「進化系ロボアド」は、何が進化したのか?——ウェルスウィングに訊く、あえてアクティブへ踏み切った理由

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パッシブ運用一辺倒だったロボアドが、アクティブ運用にも進出しはじめた。

Ociacia/Shutterstock

  • 新機軸のロボアドバイザー「ウェルスウィング」が、いよいよその真価を発揮し始めているという。
  • 従来のロボアドバイザーがパッシブ運用を主体としているのに反して、「ウェルスウィング」はあえてアクティブ運用を採用。
  • なぜそのような進化を遂げたのか? 開発・運用会社スマートプラスの担当者である福田雄一氏に話を訊いた。

「進化系ロボアド」が、いよいよその真価を発揮し始めている——。

Money Insider編集部では去る2月末に、そんな情報提供を受けた。当時送付された資料には、次のように記載されている。

「これまで多くのロボアドバイザーが採用してきた国際分散投資モデルは、(中略)昨今の経済状況並びに市場環境に対応できず、パフォーマンスの悪化が顕著に現れてきている」

そのような状況下において、「市場平均に対してアウトパフォームを記録する新しい運用モデルとリスク低減を意識した」まったく新しいロボアドバイザーを開発。それを彼らは、進化系ロボアドと呼んでいるという。

発信元は、金融機関や金融サービスを始めたい事業会社に向けて証券ビジネスプラットフォームを提供するスタートアップ企業のスマートプラスだ。技術力が問われる金融基幹システムを主事業としている企業が、ロボアドバイザーの何を進化させたのか? 

新機軸のロボアドバイザー「ウェルスウィング(Wealth Wing)」の運用モデルを開発し、運用業務全般を司る福田雄一氏に話を訊いた。


Q. 「進化系ロボアド」とは何ですか?

従来のロボアドは、市場平均に追従するインデックス投資を中心にした、パッシブ運用が特徴でした。しかし、ウェルスウィングでは、機関投資家が行ってきた「マルチ・ファクター投資」を用いて、よりアクティブな運用を実現しています。そこが「進化系ロボアド」と表現していることの由来です。

Q. その進化はなぜ必要だったのでしょう?

いわゆる、一般的なロボアドというのは、海外のETF(上場投資信託)を利用して、さまざまな国と資産クラスに「グローバル分散投資」をできるのが売りです。

ところが、それに利用しているETFというのは、多くて10銘柄くらいしかありません。具体的には、米国株、日欧株、新興国株、債券、コモディティ、金、不動産などですね。それだけだと現在のような予測不能な時代には対応しきれないという課題が見えてきました。

それに対して、我々が投資対象としているのは、東証プライム市場の約1600銘柄。そのなかから、8つの戦略に基づいて選んだ約25銘柄で構成しているポートフォリオを提供しています。それによって、予測不能な時代に適応できる柔軟性を実現しているのです。

Q. それぞれのETFの先には、無数の投資対象が存在します。その総数は、1600以上になると思うのですが。

ETFの先に、無数の投資対象が存在するというのは、間違っていません。ですが、それらがそれぞれのETFに集約されて、生み出される結果というのは1つなのです。それは、1事業体と変わらないと言えるでしょう。

例えばレゴで遊ぶとき、10個しかブロックがない場合、作ることのできるものは限られてしまいます。しかし1600個もブロックがあった場合、思い通りのものが作ることができる。そういう違いがあります。

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ウェルスウィングを開発した福田雄一氏。大手証券会社のプロップディーラーとして日本株ポートフォリオ運用を約10年間担当した後、スマートプラスに参画した。

提供:スマートプラス

Q. 一般的なロボアドと比較して「自由度が格段に違う」ことで、何がもたらされるのでしょう?

投資においてなぜポートフォリオが重視されるかというと、組み合わせによってリスクを回避できるからです。A銘柄とB銘柄が同じ動きをしていたら、どちらを買っても同じ結果になる。でも、Aが上がる時に、Bが下がるという相関が逆なものを組み合わせたら、常に安定的なリターンを生むことができる。それが、リスク分散の本質です。

以前までは、株が上がると債券が下がるという逆の相関があると捉えられていました。しかし、それは平時だけのことだったのです。いまはコロナ禍があって、ウクライナ侵攻が起き、米国が金融引き締めをした結果、株も下がれば債券も下がるという動きになった。さらに、コモディティや不動産も引きずられすべてが同じ方向を向いているんです。

一般的なロボアドの仕組みは、平時においてこの分散効果が高かった。しかし、予測困難な時代となったいまは、リスクが3倍くらいに高まっている。進化系ロボアドならそれを回避できます。

Q. リスクの高い状況はここ2年くらいでしょうか。

そうですね、2年です。今後これが元に戻るという保証はありません。もしかしたら世界中の構造が変わり始めているかもしれないのです。

例えば、中国と米国の分断がもっと鮮明になったらこれまでグローバルだったサプライチェーンが切れてしまいます。そうなると「そもそもグローバル分散投資ってどうなのか?」という話になってくるわけです。

あと、米国の金利がこのまま本当に下がるのかも誰にも分かりません。もしインフレが続くのであれば高止まりしていく可能性もある。

Q. 世界中の構造が変わり始めているとしたら、個人投資家にはより困難な状況になりますか?

個人投資家にも、こうしたリスク分散はできなくはないと思います。ただしすごくお金がかかります。というのも、機関投資家は膨大なデータを買うんですよ。最低でも年間500〜1000万円かかるようなデータを。

そこから日々、配当利回りとか株価収益率、あと利益率や自己資本利益率など、1銘柄について50くらいのファクターを1600銘柄分、日々すべて確認している。それによって機関投資家は、その銘柄が市場でどう評価されているかを判断するわけです。

これが、一部の専門家でしか行えなかった高度な投資手法「マルチ・ファクター投資」です。ウェルスウィングではそれを、最適化や機械学習の技術を駆使して自動で行っている。なので、最低15万円という少額から、この投資手法を簡単に実行出来るのです。

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ウェルスウィングのアプリ画面。高度な投資手法「マルチ・ファクター投資」で選出された約25銘柄のポートフォリオ構成が円グラフで表示されている。

提供:スマートプラス

Q. マルチ・ファクター投資はものすごく手間がかかりそうです。だからこそ日本株しか扱っていないのですか?

そうですね。ただ、いずれ米国株のポートフォリオも提供し始める予定で研究している段階です。そのデータは準備できていて、あとはどういう戦略を組んでいくかという段階になっている。

実は日米の株価はほぼ同じような動きをしていて、むしろ米国の動きが日本市場に反映されているという感じです。なので、日本市場でうまくいっているのであれば、おそらく米国市場でもうまくいくと考えていますね。

Q. 投資初心者向けの手引書には、「日本にだけ投資するのは考えもの」という助言が多いですよね?

日本に住んでいる人が、リスクヘッジとして海外資産に目を向けるのは、当たり前だと思います。なので、私たちは「日本株にぜひ」と言っているわけではありません。たまたま日本株から始めているのであって次は米国株版も進めている。

とはいえ、我々からすると皆さん日本人なのにすごく弱気になっていると感じるところもありますね。中身を調べれば調べるほど、「なんでこんな優良企業がこんな安い株価で放置されているのか?」という銘柄がいっぱいある。なので、今年に入ってからそういったバリュー銘柄に外国人の買いが入って、一斉に値が上がってきています。

Q. 同じく初心者向けの手引書では、「アクティブは、もはやインデックスに勝てない」という意見も目にしますが。

2010年代というのは、世界中で金融緩和を行っていた稀有な時代でした。そうしたときに市場と同じものを買っていく、パッシブ運用は強みを発揮します。というのもパッシブ運用は、時価総額を加味した加重平均で、すべての銘柄を買っていくから。だからこそ低コストで確実なパフォーマンスを実現できていたんです。

ただ、金融引き締めの時代にはパッシブ運用は効率が悪くなる面もある。お金がなくなってくると、パフォーマンスの悪い銘柄は手放してパフォーマンスの良いものだけでポートフォリオを構成しようとするからです。それは、もはやアクティブ運用と同じことを行っているわけでそうなると既存のアクティブ運用業者のほうが有利になる。だからウェルスウイングを開発したのです。

Q. 開発段階からこのような状況になると見込んでいたのですか?

運用開始から2年ですが、はい、開発段階から予測していました。コロナ禍での上昇は完全にバブルでしたから。それが弾けたときにどうなるかというと、やはり割高の銘柄が売られて、割安の銘柄、つまりバリュー株が強くなる。そういうことを見越してウェルスウィングを企画しています。

Q. その結果はどのように成績へ表れているのでしょう?

おかげさまで大変好評を得ています。実際、2023年2月の段階では99.4%の口座が利益を得られている状況です。この2年間、ウェルスウィングの価格変動はTOPIX(東証株価指数)に追従しているのですが、それ以上の圧倒的なリターンを生んでいます。

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ウェルスウィングでは、単元株(100株単位)以下で1株から購入できる「ミニ株」という制度を利用している。

RomanovRV/Getty Images

Q. 逆に「進化系」となったことで生まれたデメリットは?

ウェルスウィングではETFや投資信託ではなく、「株式ミニ投資(ミニ株)」という制度を利用して、ユーザーの皆様にそれぞれ戦略ポートフォリオを構成する企業の「直接株主」となってもらっています。なので決算時期には、それぞれの自宅へ配当通知が複数届けられますが、それをデメリットと言えるでしょうか? 捉え方にもよると思いますが。

また、一般的なロボアドはパッシブ運用を採用しているので、手数料がかなり押さえられています。しかし我々の場合、どうしても情報入手にコストがかかるので、その分が多めに手数料へ反映されているところを気にする方もいるかもしれません。ですが、既存のアクティブファンドよりはずっと低い料金になっていると思います。

Q. ウェルスウィングはどんな人におすすめですか?

東証プライム市場の約1600銘柄から、ロボットが自動で選んだ25銘柄で構成されたポートフォリオを提供するというのが、ウェルスウィングの最も大きな特徴です。

そのため、25銘柄の値動きがすべてアプリ上で確認できるので、「とても株の勉強になる」という声を多くいただいています。なので、投資初心者の方を始め、これまでロボアドにあまり興味を持たなかったそろそろ中級者になりかけている方などにも、おすすめといえると思います。

すでに一般のロボアドバイザーを利用されている方にも、ぜひ併用いただきたい。我々は決して、パッシブ運用を否定しているわけではありません。パッシブとアクティブを組み合わせることで、より分散効果を高め、安全な運用を実現できると思います。

取材後記:取材を実施したのは3月前半。筆者は、その後、すぐに「ウェルスウィング」に登録して、運用を開始した。

それから3カ月が経過し、いまようやく利益を生み出し始めている。それは、日経平均株価がバブル後の最高値を更新している影響も多分にあるだろう。しかしそれを差し引いてもなお、運用を続けたいと思える魅力は確かにあると感じている。

なぜなら一般のロボアドと違って、どこに投資しているのか一目瞭然だからだ。ファンダメンタルズ分析をしなくとも(できなくても)、安心して名のある企業に投資できるのは、思いのほかリスク分散を実感できて楽しい。

さらに5〜6月の決算シーズンに入り、配当通知が続々郵送されてくるのも新鮮な体験だ。投資額は微々たるものなので、配当金もそれ相応の額だが、確かな社会とのつながりを実感できる。

一方、残念に思うところもないわけではない。それはNISAに対応していない点だ。個別株を頻繁に売買するので対応が難しいとのことだったが、個別株の運用機会を拡大した新NISAの開始を控えたいま、実にもったいないことだと思う。

しかし、インタビューでも触れた「株の勉強になる」というユーザーの声は、確かに言い得て妙だ。その一面だけでも、まだしばらく利用を続けていこうと、筆者は考えている。

※本記事は取材対象者の知識と経験に基づいて投資の選定ポイントをまとめたものですが、事例として取り上げたいかなる金融商品の売買をも勧めるものではありません。本記事に記載した情報や意見によって読者に発生した損害や損失については、筆者、発行媒体は一切責任を負いません。投資における最終決定はご自身の判断で行ってください。

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