撮影:美里茉奈
これまでずっと洗剤とスポンジを使って食器を洗い、手のカサつきに悩まされてきた。
そこで、スポンジ買い替えのタイミングで「びわこふきん」に替えることにした。洗剤を使わなくても汚れが落ちるというので、以前から気になっていたのだ。
すり減ったスポンジの破片は、下水や河川をつたってマイクロプラスチックとして海中に残り続ける可能性もあるという。プラスチック製のスポンジを使わずに洗えるならそれに越したことはない。
お湯と「びわこふきん」で洗剤なしでも「キュキュッ」
表面にある黒い粒は、原材料の木綿の実や葉っぱ、種などのかけら。自然の素材で作っていることが分かる。
撮影:美里茉奈
「びわこふきん」は、コットンの落ち綿を原料に「ガラ紡(がらぼう)」という日本独自の紡績方法で作られたふきんである。
写真の通り、デコボコした粗い繊維が特徴だ。このデコボコが油や汚れを取り込むことで、洗剤を使わなくてもキレイに落ちるという。
食器のベタベタも洗剤なしでスルッと落ちた。
撮影:美里茉奈
使い方はカンタン。ぬるま湯でお皿などについた汚れをふやかし、濡らしたびわこふきんでこするだけだ。
油や調味料などの汚れは、あらかじめヘラやハギレ、新聞紙などで拭き取っておく方が落ちやすい。水温が高い日は、水でも問題なく汚れが落ちた。
撮影:美里茉奈
軽くすすいだだけなのに、指でこすると「キュキュッ」と音がする。試しに飼い猫たちが使ったご飯の器も洗ってみたら、スポンジだと何回も洗わないと落ちなかったぬめりが1回で落ちた。
これまですすぎ時には、洗剤の洗い残しも気になって何度も洗い流していたが、びわこふきんを使えばさっと流すだけで済む。水の節約にもなりそうだ。
ふきんについた汚れは、お湯で洗えばサッと落ちる。
撮影:美里茉奈
洗剤を使用しないので、食器洗い後に手指がカサカサしないのも嬉しい。いつもは食器洗いのたびにハンドオイルやクリームをつけていたが、それらの使用量も減らすことができた。
煮沸消毒or洗濯は必要だが……
びわこふきんを鍋で煮沸消毒。
撮影:美里茉奈
スポンジと同様、びわこふきんも使用後に濡れたまま放置しておいたら雑菌が繁殖する。お手入れ方法は石けんで洗った後に煮洗いがおすすめだ。
とはいえ毎回煮洗いするのは手間なため、私は面倒な時は洗濯機で洗ったり、日中の使用後に雑菌が気になる時はコロナ禍で自宅に備蓄していたアルコールをスプレーして干したりしている。
流しのスペースが広く使えるようになった
スポンジを置く場所が減った分、流しが広く使えるようになった。
撮影:美里茉奈
びわこふきんを使うようになって、スポンジをやめた。その結果、スポンジの買い替えや置く場所によって生じるぬめりを気にしなくて良くなった。おかげで流しが広く清潔に使えるように。予想外に嬉しい効果も得られた。
洗剤の完全除去はまだ難しいが……かなりの分量を減らせた!
いざという時のために、洗剤は常備している。
撮影:美里茉奈
正直なところ、私はまだ完全に洗剤を除去できていない。お湯とびわこふきんだけでは汚れ落ちが難しいこともあるからだ。
そんな時は、薄めた洗剤を少しだけびわこひきんにつけて使っている。とはいえ、洗剤の使用は「どうしても落ちない時だけ」になったので、使用量がぐっと減ったことは間違いない。
脱プラだけでなく、日本の伝統技術を守る「びわこふきん」
洗ったびわこふきんを夜に干しておけば、朝には乾いている。
撮影:美里茉奈
7月1日は「びわ湖の日」。滋賀県において環境保全への理解と認識を深め、行動していくための日として制定された。
1970年代、琵琶湖は富栄養化が進み毎年のように赤潮が起こるほど深刻な汚染問題を抱えていた。その原因の一つが、合成洗剤に含まれている「りん」。住民たちからは、琵琶湖を守るために合成洗剤の使用をやめようという運動が起こった。
撮影:美里茉奈
そのころ、洗剤を使わずに洗えるふきんとして開発されたのが「びわこふきん」だった。開発したのは朝光テープ有限会社。江戸時代から綿産業が盛んな三河地方の企業だ。
びわこふきんを作るための「ガラ紡」は明治時代に発明された紡績技術だが、現在では希少なものとなってしまった。びわこふきんの使用は環境保全だけでなく、失われつつある技術を次世代に繋ぐことにもつながる。
「サステナブル」は最近見るようになった言葉だが、日本には、古くから「実はサステナブル」な製品や技術が存在していることに気付かせられた。