マイクロソフトのサティア・ナデラCEO。決算日を迎え従業員に感謝の言葉を伝えたが……。
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マイクロソフト(Microsoft)にとって意義深いものとなった会計年度が6月末で締まった。
マイクロソフトは1月に1万人の従業員をレイオフすると発表。その後、2023年の昇給のほとんどを停止し、賞与と株式報酬を減らすことも発表している。そして、アメリカ政府は現在、マイクロソフトが690億ドル(買収発表当時のレートで約7.8兆円)でアクティビジョン(Activision)を買収しようとするのを阻止するため、訴訟を起こしている。
にもかかわらず、マイクロソフトは記録的な売上を計上する見込みだ。ソフトウェアの巨人の時価総額は2兆5000億ドル(約360兆円、1ドル=144円換算)で、株価は過去最高値に近い。
こうした状況を踏まえ、サティア・ナデラCEOは6月28日、マイクロソフトの社内メッセージボードに、ともに奮闘した従業員に感謝の意を表した。Insiderはそのメッセージを確認した。そのメッセージにはこうある。
「2023会計年度の終わりを迎えるにあたり、全社を挙げて懸命に働いている皆さんに心から感謝の意を表したい。皆さんが示し続けている革新性と創造性のおかげで、今年はマイクロソフトにとってだけでなく、世界中の顧客、パートナー、地域社会にとっても輝かしい年となった」
そして、自身が感じている「連帯感」に感謝の意を表し、「我々の使命と文化に根ざそう」と従業員を鼓舞した。そして、これからの1年に向けて前向きな見通しを述べて締めくくっている。
「感謝するくらいなら昇給凍結を解除せよ」
アクティビジョン訴訟の一環として公開された内部文書を見れば、ナデラがただの楽観主義者ではないことが分かる。1年前、ナデラはマイクロソフトを率いて2030会計年度までに売上高を2倍以上の5000億ドル(約72兆円)にするという計画を打ち出した。
約20万人の従業員がこのメッセージを目にし、大多数は肯定的な反応を示した。130人近くが返信を書き、その約半数が肯定的なものだった。
しかし今回Insiderが確認した社内投稿によると、ナデラの感謝のメッセージに対して多くの従業員が辛辣なメッセージを寄せている。
250人以上から賛意を集めたある従業員のメッセージには「感謝の気持ちを示すなら、昇給の凍結を解除するのが一番だ」とあり、そのうえで、給与の決定を下した幹部らが何百万ドルもの報酬を得ていることを指摘している。
また、100人以上の支持を得た別のメッセージでは、「会社や経営陣が記録的な利益を上げているのに、従業員たちは減給されている。これはおかしいと思わざるをえない」と記されている。
他のメッセージでも、「過去最高の利益はどこから来るのだろう。私自身は、ここで働いていることが恵まれているとはまったく感じていない」と記されており、賃金の低迷と医療費の高騰に直面しながら、毎日14~16時間働いていることについて綴られている。
年度末恒例の上司からの感謝の言葉に対する従業員のこうした反応は、マイクロソフト社内の士気が低下していることの表れといえる。Insiderの既報のとおり、最近のマイクロソフト社内の調査では、もし他社から同等のオファーがあれば退職すると答えたマイクロソフト社員の割合が増加していることが判明している。
なお、マイクロソフトからのコメントは得られなかった。