ツイッターのリンダ・ヤッカリーノ新CEO(左)とイーロン・マスク。
Santiago Felipe/Getty Images, Gotham/FilmMagic
ツイッター(Twitter)に現在残っている社員が日常的にオフィスに戻って働くためには、イーロン・マスクが同社にもたらした「恐怖の文化」では十分な効き目がないようだ。
ツイッターを2022年10月末に買収した直後、億万長者でテスラCEOでもあるマスクは、ツイッターの共同創業者で元CEOのジャック・ドーシーがコロナ禍の初期に導入したリモートワークの方針を覆した。パンデミック対応の一環としてではあったが、同社は、従業員のリモートワークを恒久的に認めた最初の大手テック企業だった。
しかしマスクの指揮下に入ったツイッターは、従業員にオフィス勤務を強要した最初の企業となった。ツイッターではこのほかにも、従業員特典や福利厚生の多くが覆されている。従業員にオフィス勤務を求める動きはテック業界やメディア業界にも広がっており、しばしば従業員たちの不満や抗議を引き起こしている。
何人かの社員や元社員がマスクの経営スタイルを「恐怖の文化」と表現したように、恒常的なレイオフや「悪魔のモード」を基本とするこれらの施策は、すでに限界に達したのかもしれない。
マスクによる買収以来、ツイッターは正社員の約9割に解雇またはレイオフを申し渡している。そのため、残された従業員の多くは「毎日、これが自分にとっての最後の日かもしれない」と考える職場になってしまった、とある従業員は語る。
常に変化するプロジェクトや上からの要求にうまく対応し、毎週、毎月、その間に達成したことを詳細に記したメールを経営陣にきちんと送っているような従業員でさえ、いまだに「毎月」のレベルでレイオフや突発的な解雇の憂き目に遭っていると、別の従業員は言う。
同社に詳しい人物によると、マスクは簡単に物事を受け入れず、単純には喜ばない上司だというのが従業員たちの共通認識だという。どんなに働いてもクビにならないとは限らないため、従業員の多くはマスクの怒りを買う危険を冒してでも自宅で仕事をしようとする。また、社員として残っているエンジニアが500人程度しかいないことから、マスクと経営陣が、彼らの定着率を懸念し始めていることを社員たちはますます感じている。
一方、別の関係者によれば、新CEOのリンダ・ヤッカリーノ(Linda Yaccarino)は単に出社を求めるのではなく、オフィスに来たくなるような動機付けをしようとしているという。ヤッカリーノCEOは6月にまずサンフランシスコ本社で、6月末にはニューヨークのオフィスで、ツイッターの全スタッフを集めて「ティータイム」と呼ばれるイベントを開催した。
お茶を飲みながらのこのカジュアルな全社集会の場で、ヤッカリーノはサンフランシスコとニューヨークの従業員と約1時間にわたり顔を合わせ、従業員たちがオフィスに来たくなるような取り組みを進めていると話したという。マスクのやり方とは一線を画している。
ツイッターのサンフランシスコ本社に詳しい人物は、「オフィスは普段はかなり空いている」と語る。ただ、従業員数は減っていても、彼らが空虚感に襲われているわけではない、と別の関係者は言う。
ほとんどの従業員は現在、サンフランシスコ本社の10階のように数フロアに集中して集められており、それ以外の使われていないオフィススペースは賃貸に出されたり、ベッドルームに変えられたりしている。オフィス事情に詳しい他の関係者らも、毎日、多くの人が自宅で仕事をしていると言う。
人事部の幹部もよく自宅勤務をしている、と同社に詳しい2人の人物は語る。ツイッターの幹部たちはオフィス間を頻繁に出張しており、従業員の中には、フルタイムで出社させる任を負った当の本人たちに会えないとしてムッとしている者もいるという。
マスクは、出社を免除されていない従業員にはフルタイム出社の義務があると強く主張している。ここ数週間でツイッターの全管理職には、主に従業員の勤怠管理の記録を通じて、従業員がどれくらいの頻度で在宅勤務をしているかをチェックすることが義務づけられた。また、管理職はリモートワークの各事例とそれが許可された理由を説明する必要があるという。
このように働き方を管理することで、従業員の生産性を測る狙いのほかに、オフィス閉鎖やスペースの又貸しを検討しているマスクら経営陣にとっては、オフィスの使用状況をデータで把握できることにもなる。
マスクは数カ月前からツイッターのオフィスを閉鎖・縮小しており、今後はアメリカ国内のオフィスをサンフランシスコ、ニューヨーク、ロサンゼルスに限定する可能性も出ている。なお、マスクによる買収以前のツイッターはアメリカ国内に18のオフィスを構えていた。