オーシャンゲートの潜水艇タイタン。
OceanGate
- オーシャンゲートが運航していたタイタンの遭難事故があったにもかかわらず、冒険旅行への関心は高まっていると、高級旅行会社ブラウン+ハドソンの創業者は語る。
- 同社は以前、オーシャンゲートと提携してタイタニック号への潜水艇による探検を計画していた。
- 「自慢したい」顧客や、タイタニック号に魅了された顧客がいたと、創業者はInsiderに語っている。
オーダーメイドの贅沢な旅行を提供するブラウン+ハドソン(Brown and Hudson)の創業者フィリップ・ブラウン(Philippe Brown)は、タイタンの事故があったにもかかわらず、富裕層の冒険旅行(エクストリーム・ツーリズム)への意欲は削がれていないと言う。むしろその逆だ。
彼はInsiderにこう語っている。
「この悲劇をきっかけに、問い合わせが来るようになった。タイタニック号の探検というより、他のことについてだ。悲劇は時として、他のエクストリームな旅行分野への関心を生み出す」
同社の高級会員権への関心は「著しく高まって」おり、地球規模のプロジェクトについて新たな話し合いを始める顧客もいる。予定されていた冒険旅行をキャンセルする人は1人もいないという。
オーシャンゲート(OceanGate)は、沈没したタイタニック号を見学する25万ドル(約3600万円)のツアーを催行していた。同社の潜水艇タイタンは2023年6月18日、潜水を始めて2時間も経たないうちに、母船との通信が途絶えた。アメリカ沿岸警備隊によると、潜水艇は爆縮した可能性が高く、乗っていた5人(オーシャンゲートのCEO、3人の超富裕層顧客、その息子1人)が死亡したと見られている。
ブラウン+ハドソンは、オーシャンゲートと提携してタイタニック号見学ツアーを計画していた。ブラウンによると、オーシャンゲートが提供する体験は「手軽な」ものだったので、ブラウン+ハドソンではそれにトレーニングを加えて「より幅広い、長時間」のツアーにしたと語った。2017年以降、3人の顧客がこのツアーに参加する予定だったが、主にスケジュールの問題で、全員が「直前でキャンセル」したという。
ブラウン+ハドソンのアドバイザーは、顧客との面談で叶えたい旅行について話し合い、今後数年間の休暇の計画を立てる。「ほとんどの顧客が、タイタニック号見学を計画に組み込んでいた」とブラウンは言う。「自慢したい」人や、ずっとタイタニック号に魅了されていたという人もいれば、参加権を転売するための投資と考える人もいたという。
「タイタニック号ツアーを予約する人は、近宇宙旅行を考えるような人と同類だ。費用もそう変わらない」
冒険をしたい、危険を冒したいと思うことは「まったく普通のことであり、事故によってその意欲が削がれることはない」とブラウンは言う。
「人は飛行機が墜落しても飛行機を使う。ヘリコプターの事故があってもヘリコプターに乗る。人類はただ前進するだけだ。できれば、もう少し進歩した方法を取り、リスクも意識するようになるといい」
ブラウン+ハドソンの顧客は、10万ポンド(約1800万円)以上の旅行代金の他に、9700ポンド(約180万円)から10万ポンドの年会費と税金を支払っている。顧客の多くは北米在住だが、ブラジル、中国、インド、イギリスからの顧客も多く、投資銀行家やテックワーカー、「ダボス会議やサンバレー会議に行くような人」も含まれているという。
人気のアクティビティには、ヘリスキー、極地アクティビティ、高所登山、僻地トレッキングなどがある。同社は現在、12人のアメリカ人投資銀行家グループのためにシリア北部でのオフロードバイク旅行を計画している。
探検、エクストリームスポーツ、トレッキングは、世界の富裕層の間でステータスシンボルとなっている。
「ある一定の富を超えると、派手な車や最新のiPhoneには興味を示さなくなる」とブラウンは述べ、冒険旅行のような体験に比べ、物質的なものは短期的な喜びしか与えないと説明した。
「モノの価値は下がっていく。自分が10億ドルの価値があると分かっていれば、富を誇示する必要はない。それはあなたの一部でしかないのだから」
冒険旅行は、人の競争心に訴えかけることもある。
「これは、誰よりも先に達成したいという気持ちや、家族や友人にすごい話を聞かせたいという思いにつながっているようだ」
ブラウンは「我々は人間であり、その性質から自分の置かれた境遇に満足することはほとんどない」と、「快楽順応(快楽に慣れ、それを感じなくなること)」について説明する。
「眺めのいい美しいホテルに行くと、ドーパミンが大量に放出される。だが3日も経てば、それにも飽きてくる。莫大な富を手に入れ、寝ている間に何十万ドルも稼ぐようになれば、可能性の幅が全く違うものになり、限界に挑戦できるようになるのだ」