6月28日、アクティビジョン・ブリザード(Activision Blizzard)買収に関する口頭弁論のためカリフォルニア南部地区裁判所に姿を見せたマイクロソフト(Microsoft)のサティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)。
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マイクロソフトは自社のワークプレイス製品群をより多くのZ世代や(若い世代が立ち上げた)デジタルネイティブ企業に使ってもらう必要があることを認識している。
そしてそうした認識のもと、競合製品を利用する若いユーザーに自社製品への乗り換えを促す方策として、人工知能(AI)ベースの生産性向上ツールの開発を計画していることが明らかになった。
Teams(チームズ)やOutlook(アウトルック)、Office(オフィス)などクラウドベースの生産性向上ツールを含む、同社のワークプレイス関連ビジネスの将来は、若年層ユーザーからの支持関心を集められるかどうかにかかっていると言える。
サティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)は2022年6月7日、取締役会向けの企業戦略に関するメールの中で次のように書いている。
「これらの(若年層)セグメントにおけるシェアが相対的に低い現状は、当社の次世代ワークプレイス関連ビジネスにとって長期視点で見た時にリスクが生じることを示しています」
このナデラCEOを発信元とする社外秘メールは、6月最終週、米連邦取引委員会(FTC)によって時限的にオンライン公開された。
FTCはマイクロソフトによるゲーム大手アクティビジョン・ブリザード(Activision Blizzard)の買収を阻止するため、連邦裁判所に仮差し止めを請求。裁判資料として提出された内部文書の一部は、個人情報などを編集してオンライン公開されている。
ナデラCEOは前出の取締役会宛てメールの中で、Z世代とデジタルネイティブ企業について次のように分析している。
「シンプルで軽量、コラボレーションのしやすさを重視したアプリケーションが好まれ、それらは(基本は無料提供で、追加の上位サービスに課金する)フリーミアムのビジネスモデルをベースに、デジタルネイティブ企業においてボトムアップで導入規模が拡大していきます」
マイクロソフトは、無料のビデオ編集ツール「Chipclamp(チップクランプ)」を2021年に買収したり、フリーミアムのワークプレイス製品「Notion(ノーション)」に対抗する「Loop(ループ)」の開発を進めるなど、Z世代やデジタルネイティブ企業を意識した取り組みを続けてきた。
ただ、ナデラCEOによれば、「Google Workspace(グーグルワークスペース)」のような競合製品を愛用する若い消費者のマイクロソフト製品への乗り換えを促すには、さらなる取り組みが必要という。
「次世代生産性向上ツールの開発競争において他社をリードするため、当社としてはAIの力を活用したいと考えています」
マイクロソフトは、1990年にPC向けのワークプレイススイート「Microsoft Office」を発表し、2013年にはクラウドベースでの同スイート利用を可能にした。
一方、グーグルがその競合製品に相当する「Google Docs」などの無償提供を開始したのは、Z世代の最年少層が小学校を卒業した2006年だった。
その後、特にGoogle Workspaceスイートに含まれる文書編集管理ツールGoogle Docsは、Microsoft Wordより使えるツールとの評価をZ世代の間で高めてきた。
米ハーバード大学のある博士候補生(単位取得および試験合格済み)は、こんなふうにツイートしている。
「学生たちに教えていて気付いた興味深いことがあって、Z世代はMicrosoft Wordを使わないのです。彼ら彼女らに課題の提出を求めると、皆がGoogle DocsやPagesから変換したファイルを送ってよこします」