新NISAでは「インサイダー取引」に要注意! 必ず発覚する仕組みとその後の顛末

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インサイダー取引は他人事ではない。そして、必ず発覚する。

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  • 新NISAの運用開始によって、個別株投資がさらに広まるだろう。
  • その際に、誰であっても気をつけなくてはいけないのが「インサイダー取引」である。
  • インサイダー取引は必ず発覚する。そしてメリットはなく、失うものが大きすぎるのだ。

新NISAが2024年から始まる。すると「個別株投資」に取り組む人も増えるだろう。大幅に増えた限度額と恒久化された期間が、個人投資家の市場参入を後押しするからだ。

その際に気をつけなければいけないのが「インサイダー取引」である。

「インサイダー取引は、自分には関係ない」と考える人も多いかもしれないが、それは大間違いだ。というのも、市場での取引は日々厳しく監視されている。著名人だけでなく、個人投資家の取引も同様にだ。

そこで今回は、インサイダー取引について、簡単にまとめたいと思う。新NISAで個別株投資を検討している人は、ぜひ今からチェックしておいてもらいたい。

インサイダー取引とは

インサイダー取引は、金融商品取引法で違法とされている有価証券の取引だ。具体的には、「規制の対象になる有価証券についての『重要事実』を会社関係者が知った場合、その事実が公表される前にその有価証券を取引してはならない」とするルールを犯した行為である。

インサイダー取引が規制される理由は、株式市場における公正性の高い取引を保つためだ。共通のルールで行われている証券取引で一部の者がイカサマをしていれば、「それなら自分はやりたくない」「結局一部のメンバーが得をするだけだ」などの声が、あちこちから上がるのは想像に難くないだろう。

インサイダー取引の具体例

インサイダー取引の分かりやすい例として、一昔前なら村上ファンドによるTOB(株式公開買い付け)などに関する未公開情報を用いたインサイダー取引が挙げられる。これは、インサイダーにならないと思って行った行為が、実際にはインサイダーと判定された事案だ。

これは、まさにプロが当事者になっている話なので、自分には関係ないと思う人もいるだろう。しかしこの事件で教訓とすべきは、「インサイダー取引はプロでも判定が難しい」ということだ。だからこそ、一般投資家であれば明らかにインサイダーに該当する取引だけでなく、該当するか微妙な取引も避けなければならないのである。

また直近では、企業の株主対応支援を手掛けるアイ・アールジャパンホールディングス株を巡るインサイダー取引が記憶に新しい。これは、売上高の従来予想が下回るという情報が公表される前に、役員が損失回避目的で同社株を知人に売るよう勧めた疑いがある事案で、現在も捜査が継続中である。

「上場会社の役員だから厳しくマークされて偶然発覚しただけだろう」「ちょっとくらい情報を漏らしても大丈夫だろう」と高を括ってはいけない。インサイダー取引は必ず発覚する

インサイダー取引はなぜ発覚する?

インサイダー取引が発覚する要因は2つある。1つ目は内部告発、2つ目は証券取引所による監視だ。内部告発は最近制度を整えてきている企業もあるが、活用は十分とは言えない。しかし、監視については相当細かい部分も含めてチェックされており、手の込んだ手口でもインサイダーが発覚している。

この監視では、株式発行、倒産、合併、決算に関する情報など、投資者の投資判断に重大な影響を与える会社情報(重要事実)が公表された全ての銘柄の売買動向等を日々分析している。誰であっても、当該情報の発表直前に株式取引をした場合、必ずチェックされると考えた方がよい。

そして、インサイダー取引と疑われる取引については全て、証券取引等監視委員会に報告される。取引調査の結果、違反行為が認められた場合は、金融庁長官等に対して課徴金納付命令を発出するよう勧告される。

証券取引等監視委員会とはどんな機関か?

証券取引等監視委員会は、金融庁に設置された、証券市場の公正性・透明性の確保や投資者の保護などを使命とする機関である。

2020年にテレビドラマとして放送された半沢直樹をご覧になった方は多いのではないかと思う。当該ドラマでは、東京中央銀行から子会社の東京セントラル証券に出向した半沢が、証券取引等監視委員会の厳しい検査を受けるシーンがあった。これはフィクションではあるものの、実際にも証券会社は厳しい監査を受けている。

そしてこれは、一般個人に対してであっても同様だ。インサイダー取引を疑われる事案があれば、誰であっても証券取引等監視委員会に厳しくチェックされる。

これは、借名口座を利用するなど、手の込んだ手口であっても同様だ。証券取引等監視委員会の公表資料には、仮に借名口座を利用した不公正取引が行われた場合であっても、幅広い調査及び分析によって真の取引者を容易に把握することが可能であり、不自然な取引が見逃されることはない旨が明記されている。この場合、自分だけでなく友人知人もしくは家族までが、証券取引等監視委員会による厳しい調査を受けることになるだろう。

インサイダー取引が発覚したらどうなる?

それでは、インサイダー取引が発覚したらどうなるのだろうか? 制裁には法令等によるものもあれば、それ以外のものもある。以下の通り、主に4つの観点に大別できる。

刑事罰および課徴金による制裁:個人の場合、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金が科せられ、またはこれらの併科となる。さらに、インサイダー取引によって得た財産については没収される。それとは別途、行政罰として違反者に課徴金が課される。経済的にあえてインサイダー取引を犯すインセンティブはない。

民事責任による制裁:インサイダー取引をしてしまうと、所属している会社および取引企業にも甚大な影響が及ぶ。その責任を民事で追及される可能性もないとは言えない。

社会による制裁:見落とされがちなのが社会的制裁である。インサイダー取引を犯すと退職を余儀なくされる。また、ネット上に個人情報が晒される恐れもある。SNSには個人情報を探索する特定班と呼ばれる人物がおり、コンプライアンス違反を犯すと制裁としてSNSに当該人物の個人情報が晒すことがある。インサイダー取引でも同様のことが発生することがないとは言えない。

まとめ

新NISAを活用して積極的に個別株へ投資をしていきたいと考えている人は少なくないだろう。ただインサイダー取引に注意をして実践をしないと多くのものを失うことになりかねない。株式投資をするのであれば、インサイダー取引を他人事と考えてはいけないのだ。

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