災害の増加とコストの上昇で… アメリカでは一部地域で保険会社の撤退が相次いでいる

山林火災

マーシャル火災で被害を受ける住宅や店(2021年12月、コロラド州ボルダー郊外)。

Getty Images

  • アメリカでは、山火事やハリケーンといった災害の多い州の住宅所有者は保険に加入できなくなる危険性がある。
  • カリフォルニア州やフロリダ州などでは新規契約を停止する保険会社も出てきた。
  • 2021年の山林火災で大きな被害を受けたコロラド州は、そのような状況になるのを避けようと取り組んでいる。

西海岸やガルフコーストに移り住むアメリカ人は、保険に加入できなくなる危険性がある。

アメリカのカリフォルニア州、コロラド州、フロリダ州、ルイジアナ州、テキサス州では山火事、ハリケーン、その他の気候変動に起因する大規模災害が増加し、建築資材の高騰と相まって損害保険会社を圧迫している。中にはこうした地域から完全に手を引く保険会社もある。

「わたしたちは今、最悪の市場環境にあります」とコロラド州、ニューメキシコ州、ユタ州、ワイオミング州の損害保険会社を代表するロッキーマウンテン・インシュランス・アソシエーションのエグゼクティブダイレクター、キャロル・ウォーカー(Carole Walker)氏はInsiderに語った。

「大災害リスクの増大、歴史的なインフレ、家屋の復旧および再建コストの上昇に直面しています」

5月にはステートファーム保険が自然災害リスクの高まりと建設費の高騰を理由に、カリフォルニア州での住宅所有者および事業主の新規保険契約を停止すると発表した。保険業界は顧客に請求できる金額を制限しているカリフォルニア州の法律も非難している。再保険のコストを転嫁したり、将来の気候リスクに基づいた保険料を設定することができないという。

2021年の時点でステートファーム保険はカリフォルニア州最大の損害保険会社で、市場の約20%を占めていた。オールステート保険も2022年、カリフォルニア州で新規契約を一時停止している。

「カリフォルニア州は"教訓"で、コロラド州は今が転換点だと思います」とウォーカー氏は指摘した。

コロラド州保険局の調査によると、コロラド州では保険会社の4分の3が2021年から2022年にかけて住宅所有者の契約数を減らした一方で、保険料は2019年以降平均して52%上がった。この傾向は山火事の被害に関係なく州全体で見られたが、リスクの高い地域では保険料が「やや高かった」という。コロラド州の人口の半数以上がこうした地域で暮らしている。

コロラド州もカリフォルニア州も近年、大規模な山林火災やその甚大な被害と戦ってきた。カリフォルニア州史上最大規模の山林火災の多くはここ5年以内に発生していて、コロラド州で最も被害の大きかった山火事は2021年に発生したものだ。

コロラド州では新しい法律で、民間の保険に加入できない住民の最後の砦となる「FAIRプラン」という州営の保険会社が設立された。カリフォルニア州、ルイジアナ州、フロリダ州といった数十州が同様の制度を用意している。ただ、こうした制度は「誰もが選ぶ保険会社」になるべきではないとウォーカー氏は指摘する。1回の大きな災害が市場全体を危うくするのを避けるには、リスクを分散させる必要があるからだ。

フロリダ州では企業が市場から撤退したため、州営のシチズンズ・プロパティ・インシュランス・コーポレーションが一番の保険会社になっているとアメリカ保険情報協会(III)の広報担当マーク・フリードランダー(Mark Friedlander)氏はInsiderに話している。

フリードランダー氏によると、フロリダ州では2022年2月以降、少なくとも民間企業7社が破綻、15社が新規契約を停止、3社が自主的にフロリダ州から撤退した。フロリダの平均的な住宅所有者は年間約6000ドル(約86万円)の保険料を支払っていて、この3年で2倍になった。

ただ、その主な原因はハリケーン「イアン」ではない。損害保険訴訟に関する州の法律が緩く、訴訟費用が保険会社に重くのしかかったからだ。このルールは最近、ロン・デサンティス知事の下で変更されたものの、フリードランダー氏はフロリダの保険市場がすぐに改善するとは考えていない。

「ハリケーンのシーズンが戻ってくると、困ったことになる」と同氏は語った。

人間の活動によって悪化した気候変動の影響で大気や海の温度が上がると、ハリケーンは水蒸気を増し、より破壊的な雨を降らせることを研究は示している。一方で、アメリカ西部の干ばつは山火事のシーズンをより長く、より活発にしている

保険情報協会(III)の分析によると、損害保険会社は災害リスクの高まりだけでなく、インフレ率を上回る建設費の高騰にも直面している。2019年から2022年にかけて、建て替えや交換にかかる費用は55%増えた。業者の人件費も大規模な自然災害の後には、需要の高まりによって大きく上がる。これは2022年9月にハリケーン「イアン」が上陸した後、フロリダ州が経験したことだ。

「請求件数が急増しているだけでなく、その支払額も急激に増えている」とウォーカー氏は話している。

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