画像/MASHING UP
組織にダイバーシティが求められる中、一見、ビジネスとは縁遠いように感じられる「感性」という言葉に注目が集まっている。
多様性のある組織作りに感性はどう関わっているのか。組織は個々の感性と一体どう向き合うべきなのか。
2023年3月8日に行われた「MASHING UP SUMMIT2023」では、この課題に取り組むため、「COLOR Againワークショップ 自分の色を取り戻そう。多様性あふれる組織に、なぜ感性が必要か」と題したワークショップを実施。
オーガナイザーとして、COLOR Againを共同で手掛けるFICCプロデューサー・伊藤真愛美さんとモーンガータ代表取締役の田中寿典さん、サウンドセラピストでFreakin’Calm代表取締役のHIKOKONAMIさんが登壇。
使わなくなったコスメを使用するアートワークショップを通して、自分の色を再発見し、多様性を尊重しあえる組織づくりを行う重要性について話し合った。
現代人はいつの間にか鈍感になっている?
FICCプロデューサーの伊藤真愛美さん。現代人は、意識しないと自分本来の感性を感じ取りにくい環境にあると指摘。
撮影/中山実華
感性とは、1998年の社会学者である倉橋重史氏の論文によると、「人間が五官を通じて外界からの刺激を受け取り、それを知覚し、表象を生み出し、さまざまな感情を生む能力」であるという。COLOR Againでは、感性を“あなたがどのように感じるのか?”だと解釈した。
「人間は生きている限り、外からの影響を受けています。そのため、よほど意識しないと、周りの情報や同調圧力、集団的な価値観のバイアスの中で、自分本来の感性を感じ取りにくい環境にあります」と、伊藤さんは指摘する。
自分が何を感じているのかわからなくなり、気づかないうちに鈍感になっている——。そんな現代人に、自分の感性を再発見し、自信を持つきっかけを作る取り組みが、COLOR Againのワークショップだ。
色を取り戻した先には、それを受容する社会が必要
モーンガータ代表取締役の田中寿典さん。自身の感性を通じて得た課題意識や新規発想をもとに、使い切れないコスメを用いた新たな楽しみを創出している。
撮影/中山実華
モーンガータが5,000人を対象に独自で行なった2021年の調査によると、化粧品ユーザーの86.3%がコスメを使い切らずに廃棄している。また、化粧品企業によって捨てられるコスメの数は年間約34億個、およそ東京ドーム356個分にも及ぶという(※)。
※コスメは一般的な4色アイシャドウを基準とし、東京ドームは建築面積で計算した結果。
この日のワークショップは、使わなくなった化粧品を、コスメのニュアンスをそのまま活かしたペイントへ変えることのできる特別なキットを用いて、自由な気持ちをアートで表現するというもの。
もともと化粧品の研究開発者であった田中さんは、自分が開発したコスメがただ捨てられるのではなく、どうにか活用できないかという自分の感性を通じた視点を持てたことが転機となったと話す。
「これまでたくさんのワークショップをしてきましたが、学生さんが私たちの想像を遥かに超える多様なアイデアを出してくれるようになったりして、私たちも驚かされています。私自身、自分の感性に出合うきっかけが、もっと早くあれば良かったのに、と思いますね」(田中さん)
感じたものをアウトプットするだけでなく、「それを受容して尊重してくれる仕組みも重要」と指摘する。
「人と社会あるいは組織が両方アップデートすることで、幅広いアウトプットにつながり、イノベーションが生まれるのです」(田中さん)
「自由でいい」と言われると戸惑ってしまう理由
使わなくなった化粧品を使い、「今日感じたこと」を自由に表現するワークショップ。筆を動かすうち、初対面同士でも自然と会話に花が咲く。
撮影/中山実華
会場では、「今日感じたことを素直に表現してみよう!」というお題に対し、持ち寄ったコスメを用いて各々作成。カラフルな丸を描いたり、文字を書いたり、絵に文字を組み合わせたりと、参加者たちはそれぞれ自由に作品を完成させた。
ワークショップ後には、「なんでもいいと言われると難しかった」という意見が多数寄せられた。「忙しくて自分の感性に立ち返り、表現するような時間がなかったので、良い機会だった」といった反響もあった。
サウンドセラピストのHIKOKONAMIさんも登壇し、穏やかな音色でインスピレーションをうながす楽器を演奏。ニューヨークで暮らした経験から、感性に着目する大切さを語った。
「AIなどの進化によって、個性のない仕事などは必要とされなくなりつつあります。その人らしさやユニークさが尊重される社会や組織、環境を大切にしていけたら。
消費や経済活動の領域におけるサステナビリティだけではなく、個人個人の健康や幸せ、ウェルビーイングや持続可能性にもっと注目すべきではないでしょうか」(HIKOKONAMIさん)
サウンドセラピスト/Freakin’Calm代表取締役のHIKOKONAMIさん。「アメリカでも、感性に目を向け、本来の自分に立ち返るような活動が盛んです」と語る。
撮影/中山実華
感性=「自ら選択肢を創造する力」
「感性というとクリエイターなどの分野の話だと捉えられがちですが、どんな仕事でも必要な『自ら選択肢(捉え方)を創造する力』だと捉えたら少し今までと視点が変わりませんか?
自分と共同体が共に幸せになるための意思決定をする第一歩として、COLOR Againのワークショップを活用してもらえたら幸いです」(伊藤さん)
自分の感性を改めて見つめ、自分は何ができて、何がしたいのかを発見する、貴重なきっかけとなるに違いない。
※ MASHING UPでは、2023年7月5日(水)にCOLOR Againのワークショップを開催します。詳細は決まり次第お知らせします。
撮影/中山実華
MASHING UP SUMMIT 2023
COLOR Againワークショップ 自分の色を取り戻そう。多様性あふれる組織に、なぜ感性が必要か
伊藤真愛美(エフアイシーシープロデューサー)、田中寿典(モーンガータ代表取締役)、HIKOKONAMI(サウンドセラピスト/Freakin’Calm代表取締役)
MASHING UPより転載(2023年5月17日公開)
(文・取材)MASHING UP
MASHING UP:MASHING UP=インクルーシブな未来を拓く、メディア&コミュニティ。イベントやメディアを通じ、性別、業種、世代、国籍を超え多彩な人々と対話を深め、これからの社会や組織のかたち、未来のビジネスを考えていきます。