なぜ「期待の若手」が辞めてしまうのか?必要なのは“もやもや”を共有できる関係性

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期待している若手に限って離職してしまう……。そんな現実に頭を悩ませる上司は少なくない。

撮影:今村拓馬

経験を積んで、知識も技術も十分。周囲からの信頼も獲得している。会社や組織の方針に対しても前向きに取り組んでいる。これからもっと重要な仕事を任せたい—。

そのような「期待の若手」に限って、相談する余地もないほど固い意志で離職を切り出してくる。

若い人はなぜ辞めてしまうのか。どうすれば今の職場でその意欲や能力を発揮してくれるのか。

本稿では、現場を支えるマネジャーがこのような問題に向き合うときの切り口や解決策の例を考えてみたい。

若手の離職は「やる気がない」のではない

一般的に、若手は中堅やベテランと比較して離職率が高い。

例えば令和3年雇用動向調査によると、男性の離職率は25~29歳で19.6%であるのに対し、40~44歳では7.4%だった。また女性でも25~29歳の離職率は19.2%だったのに対して、40~44歳では10.7%と同じ傾向だった。なぜ若手は辞めやすいのか。やる気や忍耐力の問題だろうか。

グラフ

若い世代ほど離職率が高い傾向がある。

出典:厚生労働省「令和 3年雇用動向調査」

筆者はそうは考えない。

多くの若者が挑戦したい、誰かの役に立ちたいと思って組織に参入しており、元々意欲が低いという結論は想定しにくい。

また会社を辞めることや転職先を探すことには大きなエネルギーが必要であり、本当にやる気がないのであれば、組織に残りつつ頑張らないという選択をする方が短期で見れば合理的である。つまり辞めていく若手は、「会社を去る」ことに多くのエネルギーを使っているとも言える。

若手は辞めやすいと思考停止するのではなく、「辞める」選択をしてしまった若手に、今の職場でそのエネルギーを使ってもらうには何が必要だったのか、きちんと向き合うことが重要であろう。

辞めやすい若手には「創造的な態度」がある

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「創造的な態度」と離職意向の関係を考えてみたい。

撮影:今村拓馬

やる気の問題でないとすれば、どのような若者が辞める意向を持ちやすいのだろうか。

ここで改めて考えたいのが、「難しいと思うことほどやってみたくなる」など、企業が変革の担い手として期待する「創造的な態度」のある若手ほど離職意向が高いという問題だ。

以下の図1は、若手社員の「創造的態度と離職意向の関係」だ。

リクルートワークス研究所が2022年11月、職場における創造性発揮の状況や人間関係の実態を把握するために行った調査がある。ここでは正社員として働く25歳から34歳に限定して分析を行った(サンプルサイズ 334)。

この調査では「創造的態度」を測るため、「解けないような問題ほど、解いてみたくなる」「好きなことや、やりたいことがいっぱいある」などの項目について1~5点で評価してもらい、その得点で高・中・低の3グループに分けた。

その上で離職意向について「今の職場を1年以内にやめたいと思っている」という項目に1~5点で答えてもらい、創造的態度のグループごとに平均点を算出した。

この調査からは、創造的態度の高い若手ほど離職意向が強い傾向があるように見える。

筆者は以前あるマネジメント層の方から、「ニンジンをぶらさげておかないと、自らニンジンを探しに行く人もいる」という話を聞いたことがある。

「ニンジン」という表現が適切かは分からないが、「自分の好きなことや実現したいことがある人には、活躍の場を用意しないといけない」と意図していたようである。このデータは、その発言を裏付けるような結果を示している。

尖った人はなぜやめてしまうのか?

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有望な若手の離職については、職場での「関係性」がカギになる。

撮影:今村拓馬

日本経済団体連合会が会員企業に実施した調査(※)では、大卒者に特に期待する能力の第3位として「創造力」が挙げられていた。日本企業では、組織に必要な創造性を「採用」という手段で個人に求めてきたといえる。

しかしながら、「とがった人材を採用しても会社になじめず辞めてしまう」といった話が聞こえてくることがあるように、結果的にはうまくいかず会社を去ってしまう人も多い。

では、創造的な若手が辞めずに、今の職場で力を発揮するには何が必要だろうか。結論としては「関係性」がそのカギになると筆者は考える。

筆者が参加したリクルートワークス研究所の「創造性を引き出しあう職場の研究」プロジェクトでは、職場にいる人たちが互いに意見を出しあい、誰かの小さなアイディアや思いつきを育てることによって創造性が発揮されるというさまざまな実例に触れてきた。

ここで重要なのは、関係性が希薄な職場では、創造性を発揮したい若手が孤独を感じやすいということである。

※日本経済団体連合会(2022)採用と大学改革への期待に関するアンケート結果「採用の観点から、大卒者に特に期待する資質・能力・知識」

「もやもやの共有」で離職は減る?

図2は、図1で示した創造的態度と離職意向の関係を、「もやもやの共有」スコアの低群、高群に分けて確認したものである。

「もやもやの共有」は、「仕事をする上で、気になることをお互いに話しあう」「仕事や職場の問題について、自分ならどうするか、互いの意見を言い合う」などの仕事や職場の「気になりごと」や「違和感」に関する項目への回答をまとめたものである。

ここから分かるのはもやもやの共有ができている職場であるほど、創造的な若手の離職意向が高まりにくいということだ。

実際、「もやもやの共有」が低い場合(図の左側)、創造的態度が高いほど離職意向が高い傾向がはっきり見て取れる。

このような職場では、新しいことに挑戦する機会や、仕事や職場を良くしていく機会が生まれにくく、創造的な若手は活躍の場を社外に求めることが多くなるのだろう。

一方「もやもやの共有」が高い職場では、一人ひとりが感じた違和感をフラットに言い合うことができているはずだ。仕事や職場を良くしていく経験を多く積むことになり、創造的態度の高い個人はそこで働く意義を見出すことができるといえる。

結局のところ、どれだけ創造性の高い個人を採用し、それらの人に期待したとしても、関係性次第でよく転がることも、悪く転がることもある、ということである。

上司から「なんか変」を始めてみる

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「なんか変じゃないですか?」と言える関係が大事になる。

撮影:今村拓馬

「もやもやの共有」の中で会話されるのは、日常の小さな違和感である。考え、磨き抜かれた課題である必要はない。

ただ、「うちの会社のここがダメ」といった諦めや愚痴ではいけない。

シンプルにいえば「なんか変じゃないですか?」ということを年齢も立場も関係なく気軽に言いあえるような関係が重要であることだ。

この「なんか変」を大切にしながら、不平不満ではなく、名づけることも難しい「もやもや」を気軽に出せるような職場をつくっていくことが、若い人に創造性を発揮してもらうカギになるかもしれない。

とはいえこれは、若い人にとっては勇気が必要なことでもある。

そこで第1歩目として、例えば以下のようなことについて、上司から職場で行動してみることを提案したい。

  • 事業部で共有された戦略や方針で疑問に思ったことについて、「部長が言ってたあれ、どう思った?」と部下に尋ねてみる
  • 職場の非効率な仕事について、「これめんどうだよね」とつぶやいてみる
  • 普段忙しくて手がつけられていないが、実は試してみたいことや進めてみたい仕事についてアイディアを求めてみる

まずは上司である自分から、仕事や会社に対する「なんか変」をめぐった会話をしてみることから始めてはどうだろか。

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