3カ月60万円コーチング、5人でチーム勉強…英語学習が「続かない人」向けビジネス活況

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それでも英語の勉強が続かない……。そんな人をターゲットにしたサービスが注目されている。

撮影:横山耕太郎

いつかは身につけたいと思っても、なかなか勉強が続かない。その筆頭が「英語学習」ではないだろうか?

そんな英語教育業界で「英語学習が続かない人」をターゲットにしたサービスが注目されている。

5人でグループを組んで毎日の学習を報告しながら勉強するサービスや、3カ月で約60万円という高価格ながらマンツーマンで英語学習をサポートするサービスなどなど。

あの手この手で「英語を続けさせる」ビジネスの最前線を取材した。

タイムスケジュールを徹底管理

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プログリットのウェブサイトには「色々試したけど英語が伸びない。そんなあなたへ」とある。

撮影:横山耕太郎

「96%がプログラムを完遂しており、過去に英語学習を挫折した人にも離脱させない」

2016年に起業し、2022年9月に東証グロースに上場したプログリットの山碕峻太郎副社長はそう話す。

プログリットの特徴は、英会話教室のように英語を学ぶのではなく、「自習」をサポートする英語コーチングサービスであること。

1人ひとりの受講生に専属コーチが付き、いつどんな勉強をするのか学習計画を作成し、専用アプリで日々の学習時間を記録する。

自習中の疑問点についてはチャットでコーチにいつでも質問ができ、1週間ごとに対面かオンラインでコーチと面談する。

「1日2時間英語を勉強するために、残りの22時間をどう過ごすのか、専属コーチと一緒に1日の学習予定を立てます。

振り返りでは『なんで火曜日は勉強できなかったんですか?』『この飲み会はパスできなかったんですか?』など徹底的に点検します」

「3カ月で60万円」がもたらす効果

山崎さん写真

プログリット副社長の山碕峻太郎氏。

撮影:横山耕太郎

手厚いフォローが売りのプログリットだが、価格も高い。基本となる3カ月コースは税込59万9500円だ。

公式発表によると累計の受講者数は1万5000人。現在の会員数などは公表していないものの、2023年8月期第2四半期の「英語コーチング」の売上高は前年同期比14.2%増の4億6700万だった。

2023年6月現在、入会には約2カ月待ちの状況が続いているといい、ユーザーの年齢は26歳〜34歳が約4割で最も多く、年収帯では「1000万円以上」が50%を占める(※)。

※ユーザー年齢は2021年8月〜2022年7月の無料カウンセリングの対象者。世帯年収は2020年10月に実施した卒業生へのアンケート調査による。

英会話大手もコーチングに参入

eccのウェブ画面

ECC外語学院をはじめ、英会話教室大手もコーチングサービスを始めている。

ECCのウェブサイトを編集部キャプチャ

プログリットは従来の英語教育マーケットに、英語コーチングという新たな分野を開拓し成長してきたが、いまや新規参入も相次ぐ。

英会話大手・ECC外語学院は2023年4月に、3カ月で36万5200円(税込み)のコーチングプランを発表。NOVAやイーオンもコーチングプランを設けている。

こうした現状について山碕氏は「英会話市場に比べると、コーチング市場はまだまだ小さい。コーチングが注目されていることはポジティブに捉えている」と話す。

「短期間で集中して取り組むというサービスは、ライザップが市場を作ったと思っています。そして『英語も正しいやり方で、継続して学ばないと成果が出ない』と感じる人がこれからも増えると思います」

5人チームで3カ月学ぶ

ガリベンウェブサイトの写真

ピアラーニングのGaribenは「新感覚グループ英語コーチング」と打ち出す。

撮影:横山耕太郎

マンツーマンの専属コーチではなく、5人程度でグループを組んで互いに報告しながら英語を勉強するサービスも登場した。

Gariben(ガリベン)は2021年1月からサービスを開始。学習者が仲間(=ピア)同士となり学ぶピアラーニングの形式を取る。

期間は3カ月。勉強のポイントを伝える講義が計6回あるが、それ以外は個人でカリキュラムに沿って自習を進め、その日の学習内容をグループで報告する。

Garibenを受講した経営コンサルタントの高橋好美さん(40)は「英会話教室は数カ月で辞め、オンライン英会話は予約するのが面倒になり半年で挫折……。英語が続かないコンプレックスが強かった」と話す。

「ピアラーニングでは仲間と『この問題難しかったよね?』などやりとりができて、3カ月間勉強を続けられた。

ただ、仕事が忙しい時には『30分しかできませんでした』と連続で報告してしまいしんどさもありました」(Gariben受講者の高橋さん)

「いい関係でいたい」プレッシャー

太田さん写真

Garibenを運営するスクールウィズ社長の太田英基氏。

撮影:横山耕太郎

Garibenを運営するスクールウィズ社長の太田英基氏は、ピアラーニングのメリットについて「グループの仲間と『いい関係でいたい』というプレッシャーが働く」と話す。

「グループでは最初に、趣味や仕事、勉強する理由など自己紹介をしてもらい、グループ名もみんなで決めてもらいます。

月に1回はグループで学習状況を振り返るほか、各グループのLINEグループにはスタッフも入っており、いつでも学習方法について質問ができる体制にしています」

ピアコーチングの魅力の一つが価格だ。Garigenは3カ月で9万9000円〜13万6800円(入会時期によって変動)で、マンツーマンの英語コーチングに比べると価格が安い。

過去に英語学習を挫折した人の参加も多いが、3カ月で離脱してしまうのは1割未満だという。メインユーザーとしては30代の会社員の参加が最も多く、口コミで参加者が増えているという。

「​​英語を高いレベルで話せるようになるためには、一般的に2000時間の学習が必要だと言われています。でも1週間に1時間のみの学習だと40年以上かかります。

英語学習サービスの大半は、1日10分で毎日コツコツ続けられるなどのライトなスタイルが圧倒的なシェアを占めています。しかしそれではいつまでも英語を話せるようにはなりません。

学習計画を立てて長期的に英語学習にコミットする姿勢を身につけるサービスが役立つと思っています」(太田氏)

AIが「スピーキング力」をテスト

福田さん写真

レアジョブCMO(最高マーケティング責任者)の福田侑也氏。

撮影:横山耕太郎

AIを活用し、英語学習からの離脱を減らす取り組みも進む。

オンライン英会話大手・レアジョブでは、AIによる「スピーキング能力のテスト」に注力している。

オンライン英会話を挫折する最大の原因は、英語力が伸びているのかがわかりにくいこと。TOEICであればすぐに点数がわかりますが、英会話は効果が見えにくくサービスからの離脱を生んでいた」

レアジョブCMO(最高マーケティング責任者)の福田侑也氏はそう話す。

レアジョブが2020年6月からサービス開始したスピーキングテスト・PROGOS(プロゴス)では、これまで人間が判定し1〜2カ月かかっていたスピーキング能力の評価を、AIが数分で評価し終える。

国際的な指標・CEFR(セファール)でレベルを判定しており、アマゾンが新卒採用で導入するなど、法人での利用も進んでいる。

ChatGPTで学習支援

サービス画面の写真

AIを活用し学習サイクルを隔離することで、ユーザーの離脱防止を狙う。

レアジョブのウェブサイトを編集部キャプチャ

レッスンにもAIを活用する。英会話レッスン中に「英語でどう言えばいいのかわからない」という場合に、ChatGPTを活用する機能「レッスンAIアシスタント機能(β)」を2023年4月に新たに導入。単なる翻訳機能ではなく、受講者のレベルに合わせた表現を提案してくれる。

「言いたいことが言えずに黙ってしまうことが、継続できない原因になっていた。20代、30代の若いユーザーを増やすためにも心理的ハードルを下げたい」(福田氏)

若い世代を意識しスマホアプリの改修も進め「予習→オンライン英会話→スピーキングテスト」というサイクルをより意識できる設計にするという。

AI時代「話す力ニーズ」見込む

福田氏は、AIの進化が「英会話のニーズ」の面でも追い風になっていると分析する。

「AIの時代になり読み書きとリスニングのスキルはAIがかなり代替できるようになりました。そして最後に残るのがスピーキング。話すコミュニケーションは最後までAIには代替できません。

TOEICでハイスコアであっても英語が話せない人は少なくない。従来の英語学習ではなく、よりスピーキングに注目する人たちを取り込んでいきたい

レアジョブでは今後、広告戦略などを通じてサービスの認知度アップをはかるという。

英語に苦手意識をもつ日本人はまだまだ多い。「英語学習が続かない人向けサービス」の市場では、これからも激しい競争が続きそうだ。

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