オラクルのラリー・エリソン会長兼CTO(左)は、イーロン・マスクがツイッターを買収する際に資金援助もしているが……。
Oracle; Kiichiro Sato/Associated Press
イーロン・マスク(Elon Musk)にとって、オラクル(Oracle)会長兼CTOのラリー・エリソン(Larry Ellison)は親友であり、ツイッター(Twitter)買収時に資金援助を申し出てくれた人物でもある。だがそのエリソンでさえ、ツイッターのオーナー(つまりマスク)による請求書や諸経費の支払い拒否と無縁ではいられない。
オラクルをよく知る2人の関係者によると、同社がツイッターに提供したサービスの対価が、数カ月にわたり未払いになっているという。オラクルの担当者たちは、6桁(数十万ドル規模)にも及ぶ未収金を回収しようと、ツイッターの現社員や元社員に直接電話をかけ始めたという。オラクルは数年にわたり、ツイッターに対してデータストレージサービスを提供してきたと、この関係者の1人は話す。
恩を仇で返す
2022年10月末にツイッターを買収したマスクはここ数カ月間、多数の企業やベンダーへの支払いを拒否してきた。クラウドサービスのグーグル(Google)やアマゾン(Amazon)、PR会社のほか、アメリカ、ヨーロッパ、アジアでツイッターのオフィスが入居しているビルオーナーしかりだ。
マスクがエリソンと個人的にも金銭的にも親密な関係にあることを考えれば、オラクルへの代金不払いとはなんとも驚く話だ。
エリソンとマスクは長年の友人だ。エリソンはマスクが440億ドル(当時のレートで約6兆4000億円)かけたツイッターの買収に10億ドル(同約1450億円)を出資しており、マスクのツイッター(正式にはXホールディングス〔X Holdings Co.〕の一部)の最大の投資家の1人である。
エリソンはこれまでもことあるごとにマスクを熱心に支持してきたし、以前はマスクが経営するEV企業テスラ(Tesla)の役員も務めていた。
ニューヨーク・タイムズ(New York Times)の報道によれば、マスクは時に交渉戦術として露骨な支払い拒否という手段を用いることがある。結果として成功することもあれば、失敗することもあった。
グーグルは、ツイッターとの契約条件の再交渉を終えたばかりだ。一方、ツイッターとマスクは現在、未払金の支払いを求めるビルオーナーら業者が起こした複数の訴訟に直面している。
複数の訴訟に直面
債権者の数は多数にのぼるため、マスクは現在、ツイッターが強制破産に追い込まれるリスクを負っている。比較的まれなケースではあるが、ツイッターの債権者が3者以上団結すれば、判事に提訴し、支払いを拒否している同社をチャプター7(日本の破産法に相当)またはチャプター11(日本の民事再生法に相当)の破産手続きにかけることを要求できる。その後、判事が破産手続きを進めるかどうかを決定する。
ツイッター買収をめぐっては、買収完了に先立ちディールから手を引こうとするマスクとツイッターとの間で劇的な攻防があったが、この過程でエリソンはマスクに助言していた可能性がある。
エリソンに対しては、マスクに合意した価格での買収を強制しようとするツイッターの訴訟に関する召喚状が送られている。マスクは2022年秋、裁判になる直前にこの訴訟に見切りをつけ、ツイッターの買収を完了した。
マスクはそれ以降、ツイッターの社員を90%削減し、手当やボーナス、多くの福利厚生を廃止してきた。また彼は、ツイッターの収入源の大半は広告収入であるにもかかわらず、広告主も怖がらせて遠ざけてしまった。
現在、NBCUの広告責任者からツイッターの新CEOに就任したばかりのリンダ・ヤッカリーノ(Linda Yaccarino)が同社の広告事業の立て直しに乗り出している。マスクはCEOの肩書きを返上したものの、現在もツイッターの技術、プロダクト、エンジニアリングのすべてを管掌している。
なおマスクは、コストを削減したりベンダーへの支払いを拒否したりしているにもかかわらず、新たなAIプロジェクトの下準備に何百万ドルも費やしているほか、現在はツイッターの動画機能を強化しようとしている。
本件に関してツイッターとオラクルの担当者にコメントを求めたが、回答は得られなかった。
編集部より:初出時、ラリー・エリソン氏の肩書に一部誤りがありました。お詫びして訂正いたします。 2023年6月23日 14:45