世界中が注目するジェネレーティブ(生成)AI市場の成長で株価急騰、5月末に「時価総額1兆ドル企業」の仲間入りを果たしたエヌビディア(Nvidia)のジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)。AIブームは今度こそ「本物」なのか。
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人工知能(AI)ブームはすでに過熱気味のようにも見えるが、上場投資信託(ETF)専門資産運用会社グローバルXのリサーチアナリスト、テジャス・デサイ氏によれば、AIの進化と発展はまだ初期段階であり、投資機会はこれからいくらでもあるという。
AIはこれから10年以上かけてゆっくりと経済に浸透していく、というのがデサイ氏の見立てだ。
また、AI関連と言っても相当幅があることを投資家は認識し始めており、AI開発だけでなく、データプロバイダーやクラウドアプリケーション開発販売、サービスとしてのAI(AI as a Service、AIaaS)など今後さまざまな形で投資機会が生まれてくるという。
「AIの発展(開発)サイクルはかなり長期的なものになると考えています。そして、投資機会が広い領域にわたって生じるからこそ生まれてくるイノベーションもあるでしょう」
いくつかの理由から、デサイ氏は今回のAIブームがこれまでの繰り返し(の単なるブーム)とは違う展開になると予測している。
第一の理由としては、AIモデルが過去に比べて格段に洗練されたことで、現実世界の問題解決に応用できるようになったこと。
第二に、イノベーションが従来以上の勢いで進んでいること。
第三に、ユーザー数の増加にも勢いがあること。米OpenAI(オープンエーアイ)が昨年11月にリリースした対話型AI「ChatGPT(チャットジーピーティー)」は、過去に登場したあらゆるアプリケーションを上回るわずか2カ月という短期間で、月間アクティブユーザー(MAU)1億人にたどり着いた(ロイター、2月2日付)。
最後に、開発者も(プログラミングに)AIを活用し始めていること。
「大量の情報を理解し、処理し、それを活用して事業成果を拡大する人間の能力におけるパラダイムシフトになると確信しています」
デサイ氏によるリサーチの成果は、年初来リターンが40.7%(6月17日終値)と絶好調の「グローバルX AI&ビッグデータETF」の組入銘柄を判断する際の基礎情報となる。
上述のような長期見通しを踏まえ、デサイ氏は長期保有を前提にAI分野へのエクスポージャーを取るよう推奨する。
もちろん、彼が関与するグローバルXのETFは手段の一つであって、「ロボ・グローバル・アーティフィシャル・インテリジェンスETF」や「トゥルーシェアーズ・テクノロジー AI&ディープラーニングETF」なども選択肢となる。
当然、個別銘柄への投資も選択肢になる。その参考情報として、デサイ氏にAI分野で最も強気とする銘柄を聞いてみた。
デサイ氏推奨の5銘柄
デサイ氏が真っ先に推奨銘柄として挙げたのは、画像処理半導体(GPU)大手のエヌビディア(Nvidia)だ。ディスクリートGPUの市場シェアでは8割超を占める。
中央演算処理装置(CPU)とGPUへのハードウェア投資は今後も増加していくというのがデサイ氏の予測だ。
「これからAI分野におけるビジネスチャンスが広がり、4.5兆ドル規模にも及ぶ世界のIT支出のほんの一部がAI用途のハードウェアに流れ込むだけでも、CPU・GPUを手がける企業は大きな恩恵を被ることになります。そう考えると、エヌビディアの優位性は明白と言っていいでしょう」
「そして、エヌビディアはこのチャンスを見据えて、ハードウェアのラインナップを充実させるだけでなく、ソフトウェアアーキテクチャの構築にも大きな投資を続けてきました。いままさにそれが実を結ぶ時だと私は考えています」
デサイ氏の推奨銘柄に話を戻すと、次に強気とするのはメタ・プラットフォームズ(Meta Platforms)とグーグル親会社のアルファベット(Alphabet)。
その理由は、両社が主力製品を通じて保有する大量のデータだ。メタはフェイスブック(Facebook)、インスタグラム(Instagram)、ワッツアップ(WhatsApp)など巨大なユーザー基盤を抱えるソーシャルメディアアプリを運営し、アルファベットは圧倒的シェアを誇る検索エンジン、グーグル(Google)を傘下に置く。
両社は「AIモデルを通じてサービスを改善し、ビジネスモデルを強化し、自社製品の販売を促進できます」とデサイ氏は語る。
デサイ氏は最後に、企業向けにデータを整理・管理するソフトウェアを展開する企業を強気とし、その代表格であるセールスフォース(Salesforce)やサービスナウ(ServiceNow)を推奨銘柄とする。
ニッチなニーズに対応する際にAIを活用したいと考える中小規模の企業に対し、両社はサポートを提供できるという。デサイ氏はその強みをこう表現する。
「セールスフォースとサービスナウは、伝統的な小売業者や銀行、物流会社が極めて限定的なユースケースにAIモデルを適用することを可能にしてくれる企業なのです」