日本の競争力は「過去最低」の世界35位。「世界競争力ランキング2023」衝撃の結果

会議の様子

GettyImages /SARINYAPINNGAM

スイスに拠点を置くビジネススクール・国際経営開発研究所(以下、IMD) が「世界競争力ランキング2023」を6月20日、発表した。日本は過去最低の35位という結果となった。「経営の効率性」を中心に日本の今後の課題が浮き彫りとなった形だ。

■調査概要

調査地域:64カ国調査データ:世界の57の連携機関と協力して収集した164の統計データ(2/3)、世界の経営者層6400人が回答する「経営者意識調査」(92質問)の回答データ(1/3)
調査方法:標準偏差法を用いて分析比較、順位付けし、「経済パフォーマンス」「政府の効率性」「ビジネスの効率性」「インフラ」の4つの因子に整理して、競争力の順位を決める。
日本の連携機関:三菱総合研究所、経済同友会

日本は過去最低の35位、アジア太平洋地域でも14位中11位

総合ランキング推移

日本の総合順位の推移。

出典:IMD世界競争力センター 分析:高津尚志氏(北東アジア代表)。提供データをもとに、IMD編集部で作成

2023年の総合順位で日本は、前回順位の34位から1ランク落とし、64カ国中35位、過去最低記録を更新した

日本の競争力は「1997年の17位からもなだらかに低落している」と、IMD北東アジア代表の高津尚志氏は説明する。

アジア太平洋地域ランキング

日本は14カ国中11位という結果に。

出典:IMD世界競争力センター

さらに、アジア太平洋地域各国の状況と比較すると、日本の競争力の凋落ぶりが顕著に見て取れる。

アジア太平洋地域での1位はシンガポール(総合4位)で、台湾(総合6位)、香港(総合7位)と続く。さらに、日本より上位には、マレーシア、タイ、インドネシアと新興国が名を連ねる。

日本はアジア太平洋地域での競争力において14カ国中11位という、もはや“下から数えた方が早い”という結果になった。

高津氏は、調査の3分の1を占める、各国経営者による自国の評価「経営者意識調査」という手法の限界についても強調したうえで、「日本のビジネスパーソンは悲観的」と考察する。

「10点満点で3点や4点をつけるのに対し、客観的に見たらもっと低いかもしれない国の人が5点や6点をつけて、結果的に上にいるんじゃなかという懸念点はある。

一方で、自国の経済について、10点中3点や4点というかなり低い点数をつけるというのは、危機感の表れともいえるが、ある種どこかで『自分たちは変わることができないのではないか』という諦めのようなものが醸成し始めている可能性もある」

また、世界競争力センター所長のアルトゥーロ・ブリス教授も、日本の競争力について、同様のコメントを残している。

「日本の競争力の再生は、流動性を高め、新たな人材を集め、高齢化の課題への政策の変更なしには難しい。中小企業の生産性の低さ、低い給与水準、DXの遅れもみられる。

従業員はリスキリングの機会や意欲も乏しい。次に取り組むべきは、男女間の差別的な扱いをなくし、非正規労働者に対する機会均等を実現することだ。日本のエグゼクティブたちがマネジメントへの自信を失い、悲観的になっているのも、順位の低迷の一因。その年の経済状況に関係なく、毎年似た傾向がある(プレスリリースより引用)」

2014年以降下がり続けるも回復傾向にある「経営の効率性」

総合と因子レベルの順位

1997年〜2023年の「インフラ」「経済パフォーマンス」「政府の効率性」「経営の効率性」の順位推移。

出典:IMD世界競争力センター 分析:高津尚志氏(北東アジア代表)。提供データをもとに、IMD編集部で作成

総合順位を構成する、4つの因子「インフラ」「経済パフォーマンス」「政府の効率性」「経営の効率性」を紐解くと、さらに重要な答えが見えてくる。

4つの中で最も高い順位となった、基礎的、技術的、科学的、人的資源が企業ニーズを満たしている度合いを示す「インフラ」でも、過去最低の23位という結果となった。

国内経済、雇用動向、物価などのマクロ経済評価を示す「経済パフォーマンス」の26位も、2010年のアベノミクス後の回復傾向が、ここ数年で頭打ちとなっている。

政府(行政)の政策が競争力に寄与している度合いを示す「政府の効率性」は42位と、2010年以降40位前後で推移する状態が続く。

経営の効率性の凋落

「経営の効率性」は、2014年からグラフが急降下している。2020年以降回復傾向にあるものの、いまだに50位前後を維持する。

出典:IMD世界競争力センター 分析:高津尚志氏(北東アジア代表)。提供データをもとに、IMD編集部で作成

一方、高津氏が特に注目したのが、企業が革新的で収益性の高い、責任ある行動を取ることを促す国内環境の程度をはかる「経営の効率性」だ。

2020年の55位で底を打って以降、47位まで順位を更新しており、ここ数年では回復傾向にあるとも言える。高津氏もこの変革の兆しについて、

「日本の経営幹部の方々とコミュニケーションしていると、これまでの危機感を抱くだけの状態から、変革に向けた行動を取り入れ始めているという実感はある。

大企業での、幹部層の外部採用はもちろん、DXやAIに関してのチームビルディングを、内部での人材育成だけでなく、外部からから積極的に持ってくるということも増えてきている

と認識している。

だが、ここ数年の推移を通して見てみると、2014年からグラフが急降下したまま、50位前後で足踏み状態を続けていることも指摘する。

経営の効率性・サブ因子

サブ因子において、「経営の効率性」は低順位が目立つ。

出典:IMD世界競争力センター 分析:高津尚志氏(北東アジア代表)。提供データをもとに、IMD編集部で作成

他の4つの因子を、さらに細かく捉えたサブ因子からも、「経営の効率性」は、「生産性・効率性(54位)」、「 経営慣行(62位)」、「姿勢・価値観(51位)」など、他の3つの因子以上に低いランクに位置する項目も多いのが現状だ。

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