日本で買い物大好きだった私が、ベルギーでミニマリストになった8つの理由

ベルギー・ブリュッセルの世界遺産グラン=プラス

ベルギー・ブリュッセルの世界遺産グラン=プラス。

撮影:雨宮百子

ベルギーに移住して以降、私は物を買わなくなった。円安の影響は一部を担っているが、それだけが理由ではない。

ベルギーには洗練されたデザインの洋服や小物など、魅力的な商品が街中に溢れている。それにもかかわらず、知らず知らずのうちに、私は物を買わなくなっていた。

『フランス人は服を10着しか持たない』という内容の本がかつてベストセラーになったことを思い出す。ヨーロッパには、人が物を買わなくなる力が秘められているのだろうか。

今回は、現地生活で気がついた「買い物をしなくなった理由」を紹介したい。

1. とにかく家のなかに物を置かない

家の写真

筆者の住む家。現在はもう少し家具などがあるが、とてもシンプルだ。

撮影:雨宮百子

ベルギー人の家を訪ねると物の少なさに驚かされる。床に物を置くということは基本的になく、必要以上のものは購入しないというスタンスが徹底されている。

それは来客のために片付けたのではなく、日常的にそのスタイルが保たれている。なぜこんなに物が少ないのかを聞くと「物がない生活を気に入っているから。不自由なことが何もないでしょ」といわれた。彼らにとってはこれが「普通」なのだ。

東京にいた頃の私はマキシマリストで、部屋は物であふれていた。何度も物を捨てようと試みたが、成功したことは少なかった。

何かが必要だと思えば、アマゾンを開いて購入ボタンを押すだけで玄関先に荷物が届く。食事はUber Eatsで配達してもらう。電車に乗れば魅力的な広告にあふれており、スマートフォンを開けばSNSやLINEから流れてくる記事やニュースの広告から逃れられない。素敵な商品が並び、何かを必要と思ったらクリック一つで簡単に購入できていた。

確かに私はそのような生活を楽しんでいた。しかし、同時に物を捨てたり整理したりすることにストレスも感じていた。「飽きたらメルカリで売ればいいや」と思っていたから、購入に対するハードルも次第に下がっていたのだろう。

結果的に「売る」ために費やしていた時間をいま考えると恐ろしくなる。

2. アマゾンが遅い

Brussel Pride2023で撮影

2023年5月、Brussel Pride2023で撮影。街中がレインボー一色になった。

撮影:雨宮百子

ベルギーは流通網が東京ほどには整っていない。でもその「ちょっとした不便さ」がいい。

アマゾンがサービスを開始したのはここ数カ月のこと。それまでは、アマゾンが展開されているフランス、ドイツ、オランダなど、ベルギーの近隣国のページを比較し、最も安い場所から購入していた。

EU域内であり、陸路でつながっているので、日本で他県から通販で物を購入するような感覚だった。当日には到着しないものの、数日で到着する。アマゾンは便利だが、朝に頼んで夕方に届くようなことは少ない。

またアマゾンで買い物をすると、ベルギーの場合、家にいないときは近所の人に荷物が預けられるのが普通だ。私にとっては不在配達の紙を頼りに、仏語で他人の家をノックするのは心理的負担も大きく、面倒になってしまった。

加えて「必要なものを買いに行く時間がないほど忙しいのでネット通販」という概念が、ベルギーには存在しないように思う。

「今日は旅行にいく息子を車で送るので、午後から出社します」などの会話が日常的にある。家族ファーストで、18時頃には皆でそろって食事を食べる。ネット通販に頼らなくとも普通に生活できるのだ。

何かを「欲しい」と思っても、手に入れるまでのハードルがあればあるほど、買う気力はうすれていく。でも、それでいいとも思う。

マーケティング的に考えると最悪かもしれないが、そこで不要になるくらいのものは、元からなくてもよかったはずだ。

3. 電車に広告がない

駅の写真

ブリュッセルの中央駅。駅の広告も最小限で、電車の車内もシンプルだ。

撮影:雨宮百子

電車内に広告は存在しないし、街にも電光掲示板がない。消費者を過度に刺激し、「買わせよう」とする魔力から守られている気すらしてくる。

「広告といえばテレビやスマホくらいかな。もちろん、電光掲示板もあるけど、数は少ないよ」とベルギー人は語る。

4. 「本当に必要なの?」というスタンス

オランダ語圏のルーバンで撮影

オランダ語圏のルーバンで撮影。目を引く電光掲示板などはない。

撮影:雨宮百子

ベルギー人は物を買わないと言っても、当然、食料品や必需品は購入している。でも服や雑貨など、いわゆる「ショッピングを楽しむ」という文化がないようにすら感じる。

食料品や医薬品などの必需品は6%の軽減税率であるものの、標準税率は21%という税率の高さだからだろうか。

ベルギー人の友人と街中を歩いていて「これ、買おうかな」と悩んでいると、「それ、本当に必要なの?」と聞かれることがよくある。日本人だったら「いいね、買っちゃいなよ!私も買おうかな」となる場面だろうが、冷静に考えてみると「いや、やっぱいいや」となることも多い。

ベルギーにくるとき、スーツケース2つ分しか荷物を持ってくることができず、超過料金を払ってまで詰め込んだ。

当時は「こんなんじゃ全然足りない」と思ったものの、意外にもベルギー生活では全く困らないことに驚いた。寒さに耐えきれずに購入した手袋やブーツなどを除けば、基本的にこちらでは何も買っていない。

現在ベルギーに住んでいる私の家は東京に比べて広くなった。しかし、ものをこれ以上増やしたいという思いはない。自分が生きていくのに必要な物の量がわかった。むしろ、移動に物は邪魔だ。帰国するたびに、日本の倉庫に預け入れた荷物を減らしている。

5. 「エミリー」は幻想。ブランド品は持たない

大学の写真

学校のある街、ルーヴァン・ラ・ナーヴにて。

撮影:雨宮百子

モデルハウスのように洗練された物がないおしゃれな家に住み、物を買わない彼らをみていて気付いたことがある。ブランド品を持っている人の少なさだ。

エミリー、パリへ行く』というネットフリックスのドラマが話題になったが、彼女のように全身をブランド物にかためた女性がベルギーの街を歩く姿はほとんど見たことがない。

学生は、ジーンズやニットにリュック、いたってシンプルな服装をしている。過度なファッションに身を包んだ学生がいたとしたら、外国人留学生だと私は思うことにしている。

私の友人と同じクラスの中東出身の女性は、インスタグラムにプライベートジェットでの旅行写真や、シャネルやプラダといったブランドアイテムを授業に持ってきていた。そのスタイルは周囲とは一線を画しており、どこか奇妙な存在として「噂」になっていた。

自分の早稲田での学生時代を振り返ると、ルイ・ヴィトンやディオールなど「ブランドもののカバン」をもった学生は数多くいた。ファッション誌などでもそうしたカバンが「女子大生コーデ」として紹介されていたが、今思えば欧州からの留学生からしたら一般的ではなかったのだろう。

大学内だけではない。首都ブリュッセルへは何度も出かけているが、やはりブランドに身を包んだ人に出会うことは少なかった。

そもそも、ベルギーでは着たいものを着る。さすがに寝巻きで外を歩いている人はいないが、「ある程度こぎれいな服装」をしていれば、それがどこの物か誰も気にしない。話題にすらならない。そしてなにより、パリも含め窃盗などの犯罪のターゲットになりたくなければ、避けるのが無難という面もあるだろう。

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