛資金を維持した。いまでも生活防衛資金として生活費の約6カ月分を蓄えている。
現在の収入は前よりも増えているが、資産形成を継続しながら収入の範囲内で生活をするという原則を今も変わらず遵守している。現在チェン氏が取り組んでいるのは、自分の英知を人に伝えながら、他の人も潜在能力を発揮できるよう資産に関する前向きな習慣を広げることである。
「人生において選択肢が増えたような気がするので、肩の荷がどっさり下りた気分だ。今は、一定の時間、決められた場所にいなければならない仕事に縛られていないのだから、自分がしたいことは何でもできるような気がする」と、チェン氏は言う。「私は現在、自分の時間をコントロールしている。自分の事業もある。創造的に活動できるようになり、自由を感じている。これこそ経済的自立なのだ」