労働市場がついに冷え込み始め、職場からますます抜け出せなくなったと感じる人もいる。
skynesher/Getty Images
- 労働者が不満を抱えながらも職場に留まることで、「静かな退職」の声が大きくなってきている。
- そして「不機嫌な在職」が登場した。これは、労働市場が冷え込んだため、しぶしぶ職場に残っているような状態だ。
- 彼らは会社への忠誠心や信頼をあまり感じていないかもしれないが、転職もままならないことから辞めることもない。
仕事に不満を抱えながらも、職場に留まっている人がいる。
彼らは過去2年で「大退職」あるいは「静かな退職(必要最低限の仕事をすること)」に加わっていたのかもしれない。だが、雇用市場が冷え込み、パンデミック後のオフィス回帰を義務付ける企業が増えるにつれ、職場に留まりながらも不満を声高に訴えたくなったようだ。
マイクロソフト(Microsoft)の例を見てみよう。Insiderが入手した社内アンケートによると、「現在の待遇と同等の仕事のオファーがあっても、マイクロソフトに留まる」と回答したのは、調査対象となった社員の半数以下(47%)で、2022年11月の70%から減少している。同社の広報担当者はこれは正確な数値ではないとしながらも、この質問に対する肯定的な回答は確かに減少したと認めた。
同じくInsiderが入手したセールスフォース(Salesforce)の社内アンケートによると、「定着率が高い」と回答したのはわずか34%で、「長期的に見ても会社の将来は安泰だ」と回答したのは37%だった。「信頼できる企業文化がある」と回答したのは50%で、前回調査よりもかなり落ち込んだ。
ギャラップ(Gallup)が世界中の12万2416人の労働者を対象に実施した調査を取りまとめたレポート、2023年版「State of the Global Workplace」によると、回答者の59%が「静かな退職」を、18%が「騒がしい退職(loud quitting)」をしていた。
「騒がしい退職」をする人は、仕事をしないことに積極的で、最低限の仕事しかしないどころか、実質的に会社に損害を与えているという。
だからといって「騒がしい退職」をする人が実際に辞めるとは限らない。
そこで登場するのが「不機嫌な在職」だ。辞めることに利点がないため、しぶしぶ職場に残っているような状態を言う。これは、雇用主と従業員の関係が幾分変化し、雇用主が大退職の時期に失っていたパワーの一部を取り戻したことを示している。しかし、構造的な変化が起きなければ、こうしたパワーはいずれ消えていくだろう。
在職しながらも変化を求める人が増えている
労働者の転職は、2022年までの猛烈な勢いはなくなっている。
人事給与アウトソーシング会社ADPのチーフエコノミスト、ネラ・リチャードソン(Nela Richardson)は、2023年の退職者数が激減していると5月に報告している。また、アメリカ労働統計局の求人労働異動調査(JOLTS)によると、離職率は緩やかな減少を続けており、直近データの4月は2.4%で、前月の2.5%からわずかに低下している。
ここ2年間、労働者は人手不足の恩恵を受け、雇用を切望する雇用主からより多くの給与や手当を引き出すための交渉ができた。しかし、人手不足が緩和された現在も、医療と雇用の関係といった経済の基本的な構造は変わっておらず、インフレは高止まりしており、人は働かなければならない。
インディード(Indeed)の賃金トラッカーによると、賃金の高騰は鈍化している。全米産業審議会の「消費者信頼感調査」では、「仕事が豊富」と答えた消費者は43.5%にとどまった。求人数は若干増加したが、大退職の時期の記録的な求人数にはほど遠い。職種もブルーカラー職が大半を占めており、それが景気の維持に繋がっていることを裏付けている。
賃金がインフレに追いつくのがやっとで、景気後退が予想される中、労働者は解雇を恐れ、多くは出勤しつづけるしか選択肢がない。そして休憩所で愚痴をこぼすのだろう。