撮影:今村拓馬
2023年も間もなく半年が経過する。上半期には全部で42社の企業が新規上場(IPO)した。各社の時価総額から、「時価総額ランキング」としてまとめてみた。6月26日にグロース市場に上場したブリッジコンサルティンググループは、初値が付かず初日の取引を終えている。
以下の株価、時価総額は6月23日の終値ベースで掲載している。
2023年上半期IPO企業の「時価総額ランキング」1〜10位。価格は6月23日の終値ベースで掲載している。
作成:荒幡温子
2023年上半期IPO企業の「時価総額ランキング」 11〜20位。価格は6月23日の終値ベースで掲載している。
作成:荒幡温子
1位・2位には、インターネット専業銀行の楽天銀行と住信SBIネット銀行が名を連ねた。3位には、VTuber大手事務所カバーが躍り出た。生成AIの盛り上がりを受け、AI関連企業もトップ10入りしている。
1位 楽天銀行
楽天グループ傘下のインターネット専業銀行。2000年に前身のイーバンク銀行が設立、2009年に楽天の連結子会社となり、商号を現在の「楽天銀行」へ変更した。
2021年9月に上場準備を発表してから約1年半を経て、4月に親子上場となった。
2位 住信SBIネット銀行
三井住友信託銀行(設立当時は住友信託銀行)50%とSBIホールディングス50%の共同出資からなるインターネット専業銀行。
住信SBIネット銀行の沿革によると、1986年に「住信オフィスサービス株式会社」として、現在の三井住友信託銀行の事務を受託する完全子会社として設立された法人を源流としている。
楽天銀行に先駆け、3月に上場。インターネット銀行として国内初の上場となった。
3位 カバー
大手VTuber事務所「ホロライブプロダクション」を運営する。2016年設立。
2023年3月期の決算説明資料によると、2023年3月末現在、在籍数75人(3月末時点)のうち32人は登録者100万人を超えるという。海外進出にも力を入れ、日本だけでなく、東南アジア・北米で、VTuber登録者数1位の人気を誇るタレントを保有している。
2023年3月期の通期決算では、売上高は前年同期比49.7%増の204億円、純利益は101.6%増の25億800万円となった。
4位 ispace
2022年より、世界初の民間月面探査「HAKUTO-R」を実施し、月面探査や輸送事業を中心に宇宙開発を進める。2010年に前身となる合同会社ホワイトレーベルスペース・ジャパンを創業した。
宇宙関連スタートアップとしては、国内初の上場だ。4月の月面着陸(後に失敗)直前のタイミングでの上場には注目が集まった。公募価格が254円のところ、初値は1000円と4倍近くまで上昇した。
5位 日本管財ホールディングス
ビルメンテナンスなど建物管理事業をおこなう。3月31日で「日本管財株式会社」を完全子会社化する形で上場を廃止。持株会社「日本管財ホールディングス株式会社」設立で再上場した。
6位 ABEJA
パートナー企業のDXを独自のAIプラットフォーム「ABEJA Platform」などで支援する、デジタルプラットフォーム事業を展開する。
2012年の創業時から、AI技術を強みに製造業から小売業まで、300社以上のDX(デジタルトランスフォーメーション)を実現してきた。2021年にSOMPOホールディングス、ヒューリック、2014年にSalesforceと、それぞれ資本業務提携を締結した。2018年にはグーグルからも出資も受けている。
7位 トランザクション・メディア・ネットワークス
キャッシュレス決済関連のサービスを提供する。三菱商事とトヨタファイナンシャルサービスの共同出資で、2008年に設立された。
クラウド型電子決済サービスを国内で初めて商用化し、2023年3月末時点で、小売店舗において83万台が接続している。
8位 AnyMind Group
アジア13の国と地域で、企業やクリエイターのマーケティングやD2C支援を提供する「ブランドコマース事業」と、Webメディアやアプリを運営するパブリッシャーやインフルエンサーのプラットフォームの収益改善やブランド成長の支援を提供する「パートナーグロース事業」を展開する。2019年設立。
2022年3月、12月の2度の上場延期を経て、再々上場を果たした。
9位 Arent
建設業界を専門に、DXコンサルからシステム開発までをおこなう。
2012年、ソフトウェア受託開発会社として設立されたのちに、2020年、千代田化工建設と合弁会社「PlantStream」を設立し、建設業界に本格参入。2021年に、日清紡ホールディングスと共同出資でDX推進会社「VestOne」も設立する。
10位 モンスターラボホールディングス
世界20の国と地域でDXコンサル事業と、RPAツールや店舗向けオーダーシステム等のプロダクト事業を展開している。2006年設立。
過去には、政府系ファンド「JIC ベンチャー・グロース・インベストメンツ」から約30億円を資金調達を実施した。
11位 ハルメクホールディングス
シニア女性をターゲットとする定期購読誌「ハルメク」の出版事業を軸に、通信販売事業を展開する。
1989年に、前身となる編集プロダクション「ユーリーグ」を創業し、2018年に持ち株会社としてハルメクホールディングスを設立した。
日本ABC協会発行社レポート(2022年7月~12月)によれば女性誌販売部数はトップ、1月には定期購読者数が50万人を突破している。
12位 レオス・キャピタルワークス
「ひふみ信託」などを運用する、SBIグループ傘下の資産運用会社。2003年に独立系運用会社「レオン」としてスタートし、2020年SBIファイナンシャルサービシーズ(SBIホールディングスの子会社)の連結子会社となった。
2018年に上場を延期しており、今回は再上場となる。
13位 ジェノバ
GPSなどのGNSS(Global Navigation Satellite System)データの高精度配信サービスを提供する。ドローンやIT農業など注目分野で活用されている。
2002年に設立。2020年にKDDIと業務提携を締結し、2021年に日立産機システムと資本業務提携を締結した。
14位 Globee
AI英語学習アプリ「abceed」を運営する。人気の英語教材と連携し、ユーザーに最適な問題をAIがレコメンドするサービスで、累計登録者数は300万人(2022年12月)を突破した。2014年設立。
初値は、公募価格1150円の2.3倍に相当する2666円をつけた。
15位 ココルポート
障がい者の就職先選びや応募書類アドバイス、面接対策などの就労移行支援を一都一府六県(公式サイトより)で提供している。2012年設立。
2023年6月時点で、これまで3258名の就職者実績があるという。
16位 Ridge-i
企業向けにAIコンサルティングや開発を手がける。画像・音声・数値・文字などの複数データから判断する「マルチモーダルAI」をコア技術とする。
2006年に設立、2021年にオリックスと資本業務提携した。
これまで、NHKアートとの白黒映像の自動カラー化技術の共同開発や、船橋市で使用されているごみ識別AIの開発などの実績がある。
17位 プライム・ストラテジー
WordPressに特化し、高速で安定したCMS環境を提供する「KUSANAGI」を開発する。2002年設立。
2023年2月現在、KUSANAGIの累計稼動台数は7万台を突破している。
18位 アクシスコンサルティング
コンサルタントに特化したキャリア支援を提供する。2002年設立。
19位 Fusic
九州大学発、ソフトウェア開発や、AIやIoT技術を中心にDX事業を展開する。2003年に設立。福岡証券取引所Q-Boardにも同時上場となった。
20位 エキサイトホールディングス
XTechとして2018年に創業。「エキサイトニュース」などを運営するエキサイトを2018年に買収(※エキサイトは2004年より東証JASDAQスタンダード市場に上場していたものの、買収を機に上場廃止)する。
エキサイト時代を含めると、2018年以来、5年ぶり2度目の上場となる。
なお、6月27日には、エリッツホールディングス、クオリプスが上場。また月内には、プロディライト、ノイルイミューン・バイオテック(以上28日)、W TOKYO(29日)、ノバレーゼ、ジーデップ・アドバンス、クラダシ(以上、30日)の上場が予定されている。