新入社員509人へのアンケート調査で、現在における「理想の上司」の姿が明らかになった。
撮影:今村拓馬
言うべきことはきちんと言って厳しく指導する上司、情熱を持って仕事をしている上司、リーダーシップを発揮する上司 ——。
これまで常識とされてきたような「上司像」は、新入社員にとっては、もはや「理想の上司」ではないかもしれない。
リクルートマネジメントソリューションズは6月29日、2023年4月に入社した新入社員を対象にした意識調査(※)の結果を発表した。
この調査は2010年から毎年実施。2023年の調査結果をみてみると、新入社員の「個性を尊重してくれる環境で働きたい」という意識が浮かび上がった。
※「新入社員意識調査2023」は、リクルートマネジメントソリューションズの公開型新入社員研修の受講者を対象に3〜4月、質問紙で実施。509人が回答した。
理想の職場「お互いに個性を尊重する」が過去最高に
理想の職場については、「お互いに個性を尊重する」が過去最高になった。
出典:「新入社員意識調査2023」
調査ではまず、新入社員にとっての「理想の職場」について探った。
「働きたい職場の特徴」を最大3項目まで選んだもらったところ、前年に引き続き1位は「お互いに助けあう」(66.4%)だった。
2位は前年に比べて7ポイント以上も伸びた「お互いに個性を尊重する」(50.7%)で、10年前の調査から20ポイント以上も増加し、2010年の調査開始以来、過去最高値となった。
3位は「遠慮をせずに意見を言い合える」(39.7%)だった。
これら新入社員が理想としている職場について、リクルートマネジメントソリューションズ研究員の武石美有紀氏は、「『個』が守られた中で、互いに協力しあうような繋がりを求めている傾向がある」と話した。
意外にも「アットホーム」は理想でない?
リクルートマネジメントソリューションズの武石研究員。
撮影:横山耕太郎
一方で前年は2位だった「アットホーム」(37.3%)は7.6ポイントも急落し、過去最低のパーセンテージとなり、全体順位は4位だった。
同じく過去最低値だったのは6位「活気がある」(25.3%)、8位「お互いに鍛え合う」(11.4%)だった。
「アットホーム」が減少傾向にある理由について武石氏は、「個性を持つことが当たり前の時代で育っており、組織のカラーに自分を合わせていくという発想自体が薄くなっている可能性がある」と分析する。
上司に求めるのは「相手に耳を傾けること」
出典:「新入社員意識調査2023」
新入社員にとっての「理想の上司」も、時代の変化を反映している。
調査では「あなたが上司に期待すること」について最大3項目まで回答してもらった。
調査の結果、1位は「相手の意見や考え方に耳を傾けること」(49.5%)だったが、前年比では4.6ポイント減だった。
一方で2位は、前年比4.9ポイント増で、過去最高値となった「一人ひとりに対して丁寧に指導すること」(49.1%)だった。3位は「好き嫌いで判断しないこと」(35.2%)。
逆に、過去最低値となったのは6位の「仕事に情熱を持って取り組むこと」(19.6%)、7位の「言うべきことは言い、厳しく指導すること」(17.5%)だった。
また8位の「周囲を引っ張るリーダーシップ」(15.5%)も、10年前と比べると9ポイント以上も低下していた。
新入社員「情熱」は避ける?
丁寧な指導を上司に求める傾向がある一方で、厳しい指導やリーダーシップを望む人の割合は減少している結果について、武石氏は次のように話す。
「上司に対しても、個性を尊重するコミュニケーションを求めている。また社会全体のハラスメント意識の強まりなどにより、厳しく叱られる経験も減少し、厳しいフィードバックへの苦手意識がさらに高まっている」
また「情熱を持って取り組む」の低評価については、「新入社員は、相手に心を許すまで一定の距離を置く傾向もあるため、“情熱”という強いワードが入る項目の選択率が下がった可能性がある」とした。
上司の「あるべき姿」とは?
撮影:今村拓馬
では上司たちは新入社員とどう関わっていけばいいのだろうか? 武石氏は、そもそも上司世代と新入社員らZ世代には価値観の隔たりが大きいという。
具体的には、上司世代は「とりあえず仕事をしながら納得していく」傾向があるのに対して、 Z世代は「納得してから仕事をしたい」という特徴があるという。
その上で、上司からトップダウンでの指示だけでは、「この上司は自分のことをわかってくれない」と感じてしまうリスクがあると指摘する。
「上司と部下は敵対するのではなく、一緒に目標に向かっていく仲間という意識が重要だ。部下との対話しながら、部下も納得できるような共通の目標を持つことがより大切になってきている」