【佐藤優】オタクがアイデンティティだったのに、アニメやゲームに気力が湧かない…。次のテーマはどう見つける?

お悩み哲学相談Vol.56

イラスト:iziz

シマオ:皆さん、こんにちは!「佐藤優のお悩み哲学相談」のお時間がやってまいりました。読者の方にこちらの応募フォームからお寄せいただいたお悩みについて、佐藤優さんに答えていただきます。さっそくお便りを読んでいきましょう。

現在34歳の独身男性です。私のような年代はちょうど、結婚&配偶者の出産ラッシュです。もともとオタク趣味を通じて一番仲良くしてきた高校時代の友人たち4人のグループも、他の3人が結婚や育児をしているため、あまり遊びに誘えるような環境でもなくなってしまいました。

さらに、趣味だったアニメ鑑賞やゲームなども、何だか気力が湧かず、遠のいています。

そのせいもあってか、率直に言うと、土日はあまりやることがなく暇で、寂しいです。それでも、オタクというのが自分のアイデンティティでもあったため、オタクを卒業したら、自分には何も残っていないのではないかという恐怖感があります。

自分は容姿もあまりよくはなく、女性と付き合った経験もありません。結婚できるとも思っていません。なので、婚活というのも違うな……と思っています。自分はどうしたらいいんでしょうか。

(アニス、30代前半、会社員、男性)

趣味も人間関係も変わっていくもの

シマオ:アニスさんはアニメ鑑賞やゲームが好きな自称「オタク」とのことですが、周囲のお友達がオタクを「卒業」され、自分自身も昔のように楽しめなくなってきたということですね。

佐藤さん:年をとって大人になることで、周囲との関係性が変わってくるというのは誰もが経験することだと思います。例えば、中学や高校に進学したタイミングでこの手の変化に直面したことがある人は多いでしょう。

シマオ:それがアニスさんの場合は、周囲の人たちが結婚したり、子どもができたりしたことなのかもしれませんね。

佐藤さん:遠藤周作の作品に『白い風船』という小説があるのですが、シマオくんは知っていますか? たしか小学校の高学年の国語の教科書に載っていたと思います。

シマオ:ちょっと読んだことがありません……。どんなお話なのでしょうか?

佐藤さん:主人公は小学生の凡太という子なのですが、空想に耽りがちな少年です。宇宙人が地球に攻めてくるテレビドラマを見て、宇宙人を探すために望遠鏡を買ってもらい、それでしょっちゅう窓の外を眺めている。

凡太はある日、望遠鏡で自宅近くの丘の上に、白いクラゲのようなUFOを発見してしまう。自分は宇宙人が侵略してくる現場を目撃しているんだと凡太は興奮します。

ただ、大人になってから気づくのですが、それは白い風船の見間違えに過ぎなかったというのが話のオチです。

シマオ:ちょっと切ない終わり方ですね……。

佐藤さん:ものを知らないからこそ、想像力が豊かに働いて、どんどん妄想が広がっていく。でも大人になるにしたがって知識や経験が増えると、新鮮な驚きや感動がなくなっていきますよね。

アニスさんもそれまで楽しめていた漫画やゲームが、ある時それまでのように楽しめなくなってしまったのも同じことなのかもしれません。

オタクとして次のテーマを探そう

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イラスト:iziz

シマオ:それじゃあ、アニスさんはどうすればいいんでしょうか? 「オタクとしてのアイデンティティがなくなったら、自分には何も残らないんじゃないか」と不安を感じているようですが……。

佐藤さん:大丈夫ですよ。オタクとしての興味の対象は変わったとしても、オタクはオタクです。

私もオタクな部分があります。小学校2〜5年まではプラモデル、6年から中1まではアマチュア無線に熱中していました。中学1年の終わり頃からその対象が読書になり、今でも続いています。

オタクは一生終わらない。漫画とゲームではない、何か別の興味の湧く対象にのめり込めばいいんじゃないでしょうか。

シマオ:オ、オタクは一生終わらない……なんとも心強い言葉ですね。卒業したら何も残らないんじゃなくて、その気質そのものはしっかりと残っていると。

佐藤さん:オタクというのは何かにのめり込んで、そのことを深く掘り下げていく人たちです。人一倍好奇心と知的探求心が強いということですよね。そういう人は興味が持てる対象が必ずどこかに見つかるはず。それを探しましょう。

シマオ:でも、どうすれば次の対象が見つかるのでしょうか?

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