Reuters / Lucas Jackson
クオンツ運用を行う他の企業とは異なり、Qraft Technologiesのモデルはある意味で生きている。
Qraftのモデルは設定された重み付けで変数を差し込み、必要だと判断したときに人間が調整するのではなく、人工知能(AI)を使って変数の重要度をリアルタイムで自ら更新する。
2023年、同社のアプローチは功を奏している。同社のQraft AI-Enhanced US Large Cap Momentum ETF(AMOM)は17%上昇し、S&P500の14%を上回る成績を収めている。
Qraft社のアジア太平洋地域CEO、フランシス・オー(Francis Oh)氏は同社の戦略について次のように語っている。
「2020年以降、新型コロナウイルスのパンデミックでさまざまなことが変化し、以前は機能していた市場戦略の多くが機能しなくなり、市場の舵を取るには新たなツールが必要になった。だから、AIには価値があると信じている」
しかし機関投資家にとって、ましてや個人投資家にとっては銘柄選別のためのAIモデルを開発するのは至難の業だとオー氏は言う。ChatGPTのようなツールを使っても、株式の選択に関して素晴らしく有用な答えは得られない。
例えば、ChatGPTに「今買うべき最高の銘柄は何か」という質問を投げかけてみると、 「AI言語モデルなので、リアルタイムの金融アドバイスや将来の株価パフォーマンスを予測することはできません」との回答だった。また、そのアドバイスは、投資を分散してファンダメンタル的に健全な企業を検討するようにというかなり一般的なものだった。
グーグル(Google)の対話型AI「バード(Bard)」は、アップル(Apple)、エヌビディア(Nvidia)、そしてグーグルを含む8つを選んだ。そして、財務的なアドバイスをしているわけではなく、投資する前に自分で調べるべきだと付け加えた。
AIの銘柄選択能力を活用する簡単な方法
Qraftのようなファンドに直接投資する以外に、投資家がAI主導型銘柄選択モデルの力を活用できる簡単な方法の一つは、AIに裏付けされた上場投資信託(ETF)のトップ銘柄を継続的に見ることだとオー氏は言う。
QraftのAMOMに加え、AI Powered Equity ETF(AIEQ)やBTD Capital Fund(DIP)などのファンドも、AIモデルを利用して保有銘柄を選んでいる。
- 例えば、3月31日現在のAIEQの上位保有銘柄には、アファーム・ホールディングス(AFRM)、バーテックス・ファーマシューティカルズ(VRTX)、ピンタレスト(PINS)、インテュイティブ・サージカル(ISRG)、ゲームストップ(GME)などがある。しかし、今後数週間のうちに行われる第2四半期の更新では、これらの保有銘柄は異なるものになる可能性が高い。
- DIPの上位5銘柄は、SPDR・S&P500 ETF(SPY)、 SPDRダウ工業株平均ETF(DIA)、ソーラーエッジ・テクノロジーズ(SEDG)、ダウ(DOW)、エンフェーズ・エナジー(ENPH)だ。
オー氏によると、QraftのAMOMが現在保有する上位2銘柄は、アマゾン・ドットコム(AMZN)とメタ・プラットフォームズ(META)だという。一方、同ファンドが主に利益を得ているのはアップル(AAPL)とエヌビディア(NVDA)で、後者は年初来で200%、先月だけで40%上昇している。
アマゾンとメタを選んだのはAIだが、オー氏は、これらは堅実なファンダメンタルズ分析に基づいていると言う。
アマゾンについて言えば、株価が下落する可能性があるものの、セーフ・ヘブン(安全な避難先の意)と見なされている。また、消費市場と労働市場が依然として堅調であることも好材料になっている、と同氏は言う。
「アマゾンはアメリカ人の消費活動に密接に関連している。そして、アメリカの雇用市場は今、非常に堅調だ」
メタについては、AI分野のリーダーのひとつであり、AIブームに対して有利な立場にあると述べた。また、同社のVRヘッドセットであるMeta Questは、アップルのVision Proよりもはるかに安い価格帯であり、市場浸透に有利な立場にあると指摘した。
しかし、アップルがバーチャルリアリティ分野で存在感を示すことで、両社はより迅速な技術革新とVRヘッドセットのユースケースの改善に取り組むことになるだろう。