景気後退の懸念などを背景にクラウドサービスの需要減が指摘されるが、ここに来て市場シェア首位のアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)が大きなディールを実現しそうな気配だ。
Reuters
アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)は、オランダ政府とのクラウド契約を大幅に規模拡大する方向で協議している。同社は近頃、政府によるプライバシー審査をクリアしており、協議が前進する可能性がある。
Insiderが独自に入手した内部文書「アマゾンに関する秘匿特権対象文書(Amazon Privileged and Confidential)」によれば、オランダ法務安全保障省とAWSのクラウド契約は、現行の年間25万ドルから、5~6年程度の複数年で総額8500万ドルに拡大する可能性がある。
内部文書の正確な記述は以下のようなものだ。
「オランダ法務安全保障省は現在、AWSとクラウドサービスの枠組みについて交渉中であり、契約総額は控えめに見積もって、5~6年間で8500万ドル(現時点における、AWSのオランダ政府に対する年間売上高は約25万ドル)を想定している」
同文書によると、AWSは上記の契約交渉と並行して、データ保護対策に関するオランダ政府の監査を受けている最中だ。
それとは別途、AWSは6月末にオランダ政府が実施した個人データ保護影響評価(DPIA)で、必要とされるリスク水準をクリアしている。同社が欧州連合(EU)の「一般データ保護規則(GDPR)」を遵守していることを監督当局に説明する上で重要な意味を持つ。
同文書によれば、オランダ政府は過去にAWSのデータ保護対策を「リスク高」と認定し、同国の他の政府機関にAWSのクラウドサービスを利用しないよう勧告していた。それを踏まえると、今回必要な水準を達成できたことには大きな意味があると言えるだろう。
AWSは9月あるいは10月にもオランダ政府の監査を受ける計画で、それが同社にとって「最優先事項」であると内部文書には記載されている。
「今回の個人データ保護影響評価(DPIA)の結果は、DPIAの推奨するリスク軽減措置を講じることを前提に、オランダの政府機関にとってもはや既知の高度のリスクは存在しないことを意味する」
アマゾンの広報担当、オランダ政府ともにコメント要請には応じなかった。
内部文書によれば、オランダ政府はAWSが提供する複数のクラウドサービスの購入を検討しており、それゆえにデータ保護に関する監査では、AWSの「EC2」仮想サーバー、「S3」クラウドストレージ、「Redshift」データウェアハウスサービスに焦点が当たることが予想される。
アマゾンにとって、DPIAのポジティブな評価結果は一種の「承認印」とも言え、オランダ政府とのより大規模なディールを実現するための重要な第一歩となる。
一般データ保護規則(GDPR)を遵守している事実が証明されることで、他の欧州諸国もそれを援用し、AWSとの契約拡大に動く可能性がある。
オランダ政府は近年、GDPRコンプライアンスの達成を企業に強く求めてきた。
ニューヨーク・タイムズの報道(1月18日付)によれば、アメリカのテクノロジー関連企業の中には、欧州で最も厳格なガイドラインを有するオランダのコンプライアンス(確認)プロセスをクリアすることを、一種の「ステータスシンボル」「お墨付き」と見なす向きもあるという。