2023年5月10日、カリフォルニア州マウンテンビューで開催されたGoogle I/Oでステージに立つグーグルのサンダー・ピチャイCEO。
グーグル(Google)の社員は、スタッフをオフィスに復帰させるという同社の最大の取り組みに強く反発している。
これまで社員は、週3日はオフィスに出社するように言われていた。しかしグーグルは今回、この最低条件を満たさない社員は人事考課に響く可能性があると発表。完全リモートワークの申請は「例外措置」としてのみ扱われることになった。
Insiderが閲覧した複数の社員とのやりとりや社内資料によると、このニュースは社員には不評のようだ。
従業員の中には、出勤を人事考課に結びつける必要はないと言う人もいれば、新しい指針が曖昧で、特に地域ごとに分散して働いているチームにとっては不満が残ると指摘する者もいる。
「グーグル社員は楽な生活をしていると文句を言う人がいるのは知っています。でも、グーグルで働く大きな魅力の1つは柔軟性とオープンなところです。それなのに、会社はそれをことごとく潰しています」と、ある社員はInsiderに語る。
別の社員は、スタッフの間には今回の新方針に対して「多くの不満がある」と言う。
「私たちは、小学生のように細かく管理されるのは好きじゃないんです」
グーグルの広報担当者であるライアン・ラモンと(Ryan Lamont)は、Insiderの質問に書面で以下のように回答した。
「当社のハイブリッド勤務方針は、週の一部は自宅で働くことの利点と、従業員が直接一緒にいることの利点を組み込むために作られています。この働き方を始めて1年以上経った今、この方法はすべての職場方針に正式に組み込まれています」
社内で不満を伝える公式なチャンネルがないため、ここ数日、一部のスタッフはMemegen(グーグルの社内ミーム生成ツール)に目を向け、不満を吐き出している。
よく読まれたあるミームには、「今日は何も達成できなかった。しかし私はオフィスで仕事をした。どうやらそれが最も重要なことのようだ」と書かれている。
別のミームでは、誰もいないオフィスの画像に「『魔法の廊下での会話』をする時間だ(Time for some ‘magical hallway conversations')」というテキストが添えられている。これは、6月に社員宛てに送られたメールの文面をもじったものだ。
「グーグル社員は3日はオフィスで働き、2日はベストな状態で働ける場所のどこででも働く」と書かれたミーム。
Google insider
グーグルはまた、社員のIDカードのデータでオフィスへの出社率も追跡すると告知したが、同社はInsiderの取材に対し、これはあくまで何週間も欠勤が続いている者を特定するためだと語った。
今回の新方針は6月初め、グーグルのチーフ・ピープル・オフィサー(CPO)であるフィオナ・チッコーニ(Fiona Cicconi)から社員宛てに送られたメールで発表された。この発表がなされると、アルファベット労働組合(Alphabet Workers Union)からも反発の声が上がった。
グーグルのソフトウェアエンジニアでアルファベット労働組合のメンバーであるクリス・シュミット(Chris Schmidt)は、書面でInsiderに次のように述べた。
「一夜にして、労働者のプロフェッショナリズムが無視され、業績評価に結びついた曖昧な出勤追跡のやり方が優先されました。この新しい方針が実際に適用されると、労働者間の無用な混乱と我々のさまざまな生活環境が無視されることになります」
また同組合は、チームが分散して働いている状況から、新しい指針の下でも一部のスタッフは対面で仕事をすることに協力しないだろうと話す。
「元の基準に戻っただけ」
とはいえ、誰もが新方針が大問題だと捉えているわけではない。
ある社員は、新しい規則は他社と比較して「かなりソフト」だと思う、と述べる。
「グーグルは常に、オフィスにいることを好む文化的傾向がとても強いんです。要するに今回のことは、元の基準に戻っただけということです」
他の社員らも、すでに週3日出社している社員にとっては今回の指示がそれほど目新しいものとは捉えておらず、ただ以前よりも「トップダウン」になっているように感じた、と話す。
一方、「今までとは違うオフィス体験に戻ることになる」と指摘する者もいる。グーグルは、多くの人に愛用されてきた社員特典を含め、オフィス関連の支出を下げ、現在一部のスタッフはデスクを共有している。
「現在、ニューヨークの社員は、快適に使える机や会議室すら満足に持っていません。十把一絡げの方針では、こうした状況に対応できません」と、アルファベット労働者組合のシュミットは語る。
また、グローバルに分散し、オフィス出勤の恩恵を受けられないようなチームには今回の新方針をどう説明するのかと疑問を呈する社員もいる。
ある別の社員はInsiderにこう語った。
「個人的にはオフィスで仕事をする方が生産的です。でもリモートで働く人が多い場合はほとんど意味がありません。彼らが会議室を占領するだけですから」