36歳のハミルトン氏は、ミシガン州デトロイトに35戸の住宅を所有しており、家賃収入によって経済的自立を果たした。
Courtesy of Ashley Hamilton
アシュリー・ハミルトン(Ashley Hamilton)氏は、富を築きたいのであれば、何か人とは違うことをする必要があるとわかっていた。
「やりたいことがあっても、できることは限られていました」と、デトロイト出身で36歳のハミルトン氏はInsiderに語った。彼女は、最初の子どもを一人で養うために、高校を中退してウェイトレスをしていた。
「学歴がなかったから、CEOの仕事にも企業の仕事にも就けませんでした。私が不動産業を好きなのは、参入のハードルが低く、誰にでもできるからです」
ハミルトン氏が初めて不動産について学んだのは2009年、デトロイトで開催された無料セミナーに参加したときだった。当時22歳だった彼女は、住宅購入のプロセスについてほとんど何も知らなかった。
「セミナーの内容もちんぷんかんぷんでした」
それでも、2つのコンセプトが彼女の心に響き、給料ギリギリの生活から、35戸の不動産ポートフォリオを築く助けとなった。そして、経済的自立を達成するのに役立ったと彼女は言う。
Insiderは、デトロイト市のオンライン記録と彼女の契約書類を見て、家の所有権を確認した。
1. 「満足するのを遅らせ」て、長期的に考えること
ハミルトン氏に刺さった最初の原則は、「ほとんどの人がしないような生き方で残りの人生を過ごせるように、ほとんどの人がしないような2、3年を過ごすことを覚悟すること」だったと彼女は言う。
「私にとっては、『満足するのを遅らせる』ということでした」
ハミルトン氏にはこの時期、自由裁量で使えるお金はあまり残っていなかった。しかし、2009年にはかなり大きな額の税金の還付があることを彼女は予想していた。
「低所得者が1年のうちで一番お金を持っているのは税金の還付の時です。実際に私にとってはいつも1年で一番いい時期でした。その年は7000ドル(約100万円、1ドル=145円換算)ほど返ってくる予定でした」
彼女はそのささやかな臨時収入で休暇を過ごしたり、買い物を楽しんだりするのではなく、6300ドル(約91万円)の差し押さえ物件を現金で購入した。その年、彼女はその物件を改築し(改築費用を貯めるために3カ月間は残業をたくさんした)、2人の子どもと一緒に引っ越した。つまり、彼女はもう家賃を払わなくてよくなり、それからは毎月の資金的な余裕ができた。
『満足を遅らせる』という原則に従い、彼女はそれをすべて使わず、次の物件のために貯金しておいたという。
「私は耳を塞いでおかなければいけませんでした。22歳という年齢で、友人たちといえば、『バーに行こう』『ニューヨークに行こう』です。私はノーと言う必要がありました。何かを犠牲にしなければなりません」
ハミルトンは女手一つで2人の子どもを育てた。
Courtesy of Ashley Hamilton
それから9年間、彼女は1年に1件ずつ物件を現金で購入した。購入資金は確定申告後の税金還付と自分の貯蓄で賄い、物件が増えて家賃収入を得るにつれ、投資資金をさらに増やしていった。
現在は、『満足するのを遅らせる』には難しい時代だと彼女は指摘する。クレジットカードをスライドしたり、iPhoneをタップしたりするだけで、たいていのものは簡単に買えてしまう。
「新しいiPhoneが1500ドル(約21万7500円)で発売される。でもお金がない。それなら借金して買おう。昔は、何か新しいものが欲しければ、そのために働いて貯金しなければなりませんでした。でも今は、何でも分割で支払いができます」
「新しいiPhoneを手に入れることはできるが、それでも新しいiPhoneを手に入れるつもりはない」と言うには強い意志が必要だ。そんなときこそ、長期的な目標を思い出さなければいけないという。大きな買い物をしたり、本当に買えないものを借金して購入したりする前に考えるのだ。例えば、この買い物は、最初の家を買うことよりも価値があるのだろうかと。
ハミルトン氏が長期的な思考をするのに役立ったもうひとつのコツは、目標に対して常に具体的なスケジュールを決めておくことだった。
「スケジュールさえあれば、何でもできます。私は、2年間これをやれば最後にご褒美をあげる、と言われればできるタイプなんです」
2. 他人が恐れているときこそ貪欲に
ハミルトン氏が取り入れた2つ目のコンセプトは、ウォーレン・バフェット(Warren Buffett)の投資哲学である「他人が恐れているときには貪欲に、他人が貪欲なときには恐れを抱け」だ。
この考え方は、人々が貪欲なときは、一般的に価格が高騰して、資産に対する出費が多くなり、平均以下のリターンしか得られない可能性があるというものだ。一方で、人々が恐れているときこそ、割安に投資ができる絶好のチャンスなのだ。
ハミルトン氏がこのバフェットの原則を初めて耳にしたのは2009年のことだ。
「当時は数百万人以上が差し押さえに遭うという、世界がかつて経験したことのないような最大の不動産金融危機に陥っていたため、誰もが不動産を恐れていました。そのうえ、デトロイト市は破産に直面していたので、誰もがデトロイトを恐れていたのです。私はこれをチャンスだと捉えました」
ハミルトン氏が安い差し押さえ物件を買って学んだことは、値段が高くないからといって価値がないとは限らないということだ。
「多くの人は、値段が安いイコール価値がないと判断します。デトロイトの物件が5000ドル(約72万5000円)で買えるというのは全国的に知れわたっていましたが、そんな安い家はボロボロか危険地帯にあるに違いないと思って、誰も調べようともしませんでした」
「少し調べてみても損はないでしょう」と彼女は付け加えた。そうすれば、2009年に6300ドル(約91万円)で購入し、最近12万5000ドル(約1800万円)の査定を受けた、最初の物件のような金鉱につながるかもしれないと彼女は言う。
彼女はその物件に子どもと一緒に5年間住んだ後、テナントを入れて引っ越した。今ではその家から年間約9000ドル(約130万円)の家賃収入を得るようになったという。
「すでに家賃収入が投資額を大きく上回っていたのですが、さらに12万ドル(約1740万円)近い値上がり益も得ることができました」