「静かなやりがい」は、従業員が厳しい経済状況を乗り切るのに役立つ職場での戦略だ。
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- 「静かなやりがい」は人々が自身の仕事をコントロールするのに役立つ職場での戦略だ。
- 心理療法士のレスリー・オルダマンは、厳しい経済状況の中でのレジリエンスを身につける方法だという。
- だが、彼女や別の専門家は、静かな成功が一部の労働者から力を奪う可能性があると同意している。
「静かな退職」が依然として人気であることが最新のギャラップの調査でわかったが、別のキャリア戦略である「静かなやりがい」は、厳しい経済環境の中にある労働者が仕事に喜びを見つけることに役立っている。
この言葉を2022年12月のワシントンポストの記事で最初に使った心理療法士でジャーナリストのレスリー・アルダーマン(Lesley Alderman)はこの戦略について、企業があなたに何をしてくれるかを考えるのではなく、 「自分で自分の仕事をコントロールできるようにする」ものだとInsiderに語っている。
「人は、自分が主体であるという感覚を持っているときが一番気分がいい」とアルダーマンは言う。
「特に仕事においては、仕事がコントロールできていないと感じると人々の満足度が低くなる傾向にある」
これは、レイオフが広がり、新しい仕事を探しがやる気をなくさせる現代の職場のあり方を反映している。
新型コロナのパンデミックは当初、労働者を「大退職」と呼ばれる潮流に巻き込み、やりがいのない仕事を辞めさせたが、2022年に生まれた景気後退への恐れによって、多くの人々は仕事にとどまった。
その結果、仕事において最低限のことしかしない「静かな退職」を行う人も出てきた。だが、アルダーマンを含む専門家によると、これは注力するべき戦略ではない。彼女は「静かな退職は力を奪う」行為であり、厳しい経済を乗り切るためには、労働者にはレジリエンスのある考え方が必要だと考えている。
「静かなやりがい」とは、仕事に小さな変化を取り入れることであり、「仕事が自分自身のものであり、指示されているのではないと感じられるようにすること」だ。
意思を持って、小さな変化を起こそう
アルダーマンは、「静かなやりがい」のコンセプトは、仕事に燃え尽きて憤慨しているクライアントとの関係から生まれたと話している。
「彼らは、仕事を行う方法は一つしかなく、それは110%でやるか、あるいは指示に完全に従うしかないというマインドセットに陥っていて、広い視野を持っていない」と彼女は言う。
そうではなく、意図を持って、仕事のパターンに小さな変化を起こすことで、より充足感を感じられるようになるという。
この転換は、仕事を興味や強みに合わせて仕事を作り上げること、自分自身に本当に重要なことにフォーカスすることが含まれる。同じ考えの同僚とランチに行ったり、サークルを作ったりしてもいい。組織によって異なるが、マネージャーと会話することが第一歩になることが多いとアルダーマンは言う。
Elle Communicationsで6年間広報を務めているアシュトン・ヴィクストロム(Ashton Wikstrom)は、2018年に最初の子どもを妊娠した際、この戦略を使った。
母になることで自身の優先事項とニーズに大きな変化が生まれ、20代を仕事に費やした彼女は、今後パートタイムで働きたいと上司に伝えたとInsiderに語った。それ以来、彼女は後戻りはしていないという。
ヴィクストロムは、母親として必要なことに応じて労働時間を変えたが、彼女がいつ稼働しているのかは同僚に明確に伝えていたという。
彼女が行う仕事内容の変更でもあった。以前は、クライアントと関わる仕事をしていたが、パートタイムではジャーナリストに売り込むといったメディアへのストーリーテリングを行った。
彼女にとって仕事で成功することとは、上のポジションを目指すのではなく、自分の仕事を楽しむことだった。
「私は上司になりたいとは思わないし、マネージャーになりたいと思わない。私は自分が得意な売り込みを行いたいだけで、その役割が私にとっての仕事だ。自分のためにならないなら、階段を昇りつづけることはない」と彼女は話す。彼女は自分の仕事のスタイルを維持することで、新型コロナのパンデミックなどの厳しい状況へのレジリエンスを身につけ、乗り切ることに役立った。
マイノリティの労働者には「静かな退職」をするぜいたくはない
インターンからメタ(Mera)、シスコ(Cisco)、インスタグラム(Instagram)、ネットフリックス(Netflix)などの企業幹部まで、幅広いクライアントを持つキャリアコーチのブルックス・E・スコット(Brooks E. Scott)は「『静かなやりがい』はマイノリティの労働者に力を与える」とInsiderに語った。
「『静かな退職』は、過小評価されている人や、ただ座って目立たないようにする余裕のないマイノリティの人々にとっては異なる経験になる」と彼は述べた。
スコットによると、そのような人々は仕事の機会が少なく、最小限の仕事しかできない。
「過小評価されている人々は、すでに多数派の2倍の時間を2倍の労力で働いており、休んだ途端にチャンスを逃すことになる」
労働者が直面している経済的な課題を考えると、将来は「静かなやりがい」をもっと耳にすることになるかもしれない。アルダーマンによると、それはパンデミックのように、経済が根底から覆るできごとは、仕事に対して幻滅を感じさせる可能性があるからだ。そのような人々にとって、「静かなやりがい」は「自分が仕事に所有されていると感じる代わりに、自分の仕事を所有していると感じられる方法について問いかけること」だと彼女は付け加えた。