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- 「ホット・べディング(Hot bedding)」とは、家賃を節約するために見ず知らずの人間がベッドをシェアすることだ。
- 「ホット・デスキング(Hot desking)」と同じように、ホット・べディングもテナントがベッド使用のシフトを調整することが多い。
- 2021年の調査では、オーストラリアの大学に通う留学生の3%がホット・べディングを利用していた。
住宅価格が高騰する中、ルームメイトを探す大人が増えている。では、家賃を節約するために、あなたなら誰かとベッドをシェアするだろうか?
それが「ホット・べディング」だ。デスクをシェアする「ホット・デスキング」の遠い親戚のようなもので、見ず知らずの人間とベッドをシェアする。睡眠時間は"シフト制"だ。
オーストラリアのメルボルンにある大学に通うインドからの留学生プリヤンカさん(仮名、19歳)は、部屋を借りるためにトラック運転手として夜間に働いている男性と550ドルを折半しているとSBS Newsに語った。夜はプリヤンカさんがベッドで眠り、日中はトラック運転手の男性が同じベッドで眠っているという。男性の仕事がない日はベッドが使えないので、プリヤンカさんは同じ家の「物置き」(マットレスがギリギリ押し込めるくらいの広さがある)で過ごしているとSBS Newsに話した。
ホット・べディングは必ずしも目新しいものではない。ただ、プリヤンカさんのように、インフレや家賃の高騰で苦しんでいる人々にとっては最新の"解決策"となっているようだ。
プリヤンカさんが住むオーストラリアを含め、世界各地でモノの値段が上がっている。オーストラリア統計局は、生計費指数が2022年から2023年の間に7.3%上がったと報告している。移民や留学生はインフレによる経済的苦境に陥りやすい。生活費の高さや住宅危機についてよく知らないまま、より良い生活を求めて移り住んでくることもある。
シドニー工科大学の2021年の調査は、シドニーとメルボルンに住んでいる留学生7000人を対象に実施された。調査の結果、回答者の3%が家賃の節約のためにホット・べディングをしていると答えた。また、10人に4人が"お金"を理由に食事を抜いたことがあると回答した。
ホット・ベディングは主にオーストラリアで報じられているが、"マットレスのシェア"は他の国でも広がっているようだ。6月にはカナダである家主がローカルサイト『Kijiji』に550ドルで部屋を貸すと広告を出した。ただ、これには裏があった。住人はキングサイズのベッドを見ず知らずの誰かとシェアしなければならなかったのだ。広告はすでに終了しているが、この条件で借り手が見つかったのかどうかは不明だ。
ほとんどの人はホット・べディングにためらいを感じるだろう。ただ、その一方でより伝統的な"ルームメイト"を探す人は増えている。インフレで住宅が不足し、持ち家率が低下する中、Insiderでも報じたように、ミレニアル世代はいまや「ルームメイト世代」と見なされている。
中には高齢者との共同生活を選ぶ若者もいる。2022年7月にはナディア・アブドゥラさん(25)が ジュディス・アロンビーさん(64)から余った部屋を借りて、共同生活を送っているとワシントン・ポストに語った。学生と高齢者の共同生活を後押しするプログラムを立ち上げた大学もある。
プリヤンカさんはSBS Newsの取材に、家族は経済的な犠牲を払って自分をオーストラリアに留学させてくれたものの、食べ物を手に入れたり、家賃や交通費を払うのに苦労していると語った。自身の暮らしぶりについて、家族に全てを話してはいないという。
「常にものすごくストレスを感じていますし、とても不安です」
「勉強をしに来ているのに、頭を横にしてリラックスできる安らぎの場すらないのは辛いです」