ZOZOUSEDのECサイト。ZOZOTOWNの一次流通と同じプラットフォーム上で商品を扱うのが特徴だ。
ウェブサイトより編集部キャプチャ
今や6000以上のブランド、60万点以上の商品を扱うブランド古着を扱うECサービスのZOZOUSED(ゾゾユーズド)。2022年11月にサービス開始10周年を迎えた同サービスが、ここ2年で復調している。
2022年度は取扱高が160億円を超え、前年比で19.3%と伸長した。
SDGsへの意識の高まりや、フリマアプリの浸透などによって古着の市場は拡大しているが、コロナ禍を経ての復調は環境だけが理由ではない。前身のクラウンジュエル※時代からZOZOUSEDに関わる、ZOZOマーケティング本部USED事業部ディレクターの島村龍也さんに話を聞いた。
※ZOZOUSEDは、スタートトゥディ(現ZOZO)の連結子会社となったクラウンジュエル(当時)が開設した。
ZOZOのスケールメリットを生かしたデータ活用
島村龍也さん。青山学院大学卒業後、2010年クラウンジュエルに入社。2019年の株式会社ZOZOへの吸収合併以降は、ZOZOUSED事業全体を統括する。
撮影:荒幡温子
「データ活用がうまく機能し始めたことが大きいです。膨大な消費データを活用し、価格設定にAIをうまく導入することができました。価格設定はZOZOUSEDのビジネスのコアの部分だと思っています」
島村さんは、この2年のZOZOUSEDの好調についてこう話す。
ZOZOUSEDでは、年間購入者数が1000万人を超えるZOZOTOWNが持つ豊富なデータを活用した販売戦略を進めてきた。特に価格設定は、島村さんが指摘するように古着販売のビジネスで重要な部分だ。ZOZOUSEDでは仕入れから販売までの各プロセスにAIを導入している。
例えば、値付け時には出品時に売れやすく、かつ薄利にならない最適な販売価格をAIが予測する。この独自の価格予測システムは2018年から採用。下取り価格が25~35%アップすることにつながった。
加えて、出品して即日売れる確率を商品ごとに予測し、値付けに活用。即売れする確率を元に価格を調整して出品することで、消化速度(売れるまでの時間)を損なわずに販売単価や下取り単価の増加につなげる。季節性の高い商品は出品の最適化にも配慮する。気象情報や過去の実績から需要を予測し、出品する時期や点数を調整している。
「精度の高い価格・需要予測ができると無駄なコストの圧縮につながり、お客様に下取り価格の増加という形で還元できます。お客様に『また使おう』『これも売ろう』と思っていただくことで、リピーターや新規顧客が増えていきます。さらにそれらのデータを活用することで、価格や需要予測の精度を上げていけるという好循環につながっています」(島村さん)
ZOZOTOWNの年間購入者数は約1100万人(2022年度)で、年々増加している。このスケールメリットを利用して、ZOZOUSEDを共に成長させてきた。
効率化目指し宅配買取を廃止
ZOZOUSEDの売り上げ推移。
決算資料をもとに作成
こうしたデータ活用が効率的に進んだ背景には、商品の仕入れ方法のうち「宅配買取サービス」を廃止し、「買い替え割」に一本化した2019年の決断がある。
「買い替え割」は、商品を購入する際、過去にZOZOTOWNで購入した商品から「下取りに出したいアイテム」を選ぶと、その場で下取り金額分を割引してくれるZOZOUSEDならではのサービスだ。
ユーザーからどのような衣類が送られてくるか事前に分からない「宅配買取サービス」をやめ、「買い替え割」のみとすることで、ZOZOUSEDではZOZOTOWN内で販売実績がある商品が並ぶ割合が増えた。島村さんはこの決断を「ドラスティックな意思決定だった」と振り返る。
「『買い替え割』というZOZOならではの価値や機能を最大化しようという中での判断でした。宅配買取サービスは自宅にキットが届いて、荷物を発送して、査定を待って……と、お客様に価値を提供できるまでのリードタイムが長い。一方で、『買い替え割』はZOZOTOWN内で購入した商品を手放すことで割引を得られるサービスなので、すぐに割引という価値を提供できますし、それが次の購買行動にもつながります。
ZOZOTOWNで購入された商品の割合が高くなることで、より踏み込んだデータ活用が可能になり、結果として値付けの改善が進みました。買い替え割への一本化の直後にコロナ禍がありダメージは受けましたが、当時の意思決定がしっかりと今の事業成長を生んでいます」
現在、ZOZOUSEDの約7割の商品が一度ZOZOTOWNで販売された商品の下取り品。残りの3割は、買い替え割でユーザーが下取りに出す際に、同梱して送られてくる不要な衣類の一部だという。「買い替え割」「いつでも買い替え割」を通じて、これまでに累計2000万点以上のアイテムを循環させている。
「売る体験」を「買う体験」に変える
島村龍也さん。クラウンジュエルには大学在学中からアルバイトとして関わってきた。
撮影:荒幡温子
ZOZOUSED成長の軸ともいえる「買い替え割」はもともと、サービス開始当時にあった課題を解決するために生まれた。
「今でこそ売るという行為は当たり前になっていますが、10年前はまだ手放すことのハードルが高かった。それはZOZOTOWNというプラットフォームをもってしても大きく変わらず、売るという行為をどう根付かせていくかは当初からずっと課題に感じていました。その中で生まれたのが『買い替え割』です。
服を『売る』ではなく、『商品をお得に買える』という体験に『売る』行為を付帯させたアイデアでした」
現在はフリマアプリなども普及し、着なくなった服を売ることや古着を買うことは世の中に浸透してきた。
大学時代から古着販売に携わり続けてきた島村さんは、この10年の変化について
「昔は古着というと難易度が高そうなイメージや、逆に新品を買えない人が求めやすいから買うんでしょ、というイメージが結構あったと思うんです。でも、最近は二分されていた古着と新品の市場がどんどん混ざってきているように感じます。お客様の気持ちよい購買行動の選択肢に、古着が根付いてきているということは、今の時代の流れの中ですごく感じています」
と話す。
「実際にZOZOUSEDを使ってくださるお客様も、ZOZOTOWNの利用者と全然変わらないんです。ZOZOTOWNのお客様の中の一定のボリュームが古着を買ってくださっていることで、ZOZOUSEDも成長しています。特定の年代が増えているというよりは、本当に満遍なく増えている印象です」
ユニクロがリペアサービスを国内で本格導入するなど、最近ではリペアやアップサイクルといった取り組みも注目されている。10周年を迎えたZOZOUSEDは、そういった新たな領域に展開せず、今後もこれまでの「循環型ファッション」を成長させていく考えだ。
「リサイクルやリペアのサービスが増えてきていることは、ファッションを楽しむ選択肢が広がっている良いことだと感じています。その中のいちポジションとして、私たちはリユースという領域に取り組んでいます。特にこのZOZOというプラットフォームの中で、新品も売り、回収して再販するという循環型ファッションは私たちが提供している強み。ここをしっかりとぶらさずに伸ばしていきたい」