Money Insider編集長の長田真。
Shin Osada
- Money Insiderの編集長である筆者は、新NISAを中心に無目的に分散した家計を分かりやすく整理しようと思っている。
- まずは、セオリー通りに生活防衛資金を用意し、それ以外を「つみたて投資枠」にまとめて行く予定だ。
- なお、投資配分については、「日本:先進国(日本除く):新興国=30:50:20」という形を目指している。
新NISAが運用開始されるまで、あと半年に迫った。これでようやく、無目的に分散した家計を整理できると思うと待ちきれない思いでいっぱいだ。
既存NISAは非課税である点、比較的安心に投資を試せる点においては素晴らしい制度だったといえる。しかし、いかんせん非課税枠と期限がそれぞれ中途半端に区切られていたため、「投資初心者の入門枠」という機能しか果たしていなかったように思う。
それが新NISAになることによって、「より頼もしい長期投資の伴走者」という存在になりそうだ。私もMoney Insiderの編集長として、そろそろその運用方法を考えていきたい。
なお、約1年前にこの役職へ就いた頃、私は完全に投資の素人だった。しかしそれ以降、公私を問わず、ほとんどの時間をパーソナルファイナンスについて考えることに費やしている。そのため、客観的に見て現在は中級者の一歩手前くらいにはなっただろうか。
そんな立場から、私なら新NISAをこう使うというプランを共有する。気軽にご笑覧いただきたいと思う。
複雑怪奇な状態にあるわが家の家計
まず、現状のわが家の金融資産は、現金:証券=1:1という状況にある。この1:1という配分は、見た目は美しいかもしれないが、たまたまそうなっているだけで、意識的なものではない。冒頭に申し上げたとおり、内実は利用する金融機関だけが無駄に増えて、運用に手が余るくらいに複雑怪奇さが増しているのだ。
そうなった原因のひとつには、現「つみたてNISA」の非課税枠の小ささが挙げられる。1人あたり年間40万円という金額は、NISAを始めて数年も経っていないわが家では、夫婦2人分を運用してもすぐに一杯一杯になるのだ。そのため余った資金は、別の銀行に「老後資金」として預けていたり、課税枠ではあるがより堅実なロボアドバイザーに任せていたり、無目的に家計が分散していったのである。
もしかしたら年間120万円という一般NISAを利用すれば、もう少し家計をきれいに整理できていたかもしれない。しかし、コロナ禍の頃の投資ブームに乗っかった我々としては、まだ個別株を運用していく自信はなかった。また5年という期限は、値動きのリスクを増幅させる可能性もはらむ。その結果、わが家は現状つみたてNISA一択となっているのだ。
さて、こうした状況から新NISAをどう展開するかだ。
新NISAを中心に家計をしっかり整理
現金:証券=1:1という現状は、意識的に構築したものではないと先述した。ここから新NISAを活用して、とりいそぎ以下の状況を構築したいといまは考えている。
現金:新NISA:既存・非課税枠(旧NISAや年金など)= 1:1:1
その狙いは、次の3つだ。
1. 現金の最小化:まず、現在保有している現金を「生活防衛資金」と「余剰資金」にしっかり切り分けようと思う。これまでは、その概念を夫婦ともに認識はしていたが、なあなあにしていたところがあった。先に述べたとおり、現金の行き先に明確な指針がなかったからだ。
そこへ厳密に線引きを行って、生活防衛資金だけを現金として残し、余剰資金のできるだけ多くを新NISAの「つみたて投資枠」に入れていきたい。夫婦2人で3600万円という生涯投資枠は、一般市民にとっていくら詰め込んでも余りある規模だ。ちなみにわが家の場合、妻が極度の慎重派のため、生活防衛資金は通説より多めに1年分と見積もっている。
2. 「課税投資」からの撤退:さらに、現在保有している証券の方も「既存・非課税枠(旧NISAや年金など)」と「課税枠(わが家の場合、ロボアドなど)」に分けられる。このうち既存・非課税枠の方はこのまま保持するしかないが、問題は課税枠の方だ。こちらの資金も、すべてすみやかに新NISAのつみたて投資枠へ移行していこうと思っている。
なお、ロボアド各社も新NISAをカバーしたサービスを展開するだろう。だが、やはり手数料を鑑みると、多少手間がかかったとしても普段使っている一般的な証券会社の運用に資金を一本化した方がおトクだと、わが家では判断している。
ちなみに、初心者であればとりあえずロボアドにおまかせでNISAを始めるというのも手だと思う。投資の場合、指をくわえて時間をロスすることが一番の悪手だからだ。そのうち詳しくなったら、より好みに合ったスタイルに変更することもできる。
3. 新NISAの最大化:何度か触れている通り、わが家ではつみたて投資枠一択になると思っている。そこへ、1.と2.で捻出した資金を、できるだけ素早く積み上げて行こうと考えている。そのようにして、とりあえずは、現金:新NISA(つみたて投資枠):既存・非課税枠(旧NISAや年金など)=1:1:1という状況を目指していく。
なお、それが達成される頃には、1.と2.で捻出した資金は少なくなっているはずだ。以降は給料から現行のNISAに投資している分をそのまま回していく予定である。そのためさらに時間が経てば、家計の割合は大きく変化する。新NISAが大幅に拡大し、次いで既存・非課税枠も引き続きの投資や収益によって、ゆるやかながらも堅実に育っていく。変わらないのは現金の規模だけとなるはずだ。
ポートフォリオはややアグレッシブに
そのうえで、新NISAのつみたて投資枠をどのように運用するか? 具体についても少し触れておこう。
まずわが家の場合、新NISAを実際に老後資金として切り崩して使うようになるには、まだ10年以上の時間がある。なので、しっかりリスク分散を行いながらも、しばらくはややアグレッシブなポートフォリオを形成していこうと思う。 基本、投資信託100%でその内訳は次の配分を考えている。
日本:先進国(日本除く):新興国 = 30:50:20
日本株:特に深い思いがあったわけではないが、日本株にはiDeCoを始めた10数年前から、なんとなく投資していた。訳も分からずの行動だったため、辛酸を舐めていた時代もあったが、それがいま図らずも大輪の花を咲かせている。そのため、個人的にも愛着がひとしおなのだ。
また日本株の場合、為替リスクがない点も魅力だ。仮に海外の株が大きく成長しても、同時に円高になってしまえば取り分も大きく減る。そうした危険を顧みなくてもいい部分はしっかり確保しておきたい
先進国株(日本を除く):ここは堅実な成長性を期待して、ポートフォリオの過半数を占める50%をつぎ込む予定だ。ならば、米株の1本に絞ってもいいのだが、あえてその他先進国も含むものを選びたい。その理由は、個人的にアメリカの将来性について疑問符を抱いているからだ。
自由主義が先鋭化した同国は、桁違いの成功者を多く生み出したが、その分、格差と分断も恐ろしく広がっている。その様子を垣間見る限り、諸手を挙げて乗っかる気分にはなれないのだ。実際のところ先進国株には米株が多く組み入れられているが、少しでもその他先進国へ分散しておきたいと思っている。
新興国株:ここについては、純粋に未知な可能性に賭けたいと思っている。栄枯盛衰は世の習いだ。現在の主要国が、未来永劫その地位にあり続ける保証はどこにもない。とはいえ、控えめに20%という形で考えている。
中長期的にはGPIFの運用を参考予定
当然、このポートフォリオは、時間とともに変化させていこうと思っている。退職間近になったら、もう少し堅実な構成にしていきたいからだ。
その際には、運用資金が190兆円にも及ぶ、世界最大規模の機関投資家「GPIF」の運用を参考にしようと思っている。GPIFとは、日本国民の年金を運営する「年金積立金管理運用独立行政法人」のことだ。
その経済に対する影響力は凄まじく、資本市場の「クジラ」と呼ばれている。彼らに対して、コバンザメのごとく追随していけば、きっと安心安全に資産を増やしていけるだろうと目論んでいるのだ。
ちなみに、GPIFの現状のポートフォリオは、「国内債券:外国債券:国内株式:外国株式=25:25:25:25」となっている。債権が50%も含まれているので、かなり堅実な印象を与えるが、この20年の年間平均収益率は3.47%で、累積収益額は100兆円になるという。その実績もお墨付きだ。
GPIFのポートフォリオは、5年ごとに更新されているようだ。直近では、2020年4月1日に更新されたので、2025年の最新情報が心待ちにしている。
まとめ
生活防衛資金だけを現金として留め、残りを投資に回すというのは現在のパーソナルファイナンスの基本だ。わが家ではそこを遵守しつつ、できるだけ堅実に、しかし一定以上のリターンを期待できる形で、新NISAを運用していく予定だ。