人工知能(AI)分野への投資熱が高まっている。出遅れた…と諦めかけている投資家にも、バンク・オブ・アメリカ(Bank of America)によれば、どうやらまだチャンスはあるようだ。
NanoStockk/Getty Images
景気後退入りの懸念や株式市場に対する悲観的な予測が繰り返し語られる中でも、巨大テック銘柄の記録的な快進撃が続いている。
6月23日(終値)時点で、S&P500種株価指数の年初来リターンは13.71%、ハイテク株比率の高いナスダック総合株価指数は同29.90%となっている。
上昇幅の大半はいずれも、人工知能(AI)の進化とそれに伴うブームの恩恵を受ける巨大テック銘柄の値上がりによるものだ。
各銘柄の年初来リターンは、エヌビディア(Nvidia)が194.86%、メタ・プラットフォームズ(Meta Platforms)が131.47%、マイクロソフト(Microsoft)は39.84%、さらにグーグル(Google)が37.28%となっている。
AIブームの大波に乗るチャンスを逃したと感じている投資家もいることだろう。
しかし、米銀大手バンク・オブ・アメリカ(バンカメ、Bank of America)によれば、諦めるにはまだまだ早い。
グローバルAIソフトウェア市場は、2023年の6000億ドル弱から2026年には9000億ドル規模まで拡大するというのが同行の見立てだ。
全く新しいコンテンツやデータを生み出すジェネレーティブ(生成)AIの登場により、ハードウェアへの需要は今後5年間で加速していくだろう。
対話型AI「ChatGPT(チャットジーピーティー)」のような生成AIは、従来の検索エンジンとは仕組みが異なる。その能力を拡張するには、機械学習プロセスのスピードアップを実現する特殊なハードウェアが大量に必要となる。
今後、大手クラウドプロバイダーが生成AIの自社データセンターへの統合に着手すると、ネットワーク用半導体などの製品需要が一気に増える展開が予想される。
バンカメのシニアアナリスト、ビベック・アルヤ氏の顧客向けレポート(6月21日付)によれば、ネットワーキング用半導体チップの獲得可能な最大市場規模(TAM)は今後、年平均成長率(CAGR)40%という猛烈な勢いで拡大し、2027年には100億ドル規模に達する見込みだ(直近2022年のTAMは20億ドル)。
こうした需要拡大により、AI向けハードウェアで圧倒的なシェアを誇るエヌビディア以外にも勝ち組が出てくることになる。
例えば、ネットワーク技術の領域にその可能性がある。
生成AIモデルのスーパーコンピューティングでは、「InfiniBand(インフィニバンド)」「Ethernet(イーサネット)」という2種類のネットワーク技術が使われている。
現在はInfiniBandのほうが需要を獲得できているものの、今後はEthernetが逆転すると、バンカメは予測しているようだ。
Ethernetは、インターネットの有線接続などですでに十分な実績がある。また、AIサーバーのフロントエンドとバックエンドの両方に使用できる汎用性がある。InfiniBandが使われるのはバックエンドのみだ。
バンカメは、100億ドル規模への成長を予測するネットワーキング用半導体チップの多くがEthernet規格となり、需要規模は現在の5億ドルから2027年には60億ドルへと拡大すると見る。
ただし、InfiniBand規格の需要規模も現在の15億ドルから40億ドルへと倍以上に増える。2022年時点では、半導体チップ20億ドル市場のうちInfiniBand規格が75%を占めていることになる。
エヌビディアは2019年にInfiniBandソリューションおよび関連製品のベンダーであるイスラエルのメラノックス(Mellamox)を約70億ドルで買収。自社製品との最適化を進め、その唯一の主要プロバイダーとしての地位を確立することで先手を打った。
しかし、Ethernetが主導権を握るにつれ、ブロードコム(Broadcom)とマーベル・テクノロジー(Marvell Technology)が台頭してくるというのがバンカメの予測だ。
以下に、あらためてネットワーク用半導体チップを通じてAI時代の「勝ち組」となる3銘柄と、バンカメの設定した目標株価を紹介しよう。
エヌビディア(Nvidia)
Markets Insider
【目標株価】500ドル
【理由】ネットワーキングソリューションに関して、InfiniBandとEthernetの両方の選択肢を用意する主要プロバイダー。
ブロードコム(Broadcom)
Markets Insider
【目標株価】1050ドル
【理由】「Jericho3-AI」Ethernetスイッチ用チップはInfiniBandチップの競合になり得る。
マーベル・テクノロジー(Marvell Technology)
Markets Insider
【目標株価】75ドル
【理由】同社は、エレクトロオプティクス(電気光学)製品の売上高について、2021年の10億ドルから24年には倍増の20億ドルに成長するとの見通しを明らかにしている。