貧困世帯の子どもの3人に1人が「学校外の体験ゼロ」体験格差と貧困の連鎖を断ち切れるか

子どもの「体験格差」をなくすことを目指す公益社団法人チャンス・フォー・チルドレンの皆さん。

子どもの「体験格差」をなくすことを目指す公益社団法人チャンス・フォー・チルドレンの皆さん。

撮影:杉本健太郎

世帯年収300万円以下の低所得世帯の子どもの約3人に1人が、1年を通じて学校外の体験が何もない「体験格差」の状態に置かれていることが、教育格差の解消に取り組む公益社団法人チャンス・フォー・チルドレンの調査でわかった。ここでいう体験とは、スポーツや文化芸術活動、自然体験、社会体験、文化的体験などを指す。

世帯年収が低いほど、学校外の体験がない子どもの割合が増えていく。

世帯年収が低いほど、学校外の体験がない子どもの割合が増えていく。

出典:公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン

調査名称:子どもの「体験格差」実態調査
対象者:小学1年生~6年生の子どもがいる世帯の保護者
調査期間:2022年10月12日~10月14日
調査方法:インターネットアンケート調査会社のモニターを利用したWEB調査(全国調査)
有効回答数:2097件
実施主体:公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン
協 力:小林庸平(三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 主任研究員)
喜多下悠貴(三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 主任研究員)

チャンス・フォー・チルドレンによると、今回、対象を小学生にしたのは、小学4年生までは親が学習塾などより、体験にお金を使う額が高いからだという。

小学4年生まではスポーツなど体験にお金を使うが、中学に入ると塾代が急上昇する。

小学4年生まではスポーツなど体験にお金を使うが、中学に入ると塾代が急上昇する。

撮影:杉本健太郎

「水泳」と「音楽」はお金持ちの趣味になっている?

調査からは、世帯年収が高い家庭ほど、各種「スポーツ・運動」に参加している子どもが多いこともわかってきた。特に「水泳」は、世帯年収300万円未満の家庭と世帯年収600万円以上の家庭で、2.2倍の差が生じている。これはスイミングスクールを民間企業が運営している場合が多く、その分月謝も高くなってしまうからだ。その他のスポーツは地域のボランティア色が強いチームも多く、その場合は出費が安くすむ場合もあると今井悠介代表理事は語る。

水泳は富裕層の子どもが飛び抜けて多く習っているという結果が出ている。

水泳は富裕層の子どもが飛び抜けて多く習っているという結果が出ている。

出典:公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン

また、世帯年収が高い家庭ほど、各種「文化芸術活動」に参加している子どもの割合も多い。特に「音楽」については、世帯年収300万円未満の家庭と世帯年収600万円以上の家庭で2.3倍の差がある。富裕層の子どもほどスポーツも文化活動も豊かに体験しているという結果が出た。

音楽を習うためには、当然楽器が必要になる。

音楽を習うためには、当然楽器が必要になる。

出典:公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン

親自身の体験格差が子どもに連鎖する

また、今回の調査で今井代表理事が「最も重要」と指摘したのが、「親の幼少期の体験と貧困の世代間連鎖」だ。親自身が子どもの頃に体験をしていれば、子どもにも体験を提供するが、そうでないと体験を提供しない傾向にあるという。

親に体験がないと子どもにも体験をさせない傾向がある。

親に体験がないと子どもにも体験をさせない傾向がある。

出典:公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン

保護者自身が体験の価値を身をもって知っているかどうかが鍵であり、祖父母、父母の世代から連鎖する貧困の連鎖を断ち切るため、子どもの頃に「体験格差をうめることが必要」だと訴えた。

小学生時代に体験がないと年収が低い傾向が出ている。

小学生時代に体験がないと年収が低い傾向が出ている。

出典:公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン

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