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スタートアップ企業は、現状を打破することを期待されることが多いものの、こと女性のリーダーシップに関しては大企業に大きく後れをとっている。
現在、ヨーロッパの大手ベンチャーキャピタル(VC)が支援するスタートアップの半数近くが、役員に女性を置いていないことが数字で明らかになった。
業界団体ESG_VCとイギリスプライベート・エクイティ&ベンチャーキャピタル協会(British Private Equity & Venture Capital:BVCA)の新たなレポートによると、バルダートン(Balderton)、レイクスター(Lakestar)、モルテン・ベンチャーズ(Molten Ventures)、ベリンゲア(Beringea)、MMC、ハイランド(Highland)などが支援するスタートアップの約45%は、女性役員の数がゼロである。
このデータは、イギリスを含むヨーロッパのVC16社から得たもので、これらVCの支援先企業は合計450社にのぼる。またレポートによると、対象となったスタートアップの15%は、上級管理職に女性社員がいなかった。
スタートアップ企業は、ダイバーシティに関して上場企業に長らく後れをとってきた。イギリスの代表的な株式指数「FTSE350」採用企業は、2021年を最後に男性のみの取締役会を廃止し、英国金融行動監視機構(UK Financial Conduct Authority)が定めた取締役会の40%を女性が占めるという目標を、2025年の期限より3年早く達成した。しかし、一部の上場企業は、女性を主に社外取締役として任命しているにすぎないとして非難されている。
ベリンゲアのマーケティング・ディレクターでESG_VCの共同創業者であるヘンリー・フィリップソンは、「スタートアップ企業は、取締役会の多様性に関して前向きに取り組む意志を具体的な行動として示すのに苦労しています」と述べる。
このレポートの分析では、ダイバーシティとインクルージョンに特化した研修や採用プログラムを提供する企業が増えたことで、一定の進展が見られたという。
「しかし、こうした取り組みは長期的な変革のための土台を築くものであり、多様なリーダーシップに対する当面のニーズは、まだ十分に迅速に満たされてはいません」(フィリップソン)
Insiderが以前報道した別の調査によると、スタートアップ企業が取締役会の多様性を実現する場合というのは、IPO前の駆け込み需要で女性従業員を登用しているケースが目立つ。
VCのアトミコ(Atomico)の2022年のデータによると、ヨーロッパのVCでは、女性はトップの投資担当者の13.5%を占めるに過ぎない。
現在、イギリスの気候変動技術スタートアップであるスーパークリティカル(Supercritical)を経営するシリアルアントレプレナーのミシェル・ユー(Michelle You)は、Insiderの取材に対し、同社を設立する際は男女比半々を目指したと語る。最初の資金調達ラウンドでは、女性投資家からの十分な投資を確保するため、男性からの投資を断ったという。
こうした 「バランスのとれた出発点」が、その後のスーパークリティカルの資金調達ラウンドで投資家層の多様性を維持するのに役立ったとユーは言う。
「女性投資家たち自身が組織するグループが増え、その周りにネットワークができました。以前は、今と比べて女性を増やすのにもっと時間がかかっていましたから」と、彼女は取材時に語っていた。
リソースやネットワークへのアクセスを提供することで、投資家は最終的な変化を促すという重要な役割を担っている、とフィリップソンは語った。