入社直後に転職サイトに登録する新卒社員が増えている。
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この4月に入社した新卒社会人で、入社後1カ月を待たずに転職サイト「doda」に登録した人の数が、過去最多を記録した。
初任給の大幅引き上げなど派手な話題が先行する一方で、就活時の憧れが冷めてしまう、言わば「キャリアの“蛙化現象”」が起きているのか?
doda「率直に驚いている」
調査したのは、パーソルキャリアだ。同社が運営する転職サービス「doda」に入社月の4月に登録した新卒社会人の数を、2011年から記録している。
2023年4月にdodaに登録した新卒の数は過去最多となり、12年前に比べると約30倍に増えていた。
登録者の人数は非公表だが、doda副編集長の桜井貴史さんは、この数字に「率直に言って驚いている」と話す。
登録者の属性をみると、性別は男性6割、女性4割に、その他が続く。業種は「小売」「建設・プラント・不動産」、職種は「営業」「販売・サービス職」が多かった。これらは「新卒採用や配属が多いため」(パーソルキャリア広報)だという。
企業規模の詳細なデータはないものの、大企業で働く新卒も一定の割合でいたそうだ。
背景に配属ガチャと活況な第二新卒
出典:転職サービス「dada」
2023年の新卒といえば、東証プライム上場企業の7割が初任給を引き上げるなど、明るい話題が先行した。その陰で一体何が起きていたのか。
当事者のZ世代といえば、好きだった相手の意外な一面を知って急に心変わりする「蛙化現象」が、2023年上半期の流行語1位になったのも記憶に新しい。仕事も「想像と違った」などで就活時の憧れが冷め、転職サイトの登録につながったのだろうか?
前出の桜井さんは、入社直後に転職を考える新卒が増える背景には、2022年に話題を呼んだ「配属ガチャ」問題があるという。「自分らしく働きたい」と願う若者が増える一方で、「入社するまで配属先が分からない」企業の現状は変わらない。
不安を抱えながら就活せざるを得なかった学生たちは、転職を自己実現の手段と捉えるようになり、転職活動にも柔軟、もっと言えばアグレッシブになるというわけだ。
今回の調査結果は、たとえ配属問題などでビジネス上の“蛙化”を経験しても、すぐに前に進むZ世代のスマートさの表れとも言えよう。
そんな彼らの受け皿は広い。
「第二新卒の採用は活況で、売り手市場です。企業側も、新卒時より高い年収を提示しないと採用競合に負けるため、新卒入社後すぐに転職しても給料が上がるケースが増えています」(桜井さん)
冷静になることも大切
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そもそも、
「自身のスキルや市場価値を客観的に知るために、転職サイトに登録する人も多い」
そうだ。
6月は第二新卒枠の採用が増える時期だ。転職意向が高まる人も多いだろうが、桜井さんは冷静になることも大事だと注意を促す。
「働き続けることでスタンスが変わり、仕事にやりがいが生まれることもあります。
売り手市場とはいえ、企業からは『なぜ早期の転職を考えたのか』聞かれるでしょう。また同じようにすぐ転職されてしまうと困りますから。
さまざまな選択肢を探るのは悪いことではありませんが、『すぐの転職』が必ずしも正解とは限らないので、気をつけてほしいですね」(桜井さん)